名探偵・金田一耕介


『三本指の男』(1947年・東映/監督:松田定次)

金田一耕介(片岡千恵蔵)は、恩人の久保銀造(三津田健)の姪・春子(風見章子)の結婚式の祝いに久保邸を訪ねる。春子の相手の一柳賢造(小堀明男)は旧家の嫡男で、当主の一柳糸子(杉村春子)はこの結婚に反対していた。春子には田谷照三という愛人がいたことを知らせる手紙が一柳家に届くが、田谷照三は戦争前に近所に住んでいただけの関係でそんな事実はなかったことを春子の友人・白木静子(原節子)が耕介に証言するが、戦争で顔面に傷を負い、指も失って三本指になっていた田谷照三を静子は神戸で目撃していた。結婚式の日、三本指の男が村に現れ……

トンネルに入った列車内での女性の悲鳴に始まるオープニングは期待させますが、片岡千恵蔵が三本指の男に変装して現れてからはいけません。殺人に見せかけた自殺が、保険金目的の自殺に見せかけた殺人とは、目が点になりましたよ。

原作が有名すぎて犯人を変えたのでしょうが、そのために無理が生じましたね。だけど、原作と異なる結末が受けたのか、映画はヒットして原作のイメージとは全く違う片岡千恵蔵の金田一耕介シリーズが作られていきます。

同時期に、岡譲二、河津清三郎、池部良が金田一耕介を演じていますが、千恵蔵のイメージを踏襲したスーツ姿の名探偵として定着しました。その後も高倉健と中尾彬の金田一がありますが、石坂浩二の金田一耕介が登場するまでは原作のイメージとは程遠いものでしたねェ。

 

『獄門島』(1949年・東映/監督:松田定次)

戦友の鬼頭千万太の臨終に立会った金田一耕介(片岡千恵蔵)は、千万太の「自分が死んだら三人の妹が殺される」という言葉が気になって獄門島へやって来る。鬼頭家は本鬼頭と分鬼頭に分かれて、互いに反目しあっていた。千万太の祖父である嘉右衛門(片岡千恵蔵の二役)は病に伏せており、父の与三松は精神異常で座敷牢に入れられていた。腹違いの妹三人も普通ではなかった。家政は千万太の従兄妹の早苗(三宅邦子)が取り仕切っており、早苗の兄の一が鬼頭家の跡取りとして認められていたが、異常な血を嫌って家を出ていた。分鬼頭の儀兵衛(進藤英太郎)は本鬼頭と対立しており、妻の志保(月宮乙女)は愛人の鵜飼章三(島田照夫)を使って、本鬼頭の三姉妹を誘惑させようとしていた。嘉右衛門が息を引きとり、三姉妹のうち花子が殺され、清水巡査(小杉勇)に犯人と間違われて耕介は留置されてしまう。偽電報でやってきた助手の白木静子(喜多川千鶴)と、海上ギャング団を追ってきた磯川警部(大友柳太朗)によって耕介は釈放されるが、雪枝、月代と三姉妹は全て殺されてしまい……

海上ギャング団と金田一耕介が銃撃戦をしたりして、原作とは大きくかけ離れた内容になっています。犯人も原作とは異なりますからね。

発句の手がかりとか釣鐘の舞台装置などは一切なく、住職の了然(斎藤達雄)、医者の幸庵(沢村国太郎)、村長の真喜平は刺身のツマのようなものです。

推理に苦労するのは、金田一耕介以上に観客で〜す。

 

『三つ首塔』(1956年・東映/監督:小林恒夫・小沢茂弘)

明治の末年、佐竹玄蔵(吉田義夫)は殺人を犯して米国に逃げたが、彼の友人・高頭省三が犯人として捕まり獄死する。米国で億万長者となった玄蔵は、昭和10年にひそかに帰国すると省三を供養するために三つ首塔を建立し、黒川弁護士(小沢栄太郎)を呼んで相続人を決めた。昭和30年、莫大な財産を残して玄蔵は死に、黒川弁護士は上杉博士(宇佐見諄)を訪ねる。上杉博士の養女・宮本音弥(中原ひとみ)が玄蔵の孫娘で遺産相続人だったのだ。しかし、遺産相続には音弥が省三の孫・俊作と結婚するのが条件だった。玄蔵の弟の孫・笠原姉妹の踊りの発表会に俊作が現れるが、何者に殺される。ちょうど会場に金田一耕介(片岡千恵蔵)と助手の白木静子(高千穂ひづる)がきており、遺産をめぐる連続殺人の捜査をすることになる。音弥は、謎の青年・堀井敬三(南原宏治)に誘拐され……

片岡千恵蔵の金田一耕介は6本作られていますが、これは最終作。当然、犯人は原作とは異なります。

僧侶に変装して謎解きをし、パッと変装をとるとダブルのスーツで現れる。おまけに最後は銃撃戦。これでは、七つの顔の男ですよ。はっきりいって、限界がきていますね。

ところで、小林恒夫と小沢茂弘の共同監督になっていますが、片岡千恵蔵と小林監督がケンカして小沢監督が千恵蔵に呼ばれたとのこと。何しろ、片岡千恵蔵は重役スターなので監督といっても逆らえません。それで千恵蔵の出演シーンを小沢監督が撮ったようです。

 

 

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