新東宝のアクション映画


男の世界だ(1960年/監督:土居通芳)

高宮敬二

北島組のチンピラに兄を殺された吉田(吉田輝男)は、新聞記者の菅原(菅原文太)や、兄が働いていた港湾会社の現場監督・寺島(寺島達夫)の協力で殺人の真相を調査する。北島組の妨害にあい、吉田は命を狙われるが、彼を救ったのは殺し屋の高宮(高宮敬二)だった。事件の背後に港湾会社専務の野崎(細川俊夫)がいることがわかり……

吉田輝男、菅原文太、寺島達夫、高宮敬二の4人を売出すために作られたような映画。みんな背が高くてスラッとしていたので、当時完成したばかりの東京タワーにちなんで“ハンサムタワーズ”と名づけられたんだよォ。

だけど、マイナー映画会社のエログロ路線の中で、人気なんか出るわけありません。人気が出たのは、新東宝がつぶれた後のこと。寺島達夫は、テレビドラマの『青年の樹』で、吉田輝男は松竹のメロドラマで、菅原文太は東映のヤクザ映画で、高宮敬二は……人気も出ず消えていきました。

 

裸女と殺人迷路(1959年/監督:小野田嘉幹)

野球場の売上金を強奪した4人組(清水将夫、丹波哲郎、御木本伸介、和田孝)が警察に追われて殺人迷路と呼ばれるカスバに身を隠すが……

オープニングで太めの女が下着姿で殺されるだけで、裸女なんてどこにも出てきませ〜ん。タイトルで客を釣ろうとするなんて、やっぱり新東宝です。

和田孝と三ツ矢歌子の甘っちょろい純愛物語なんてなくして、犯罪映画に特化したら、もう少しマシな作品になったと思いま〜す。

左記画像は三ツ矢歌子と和田孝

 

女体桟橋(1958年/監督:石井輝男)

宇津井健と筑紫あけみ

ホテルでダンサーが殺され、謎の男が立ち去る。男はコールガール組織を摘発するために大阪からきた吉岡刑事(宇津井健)だった。彼は組織に近づくために客を装っていたのだ。組織の本拠と思われるナイトクラブ“アリゾナ”で吉岡は6年前に別れた恋人ルミ(三原葉子)と出会う。ルミは組織のボスの情婦だった。吉岡は公金横領で手配中の犯人ということをルミに信じ込ませて組織に潜入するが、吉岡の身分を知る婦人記者(筑紫あけみ)が現れ……

宇津井健は、逆立ちして見ても犯罪者には見えませ〜ん。大阪警視庁?の潜入刑事というのはムリがありますねェ。他の新東宝アクションでも潜入刑事になったり、殺し屋になったりしていますが、イメージ的にどうもね。宇津井健さんはスーパー・ジャイアンツですよ。

およそ一流には見えないヌードダンサーによるフロアーショーばかり出てきますが、扇情的なのは三原葉子のダンスシーンだけで〜す。

 

猛吹雪の死闘(1959年/監督:石井輝男)

粕谷五郎(宇津井健)はオリンピックに出場したこともあるスキーの名手だったが、フィアンセを雪崩で失ってから、山小屋で暮らしていた。麓のスキーハウスからガイドの依頼があり、行ってみると客は女(三原葉子)連れの男三人だった。彼らは山越えをしたいと言う。五郎は彼らの軽装を見て、断るが……

雪山を舞台に、女を人質にして逃亡を図る3人組の宝石強盗と山岳ガイドの闘いを描いたアクション映画。

ファッションモデルから映画界入りしたばかりの菅原文太が悪役を演っていますが、セリフがヘタクソな上に悪党としての凄みが全然ありません。

三原葉子も雪山ではグラマラスな肢体を見せる場面がなく、彼女の持ち味が活かされていませんね。スチールにはパンティだけの写真があったけど。

宇津井健だけが変わらぬキャラクター。彼って生真面目なヒーローしかできないんですよねェ。

 

女体渦巻島(1960年/監督:石井輝男)

対馬の厳原にあるキャバレー“怒涛”は麻薬密輸の中継基地だった。マダムの百合(三原葉子)は、ボス陳雲竜(天知茂)の情婦だった。ある日、“怒涛”に百合の昔の恋人・大神宣彦(吉田輝男)が現れ……

 対馬を日本のカサブランカに見立て、国際麻薬組織の中継地に設定するなんて、う〜ん、無国籍アクションだァ。

アメリカン・コミックのギンギンの原色世界と、ノワールのハードボイルド世界という相反するものが融合した奇妙な味わいがある作品でした。題名から想像するような三原葉子のお色気シーンが少ないのが不満で〜す。

 

地平線がぎらぎらっ(1961年・新東宝/監督:土居通芳)

刑務所の雑居房、カポネ(多々良純)、教授(天知茂)、バーテン(沖竜二)、海坊主(晴海雄三)、色キチ(大辻三郎)の五人が刑務所独特の秩序を作って安住していた。そこへ、既成秩序なんてクソクラエの新人類マイト(ジェリー藤尾)が入ってくる。

ルールを守らないマイトを五人が殺そうとした時、マイトは大量のダイヤモンドを隠していることを告げる。カポネは刑期を終えて出所する海坊主に命じて事の真相を確かめさせ、事実とわかるとマイトのダイヤを手に入れるため脱獄計画をたてる。教授の計画通り脱獄は成功し、彼らはマイトがいう地平線がぎらぎらしている地点を目指して……

一流俳優が出ていない典型的なB級映画ですが、シニカルな笑いが満載された傑作コメディ・アクション映画です。

欲望に憑かれた人間の愚かしくもしたたかな生き様が、見事なまでに滑稽でエネルギッシュに描かれています。軽快なテンポで話が進んでいき、淀んだところがありません。これは演出の巧さだと思いますね。知名度のない監督のため損をしていますが、再評価されてもよい作品だと思いま〜す。

 

 

 

 

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