新東宝“ライン”シリーズ


白線秘密地帯(1958年・新東宝/監督:石井輝男)

トルコ風呂で、トルコ・ガールが客に殺される。現場に落ちていたチケットから、背後に会員制秘密売春クラブがあることがわかる。犯人とおぼしき男の死体が発見され、彼の帽子を手がかりに田代刑事(宇津井健)たちの捜査が開始され……

ライン・シリーズ第1作目。1956年に成立した売春禁止法が58年4月1日より施行され、赤線(公娼街)が廃止されました。これでもって、営利を目的としたセックスはできなくなったんですね。ギャンブル・酒・セックスという人間の三大欲の一つを禁止したのですから、当然アンダーグランドに売春組織ができます。

この作品では白線と呼ばれた?秘密売春組織の実態をあばいていく警察の活躍をドキュメンタリー・タッチで描いています。予算の関係か、ロケを多用し、隠しカメラで撮影した映像は、意外な迫力を出していましたよ。ただ、フィルムが欠落しているのか、すっ飛んだシーンが何箇所かあったのが残念でしたね。特に天知茂が登場する売春クラブのシーンが、やけに短かかったような気がします。

殺し屋役で若き日の菅原文太も、ちょこっとだけ出演していま〜す。

 

 

黒線地帯(1960年・新東宝/監督:石井輝男)

秘密売春組織を追っていたトップ屋の町田(天知茂)は、組織の罠にかかり、売春婦殺しの容疑者として警察から追われることになる。町田は自分を罠にはめた、女易者とポン引き、それに旅館の女中を探すが……

警察に追われながら、真犯人を探すのはサスペンス映画の定番メニューのひとつですが、歯切れのよいタッチで石井監督はそれなりに見せてくれます。

三原葉子が豊満な肢体を存分に見せてくれるのが嬉しいですねェ。

海軍キャバレーなんてェの出てくるし、新宿コマ劇場辺りの懐かしい風景も出てきます。前作にも出てきた、蒸気機関車が走る貨物線のある埋立地のような場所は、一体どこだろう?

 

 

黄線地帯(イエローライン)(1960年・新東宝/監督:石井輝男)

殺し屋・衆木(天知茂)は、神戸税関長を殺すが、雇い主の阿川に密告され警察に追われることになる。衆木は、警察の目を逃れるために公衆電話中のルミ(三原葉子)を脅してアベックを装い、阿川へ復讐するために神戸へ向かう。恋人ルミとの電話中に途切れた新聞記者の真山(吉田輝男)は、今度の殺人が神戸にある国際売春組織の黄線地帯と関係があると考え、ルミの捜索を兼ねて神戸に向かう……

神戸にカスバがあったとは……ウ〜ン、無国籍映画だ。

石井輝男の演出は、歯切れがよく、日活無国籍アクションとは違ったドライな魅力があります。「女の約束と貞操を信じる奴は低脳だ」というセリフなんか、宍戸錠だとユーモアになりますが、天知茂が喋るとクールなんですよ。若い頃の天知茂の持ち味が出ている作品といえま〜す。

ところで、天知茂から逃げるために、三原葉子が百円札にメッセージを書くシーンがあるんですが、百円札の肖像って板垣退助だったんですね。百円札って、何時頃まで使われていたんだろう……?

 

 

セクシー地帯(1961年・新東宝/監督:石井輝男)

部長から預かった書類を真弓(三原葉子)にスラれた吉岡(吉田輝雄)に、大阪支店への転勤命令が出る。吉岡の恋人の玲子(三条魔子)は秘密クラブのコールガールで、客の一人であった部長から手切れ金を取り、組織から抜けようとするが殺されてしまう。容疑者にされた吉岡は、町で真弓を見つけ、書類を取り戻すが中身は秘密クラブの会員証だった。真弓と吉岡が、秘密クラブを探りはじめるが……

三原葉子が『黄線地帯』に続いて、可愛い女を演じています。とはいっても、池内淳子と違って見せるところは、ちゃんと見せていますけどね。

前3作と比べると、これといって特長のない作品で、三条魔子の現代でも通用するキャラクターが当時としては珍しかったかな。

三原葉子が待合せの目印としてウインキー(ダッコちゃん人形)を腕につけていましたが、このビニール人形が大ブームだったんですよねェ。

 

 

火線地帯(1961年・新東宝/監督:武部弘道)

チンピラやくざの伸一(吉田輝男)と健次は、伸一の拳銃の腕前を見込まれ重宗組に雇われる。そして、拳銃密売人の黒岩(天知茂)が梶川組に売った拳銃を強奪するが、重宗(田崎潤)のところへ、警察へ密告する旨の脅迫電話が入る。黒岩が目撃していたのだった。伸一は重宗から疑われ、潔白を証明するために黒岩に接触する。黒岩と一緒に行動しているうちに、伸一と黒岩の間に友情が芽生え……

題名に“地帯”がついていますが、内容的には“ライン”シリーズとは別物ですね。

この作品での吉田と天知の関係は、日活における赤木圭一郎と宍戸錠の関係に似ています。日活と違うのは、天知と三原葉子の比重が大きいことかな。

三原葉子は吉田に惚れる田崎潤の情婦役で、日活だと白木マリといったところです。キャバレーでフロアー・ダンスも見せてくれますからね。

日活だと笹森礼子的存在の、吉田を慕う佐々木孝子(健次の妹)に魅力がないので、吉田も三原葉子を愛してしまうので〜す。

 

 

 

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