箱根風雲録(1952年・新星映画/監督:山本薩夫)
徳川4代将軍・家綱の時代、湖尻峠を掘りぬいて、芦ノ湖の水を箱根の西にひく大工事を完成させた、江戸浅草の商人・友野与右衛門の物語。 友野与右衛門(河原崎長十郎)は、新田開発のため、箱根用水の建設を計画する。しかし、商人と農民だけで実施した大工事の成功は、お上の威光を失わせるものとして、幕府権力は妨害を加える。与右衛門は、いくたびも捕えられたり、命を狙われたりするが、決して屈せず、農商協力の箱根用水はついに完成する。しかし、完成した日に与右衛門は幕府の凶刃に倒された。 |
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戦後の社会主義運動が盛んな頃に製作された作品で、観念的すぎて、現在観ると少しシラけます。 それと、大スケールの歴史革命劇を描くには、独立プロでは少し荷が重すぎて、中途半端な出来に終わっていますね。 |
剣難女難・女心伝心の巻、剣光流星の巻(1951年新東宝/監督:加藤泰)
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女性にはもてるが腕はカラッキシという若侍が、危難にあう度にたくましく成長していく物語。原作は吉川英治の同名小説です。 福知山・松平家は、宮津・京極家と犬猿の仲。両家対抗の剣術試合で京極家に逗留していた剣豪・鐘巻自斎に敗れた兄の仇と、家名再興のために新九郎(黒川弥太郎)は旅に出るが、剣の腕はまったくダメ。許婚と心中まで考えるが……。 加藤泰の監督デビュー作で、得意のローアングル演出がこの作品でも効果をあげていますよ。特に、街道下の宿場町の乱闘シーンと、街道上の乱闘シーンを同一フレームの中におさめた構図の見事さは一見の価値があります。 だけどこの映画、阿部九州男、加賀邦夫、沢村国太郎という傍役陣に比べて、主役の黒川弥太郎と、彼を取り巻く女優陣に魅力がないんですな。傍役ばかりが目立つ映画で〜す。 |
すっ飛び駕(1952年・大映/監督:マキノ雅弘)
不正を摘発しようとして悪党一味に狙われている、奥州棚倉藩の金子市之丞を河内山宗俊(大河内伝次郎)が助ける物語。 脚本が伊藤大輔で、監督がマキノ雅弘、おまけにカメラが宮川一夫とくれば、つまらないはずはありません。ただ、大河内伝次郎は貫禄はあっても立回りが少ないのが気に入りません。 お話は天保六歌撰もので、河内山宗俊以外にも森田屋清蔵(黒川弥太郎)、片岡直次郎(河津清三郎)、三千歳(長谷川裕見子)といった、お馴染みが顔を揃えています。 講談とは内容が違っていますが、子母沢寛の原作がそうなっているのかなァ。 |
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赤城の血祭(1955年・新東宝/監督:マキノ雅弘)
北上弥太郎 |
上州・国定村では親分の忠治(田崎潤)が陣頭にたち、旱魃に備えて溜池工事をしていた。しかし、村人の生活は苦しかった。借金の抵当に連れて行かれようとする一善飯屋の娘・お光(筑紫あけみ)を、旅人の三股の新蔵(北上弥太郎)が悪名主の茂兵衛(江川宇礼雄)から救う。 一方、忠治は人足の労賃を払わない代官を斬り、御用金を奪って捕方に追われる。工事は完成するが、旱魃がきても百姓に冥加金を要求して池の水門を開けようとしない茂兵衛に対し新蔵は…… 傑作とはいえませんが、マキノ雅弘らしいリズムの味わいある股旅時代劇。主人公にピンチがなく、スムーズに行きすぎるため、盛り上がりに欠けます。 最近では知っている人が少なくなったけど、北上弥太郎って結構人気があったんだよなァ。主題歌「赤城鴉」まで歌ってさ。 |
雪の夜の決闘(1954年・大映/監督:衣笠貞之助)
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恩赦で佃島から戻ってきた我孫子の長次(大河内伝次郎)は、女房おちか(木暮実千代)を捜しに江戸へ行く途中で、重病の女の最期を看取ってやる。そして女の頼みで遺児・三吉を、江戸・橋場の弥五郎(瀬川路三郎)の許にいる女の亭主・仁吉(伊沢一郎)のところへ連れて行く。しかし、仁吉は名前を変え、弥五郎の娘と結婚して弥五郎の養子になっていた。弥五郎は高利貸しと女郎屋を営む悪どいヤクザで、長次は弥五郎の家で借金の返済を求められている弟分の清七(黒川弥太郎)に出会う。長次が清七の家に行くと…… 股旅映画の典型的なパターン。予想通りに話が展開していきますが、衣笠監督はオーソドックスな演出でじっくり描いており、最後まで手抜きがありません。 大河内伝次郎がイイですねェ。傑作とはいえませんが、小道具や所作など、時代劇らしい時代劇でした。 |
『燃ゆる牢獄』(1950年・東宝/監督:渡辺邦男)
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大火が発生し、牢屋敷も延焼しそうになり、牢奉行の片岡千恵蔵は三日の猶予を与えて囚人たちを解き放つ。母の死を看取るために江戸を抜け出した囚人の高田浩吉が、不正役人の沢村国太郎の追及をのがれて刻限までに戻ってくることができるかが、この作品のポイントです。 渡辺邦男はオーソドックスな演出で、時代劇のツボを押さえており、最後までダレることなく見せてくれました。 それにしても、東宝作品なのに片岡千恵蔵や高田浩吉が出演しているのが珍しいですね。 |