新選組映画


幕末純情伝(1991年・角川映画/監督:薬師寺光幸)

つまんねえ映画だった。舞台だとちがうのかなあ。だけど、これは小説を映画化したものなんだよなァ。

沖田総司が女だったら、そして彼女を巡って土方歳三と坂本龍馬が恋のライバルとなったら、という大胆な発想による、つかこうへいの戯作の世界が、映画だと退屈きわまりない。ヘタなチャンバラを多く見せるより、会話の面白さをもっと活かした演出をすればよかったのに……

それにしても牧瀬里穂って魅力ないなあ。彼女の年代の頃の薬師丸ひろ子は、魅力的だったよォ。

 

沖田総司(1974年・東宝/監督:出目昌伸)

新選組の結成から25歳で死ぬまでの沖田総司(草刈正雄)の生涯を描いた作品。

草刈正雄が明るく飄々とした青年・沖田を好演しています。高橋幸治の土方歳三は少し重い感じですが、冷徹ぶりはイメージに合っています。米倉斉加年の近藤勇は従来のイメージとは違うのですが、不思議な魅力を持っていました。

河原崎次郎の山南敬介、神山繁の清川八郎、芹沢鴨の小松方正、うまいキャスティングだなァ。殿山泰司と大滝秀治の出番は少ないけど存在感があるし、総司の恋人役の真野響子も初々しくて可憐で可愛かったよォ。

売出す前の西田敏行も永倉新八役で出演しています。大野靖子の脚本はソツなくまとめただけの青春時代劇ですが、役者によって光り輝くものに仕上がりましたね。

 

御法度(1999年・松竹/監督:大島渚)

新選組に美少年(松田龍平)が入隊してくる。同時に入隊した浅野忠信と衆道の契りを結んだという噂が広まる。松田龍平に恋する男は他にもおり、田口トモロヲも松田龍平と結ばれる。田口トモロヲが何者かに殺され、近藤勇(崔洋一)と土方歳三(ビートたけし)は、規律の乱れを危惧し、対策を練る。

ブッラク・ユーモアに溢れた怪作です。

松田龍平の妖しい魅力もさることながら、人を得た脇役が素晴らしいですね。田口トモロヲがいかにもといった役だし、坂上二郎とトミーズ雅もいい味を出しています。とくに、ビートたけしとの間で交わされるトミーズ雅のむすっとした表情がバツグンに可笑しいんですよ。

だけど、表情のないたけしの演技だけは、私は好きになれませ〜ん。

 

近藤勇・池田屋騒動(1953年・新東宝/監督:池田富保)

新選組の局長・芹沢鴨(進藤英太郎)は、軍用金と称して商家から金品を強奪し、拒絶する商人に対しては、家を焼き討ちする始末。その乱行を見かねた京都守守護職は断を下し、命を受けた近藤勇(嵐寛寿郎)は芹沢に切腹を勧める。しかし、芹沢は聞きいれず……

アラカンの近藤勇は立派過ぎ。暴虐の限りをつくす芹沢を斬ろうとする、沖田(徳大寺伸)や土方(阿部九州男)を、新選組結成の功労者ということで厳しく止めるんですよ。芹沢を斬るのも、暗殺ではなく、1対1の剣の勝負。結局、これがクライマックスのようなもので、池田屋騒動はアラカンのチャンバラを見せるだけの付け足しのようなものです。

階上でチャンバラしていたかと思うと、階下でチャンバラ。いつのまにか屋根でチャンバラと、シーンの繋がりがメチャクチャ。アラカンの立回りには満足ですが……

映画なのでフィクション優先でも構わないと思いますが、史実とは大きくかけ離れた作品で〜す。(せめて画像だけは、本物の近藤勇)

 

新選組(1937年・東宝/監督:木村荘十二)

鳥羽伏見の戦いで敗れた新選組が江戸に帰り、甲陽鎮撫隊となって最期を迎えるまでを描いた作品。

近藤が河原崎長十郎、土方が中村翫右衛門、沖田も前進座の俳優さんなんだろうが、私は知らな〜い。

時代の敗残者としての新選組を描いた重厚な内容(脚本は村山知義)となっていますが、チャンバラシーンがないのは気に入りません。前進座では、仕方ないか。

 

新選組(1969年・東宝/監督:沢島忠)

新選組の成立から壊滅までを、カケ足で総花的に描いた作品。

沢島監督が語るところによると、脚本は松浦健郎となっていますが、全部自分で書きなおして1枚も使わなかったとのこと。

沖田総司(北大路欣也)が鳥羽伏見の戦いで突撃して死ぬのは、う〜ん。

近藤勇役の三船敏郎は、百姓あがりの侍が、侍として誠一途を貫いて死んでいく、男の哀しみをよく表現していましたよ。立回りも豪快だし、少しトウが立っていても近藤勇はこうでなくちゃァね。小林桂樹の土方はダメ。イメージと違うんですよねェ。

芹沢鴨役の三国連太郎は巧いなあ。性格にヒネリを効かしているんですよ。歴代・芹沢の中で最高だと思いますよ。

 

新選組(1999年・フジテレビ/監督:市川崑)

黒鉄ヒロシのマンガをそのまんま映画にした感じ。

白土三平の原画をそのまま使った大島渚の『忍者武芸帳』(1967年)のように、黒鉄ヒロシの原画を切り抜いて動かすという、アニメより紙芝居に近い手法で映画化しています。

絵が映画的な空間と拡がりもって動き出し、躍動感ある映像となっています。

近藤、土方などが、実写にみられるヒロイズムの片鱗もなく、人間味あふれる人物像になっていたのは、原画絵の効果ですね。市川崑の実験精神に脱帽。

『忍者武芸帳』の脚本を書いた佐々木守が、この作品でも脚本を書いていました。声の出演は、近藤が中村敦夫で、土方が中井貴一で〜す。

 

壬生義士伝(2002年・松竹/監督:滝田洋二郎)

吉村貫一郎(中井貴一)は、家族の窮乏を救うために南部藩を脱藩して新選組に入隊する。剣の腕は一流だが、お金に対してはケチくさかった。そんな彼を、隊士たちはやっかみ半分で軽蔑していたが、幕末動乱の世にあっても動じない武士の生き様を持っていた……

家族おもいの一途なサムライを中井貴一が好演しています。浅田次郎の原作は読んでいませんが、妻子持ちのサラリーマンが感情移入できる主人公ですね。

映画の内容はというと、少し冗漫なところがあります。中井貴一が死を迎えるところから後がダラダラしすぎています。

それにしても、時代劇の似合う役者が少ないですね。中井貴一、佐藤浩市、渡辺謙、役所広司、真田広之の5人で回している感じですからね。

佐藤浩市といえば、この作品で斎藤一を演じていたのですが、刀を右腰に差していたのには違和感を持ちました。斎藤一は左利きなのですが、サムライは左利きでも左腰に刀を差すものなのです。話は嘘ぱちでも許せるのですが、基本的なことは崩さないで欲しいですね。こういうイイ加減さが、時代劇をダメにするんだよなァ。

 

新選組始末記(1963年大映/監督:三隅研次)

幕末動乱の時代、自分の生き方を模索していた山崎丞(市川雷蔵)は、近藤勇(若山富三郎)と出会い、武士としての生き方に共鳴して新選組に入隊する。しかし、芹沢暗殺における土方歳三の策謀に反発し……

三隅監督の演出以前に、山崎丞を主人公にした星川清司の脚本が意外と良いんですよ。それに出演者のキャラもピッタリあっていましたね。

ワカトミの近藤も良かったけど、天知茂の土方がバツグンに良いですよ。感情に流されず冷酷に判断を下す。私の持っている土方のイメージにピッタリだなァ。

松本錦四郎の沖田総司も良い。だけど、市川雷蔵は可もなく不可もなくかな。

何といっても、池田屋襲撃における若富の立回りは、迫力があって素晴らしいのだ。

 

 

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