名探偵・金田一耕助


名前の由来は、容姿に劇作家の菊田一夫のイメージを借りたので、菊田一→金田一→金田一京助と連想して出来上がったと作者の横溝正史自身が明かしています。

初登場は『本陣殺人事件』で、発生時期は1937年。その後、徴兵されてニューギニアで終戦を迎えます。戦後、数々の難事件を解決するが、犯人が連続殺人事件を完了するまで謎を解かないというのが辛〜い!

 

『本陣殺人事件』(1975年・ATG/監督:高林陽一)

岡山の旧家・一柳家の婚礼の夜、新郎の一柳賢蔵(田村高広)と新婦の克子(水原ゆう紀)が日本刀で斬られて死んでいた。現場の襖には三本指の血の痕が残されており、犯人は三本指の男と思われた。克子の叔父・久保銀蔵(加賀邦男)に呼ばれてやってきた金田一耕助(中尾彬)が事件の謎を解く……

原作のイメージを忠実に再現したのは角川映画からで、中尾彬の金田一は普通の若者スタイル。

時代設定は違うものの、ストーリーは原作通り。三本指の男(常田富士男)よりも知恵遅れの少女・鈴子(高沢順子)に比重をかけることにより、耽美な雰囲気を出そうとしていますね。出来としてはそれほど悪くないと思いますよ。

 

 

『女王蜂』(1952年・大映/監督:田中重雄)

久慈あさみ

祖母が危篤という連絡を受け、大道寺智子(久慈あさみ)は恋人・澤村(菅原健二)と20年振りに自分が生まれた島に渡ることになる。すると澤村の許に不気味な脅迫状が届く。澤村は大学時代のラグビー部の先輩で、名探偵として評判の高い金田一耕助(岡譲二)に相談する。島に戻った智子は……

 岡譲二の金田一は、背広姿で、おまけに大道寺の下男や旅回りの役者に変装して現れるんですよ。人気シリーズだった片岡千恵蔵の金田一に影響を受けていますね。

原作とは少し内容が変えてありますが、犯人は同じ。島の名を毒蛇島にするなど怪奇的な趣向を凝らしていますが、どちらかというと陳腐。

若かりし頃の高品格が出ていましたよォ。

 

『悪霊島』(1981年・東映/監督:篠田正浩)

瀬戸内海の刑部島で起こった殺人事件を金田一耕助(鹿賀丈史)が名推理。時代背景を表現するのに、ビートルズの「ゲット・バック」で始まり、「レット・イット・ビー」で終わります。

ヒッピー族の青年(古尾谷雅人)の回想形式にしていますが、事件の最後まで立ち会っていないので無理がありますね。ラストの演出もいい加減(灯りが消えて暗闇となり、耕助でなく共犯者が刺されている)で、ご都合主義的な感じがします。

市川崑のシリーズを踏襲したにすぎず、篠田正浩の独自性はありませんでした。

 

『悪魔の手毬唄』(1961年・東映/監督:渡辺邦男)

人気歌手の和泉須磨子(八代万智子)が鬼首村への帰郷途上で殺される。現場に残されたラジオからは「鬼首村手毬唄」が流れていた。須磨子の父親・仁礼剛造(永田靖)は、手毬唄を聴くと何故か脅えた。長男の源一郎(大村文武)が毒殺され、殺人鬼の魔手から次女の里子(志村妙子)を守るために金田一耕助(高倉健)が捜査を開始する……

高倉健の金田一耕助はスポーツカーに乗って颯爽と現れます。肩書きは単なる私立探偵でなく、警視庁の嘱託で美人秘書(北原しげみ)までいるんですよ。東映の人気シリーズだった片岡千恵蔵の金田一耕助を踏襲していますね。内容が原作を大幅に改変されたものになっているのも同じ。何しろ原作の犯人が登場しないんですから。

健さんは残念ながら推理探偵の雰囲気はありませんでした。健さんなら、やっぱりハードボイルドだよなァ。

ところで、志村妙子は太地喜和子のデビュー当時の芸名で〜す。

 

『吸血蛾』(1956年・東宝/監督:中川信夫)

浅茅文代(久慈あさみ)がデザイン・コンクールで優勝した日、文代へ狼男から脅迫状が届く。文代が在仏中に同棲していた伊吹が文代を追って日本へ戻ってきたのだ。伊吹は狼憑きという奇病を持っており……

監督、脚本、音楽、役者と一流を揃えているのにダメ映画。

古い洋館に住む昆虫学者の東野英治郎なんていいムードを出しているんですけどね。結局脚本が悪いのかなァ。

金田一耕助は池部良。トレンチコートにソフト帽と、ハードボイルド探偵のスタイルです。拳銃で射たれて池に落ち、死んだと見せかけて犯人の前に現れるのは、少年向けヒーローですよ。

そうはいっても、当時評判の八頭身美人・伊東絹子を見ることができたので是としましょう。

 

 

『幽霊男』(1954年・東宝/監督:小田基義)

幽霊男と名乗る殺人鬼にモデルクラブの女性が次々に殺される。金田一耕助(河津清三郎)が捜査を開始するが、ストリッパーに転向したモデルまでが劇場で殺され……

後年の新東宝作品のような猟奇趣味だけが売りですね。間延びしたシーンの連続でスリルもサスペンスもありゃしない。

河津清三郎の金田一耕助は、いかにも名探偵といった感じのスーツ姿の片岡千恵蔵タイプ。千恵蔵の“金田一耕助”シリーズがヒットしたものだから、右に倣えですね。

ラストも警官隊の先頭にたって銃撃戦で犯人を射殺します。ハードボイルドの探偵でやんす。犯人は殺した女を写真に撮って楽しむという殺人狂。若かりし頃の塩沢トキ(当時は塩沢登代路)さんが、モデルのひとりとして殺されま〜す。

 

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