新東宝のアクション映画


新東宝のアクション映画に“新東宝カラー”がハッキリ出てくるのは、大蔵貢は社長に就任して“エロ・グロ”路線に転換した1956年以降ですね。製作費を低くするために、新東宝内部で新東宝の助監督を監督にして、新東宝専属の安い俳優を使って作った作品ということになります。

大蔵貢は弁士時代、どのようなストーリーであっても男女が出ていれば“男女貞操の危機”というストーリーに必ず設定しなおし、観客を沸かせたそうですから、“エロ”は当然必要条件になっています。

 

女王蜂(1958年・新東宝/監督:田口哲)

関東港一家のお竜(久保菜穂子)は、病気の父親に代わって組を取り仕切っていた。しかし、新興ヤクザの真崎(天知茂)が港一家の縄張りを狙って嫌がらせを始める。マーケットの火事で父を亡くしたお竜は、「ヤクザが喧嘩する時は、命を捨てて一人でやるものだ」という父の教えを守って、真崎と拳銃で決着をつけようとするが……

牧源太郎の小説を映画化したシリーズ第1作目。藤純子の“緋牡丹博徒”や、江波杏子の“女賭博師”よりも10年以上早くシリーズ化された女侠モノです。恋人(中山昭二)よりも、組と縄張り命をかける女親分の悲恋を描いたオーソドクッスな内容でしたね。

 

 

女王蜂の怒り(1958年・新東宝/監督:石井輝男)

海堂ゆり(久保菜穂子)は亡き父に代わって神戸港の荷役仕事を請け負っていたが、積荷を何者かに奪われてしまう。ゆりと敵対関係にある竜神組の剛田(天知茂)は、海堂組の縄張りを狙ってさまざまな嫌がらせをする……

石井輝男らしいハイカラな部分とエグイ部分が混じりあったポップなアクション映画になっています。エグイ部分は久保菜穂子が、天知茂に薬を飲まされて犯されるところ。緋牡丹お竜さんだったら、菅原文太あたりが現れたりしてピンチを脱出するんですがね。

この映画にも菅原文太が出演していますが、天知茂の子分で学芸会のような演技を披露しています。

緋牡丹お竜の文太に代わる存在が宇津井健なんですが、これが明るいんだなァ。謎の流れ者ハリケーンの政だなんて、どこから見てもヤクザに見えませ〜ん。

 

 

女王蜂と大学の竜(1960年・新東宝/監督:石井輝男)

終戦間もない頃の新橋では、第三国人が横暴の限りをつくしていた。関東桜会の桜千之助(嵐寛寿郎)は昔ながらのヤクザで、露天商を守るために第三国人と対立していた。大学の竜(吉田輝雄)が、三国人相手に喧嘩をしている千之助の一人娘・珠美(三原葉子)を救ったことから……

諸肌脱いだ三原葉子が神輿の上に乗って、ストリッパーを乗せた悪党たちの神輿とぶつかりあうシーンは石井輝男らしい演出です。

アラカンさんが三原葉子のアラレモナイ姿を見て、一生懸命とめているのが実に可笑しいんですね。三原葉子の女親分は不良娘にしか見えませ〜ん。

 

 

女王蜂の逆襲(1961年・新東宝/監督:小野田嘉幹)

滝壺で転落死した叔父貴の弔問に鬼怒川温泉にやってきた関東桜会の女親分・桜珠美(三原葉子)は、旅館経営をしている息子の慎介(御木本伸介)から、地元のヤクザ黒部組が源泉の権利を狙っていることを知らされる。黒部組の賭場へ挨拶に行った珠美は、そこで謎の風来坊・無鉄砲の政(天知茂)に出会う。政は黒部に腕を見込まれ、慎介殺害を頼まれるが……

格闘シーンがやたらと多いんですが、どれも意味のないものばかり。天知茂は足が短いので、蹴りを見せてもカッコ悪く、可笑しいだけです。ガンプレイもお粗末だし、日活アクションのレベルの高さを感じましたね。

 

 

女獣(1960年・新東宝/監督:曲谷守平)

松浦浪路と小畑絹子

現金輸送車襲撃事件が起こり、現場でズベ公の中田秀子という女が殺された。奪われた金の一部が香港で使われたことから警察は背後に大規模な麻薬密売組織があると考え、麻薬捜査官(菅原文太)と婦人警官の瀬川路子(松浦浪路)を新宿に潜入させる。路子がヤクザに危うく麻薬を打たれようとしたところを救ったのは、ボスの情婦の朝子(小畑絹子)だった。朝子は自殺と見せかけて殺された父の仇を捜していたが……

新東宝らしいエロチカル・アクション。昭和30年代の雰囲気を楽しむだけで、内容なんか期待してませ〜ん。

松浦浪路はお姫様女優でしたが、この作品ではスカートを捲り上げられ、パンツ丸見えの演技をしています。その後の作品で彼女を見かけなくなったけど、大蔵体制に嫌気がさして引退したんですかね。

小畑絹子が地下鉄・丸の内線と銀座線を乗り継いで新宿から浅草に行くシーンで、懐かしの東京の風景を見ることができたので満足しましょう。

 

 

 

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