アラカンのむっつり右門


チャンバラ映画全盛時には、このヒーローにはこのスターという十八番がありました。嵐寛寿郎の十八番といえば“鞍馬天狗”と“むっつり右門”ということになるでしょうね。“むっつり右門”は、私のお気に入りの大友柳太郎も演じていますが、作品内容は別にして、ひいき目で見てもアラカンの右門の方が上ですね。

アラカンの“むっつり右門”は全部で36本ありますが、戦後は東宝で6本、新東宝で6本作られています。

 

むっつり右門捕物帖・鬼面屋敷』(1955年・東宝/監督:山本嘉次郎)

浪人風の男によって、次々斬殺される連続殺人事件が起こる。被害者は全て、お家断絶となった大久保石見守の関係者。石見守は黄金を秘蔵していたという噂があり、それが事件の背景にあると右門(嵐寛寿郎)は目星をつけるが……

おしゃべり伝六にエノケン。顎に手をあてて、むっつり考えているアラカン右門と、エノケンのやりとりが可笑しいんですよ。エノケンのツッコミをアラカンがウケる間がいいんですね。

右門のライバル・あばたの敬四郎に上田吉ニ郎。これがまた巧いんだなァ。上田吉ニ郎は、悪役を演っても、どこか憎めないでしょう。だから、こんな役はうってつけ。

しかし、なんといっても見どころはラストのアラカンのチャンバラ。十数人の浪人相手の立回りは、いろいろなチャンバラ・テクニックが使われており、見事なものですよ。

 

右門捕物帖・拾万両秘聞』(1939年・日活/監督:荒井良平)

大阪城から輸送されてきた10万両が鈴ヶ森で何者かに奪われる。3日以内に見つからない時は、松平伊豆守(香川良介)が切腹ということになり、右門(嵐寛寿郎)とアバ敬(志村喬)が捜査を開始する。現場に残された発炎筒の燃え残りから、右門は見世物小屋が関係していると推理するが……

志村喬は巧い役者ですが、アバ敬だけは愛嬌のある嫌らしさがなくミスキャストですね。

右門が敵陣に乗り込んで捕まったりするピンチはあるのですが、概ね退屈。アラカンの立回りシーンが少なく、殺陣もよくないんですよ。

チャンバラ映画は謎解きよりも殺陣の魅力につきるのだ。

 

右門捕物帖・片目狼』(1951年・新東宝/監督:中川信夫)

松平伊豆守の特命を受けた右門(嵐寛寿郎)が伊豆の町へやって来る。右門は片目狼と名乗り、密輸組織の卍組に潜入し、首領の正体を暴こうとするが……

卍組が根城にしている居酒屋がキャバレーみたいなので笑えます。階段があって、その上のステージでは榎本美佐江が歌っている。花井蘭子が羽根扇(おまけにネックレスまでしている)を持って踊り、アラカンまでが太鼓を叩くサービス。“狸御殿”じゃないんだけどなァ。

中川信夫にしては作り方が雑で、内容的には感心しません。意外な犯人と、アラカンのチャンバラが見どころですね。

ところで意味のないエノケンの出演は何だったのだろう。それに高瀬実乗も出演しており、ビックリ。ア〜ノネのオジサンは戦前だけの人だと思っていたんですよ。

 

右門捕物帖・帯とけ仏法』(1951年・新東宝/監督:安田公義)

船頭が殺され、その死体を見て逃げ出した船頭を右門(嵐寛寿郎)が追うが、その船頭も怪しい武士に殺されてしまう。伝六(榎本健一)が武士のあとをつけるが、寺の境内で見失う。事件の背後には、仏法を口実とした怪しげな集会があり、さらには贋金使いの暗躍もあった……

出会い系サイト的な江戸時代の秘密クラブを扱っているので、エロッぽい内容かと思ったが、全然思惑はずれ。大蔵貢が社長になる以前の作品だから当り前ですか。

おしゃべり伝六は、小倉繁(緋鹿の子異変)、渡辺篤(謎の血文字)、柳屋金語楼(片目狼)もやっていますが、喋くりと動きはエノケンが一番ピッタリきますね。

内容はというと、ご都合主義的なところが目立ち、出来は今イチ。

 

右門捕物帖・緋鹿の子異変』(1952年・新東宝/監督:中川信夫)

舞台の上で、人気歌舞伎役者が殺される。現場に残された遺留品から、山窩の一族が絡んでいることを右門(嵐寛寿郎)は推理するが……

悪役の伊藤雄之助の存在が光る程度で、これといって見せ場のない作品。

アバ敬役の柳屋金語楼が今イチ面白くないんだよなァ。笑いをとろうとして、逆につまらなくしている。アバ敬はコメディアンより、進藤英太郎や上田吉次郎のようなクセのある悪役の方がいいようだ。

アラカンの十手を使っての立回りは見映えがしません。十手の機能を活かせず刀と同じように振りまわしているからかなァ。アラカンの刀を抜くシーンが少なくて、不満、不満。

 

右門捕物帖・謎の血文字』(1952年・新東宝/監督:荒井良平)

江戸の町に、武士を狙った辻斬りが多発し、その死体には十字に刻まれた血文字が残されていた。右門(嵐寛寿郎)は、犯人を島原の残党とにらむ。その頃、松平伊豆守の城下で同じような事件が起こり、右門は背後に将軍暗殺の大きな陰謀が隠されていることを推理する……

アラカンのチャンバラは楽しめますが、概ね退屈。悪役に魅力がないのが致命的です。

渡辺篤の伝六は、とうが立っていて、感じがよくないです。右門の静に対して、伝六は賑やかに動かないとね。

 

 

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