懐かしのB級SF映画


SF映画は特撮技術の進歩により、リアルで迫力あるものになり、今ではA級ジャンルになってきましたね。

しかし、1950年〜60年代のB級SF映画(当時のSF映画は見世物的存在にすぎず、A級作品と呼べるものは数少ない)を観ていると、物語の基本パターンは60年代までに出つくした感じがします。特撮がチャチで、観るに耐えないような作品ばかりかと思っていたのですが、現在の映画にないホノボノとした味わいがあって、結構楽しめましたよ。

 

『放射能X』(1954年/監督:ゴードン・ダグラス)

ニューメキシコの砂漠をさまよっている少女が救出される。9年前の核実験の影響で突然変異した巨大な蟻に家族が襲われ、そのショックで少女は記憶を失っていた。巨大な蟻塚が発見され、ガス攻撃により蟻塚の蟻は退治される。しかし、女王蟻は飛び去った後で、ロサンゼルスに巣を作っていた……

・最初に怪物の姿を見せず、怪物が襲った痕跡だけを見せて、謎と不安を盛り上げる

・原因を調査するために科学者がやってくる。

・怪物の正体の予測がついた頃、怪物が姿を現す。

・科学者が怪物の正体を政治家に説明し、怪物退治の攻撃部隊が編成される。

・怪物対策は成功したかに見えるが、次ぎの展開では今まで以上の危機が待ち構えている。

という怪物映画の基本通りの展開を、ゴードン・ダグラスは丁寧な演出で描いています。

現在の特撮技術と比べると稚拙ですが、怪物の見せ方が巧いので、古さを感じなかったですねェ。

 

『大怪獣出現』(1957年/監督:アーノルド・レイヴェン)

震によって地殻が崩れ、古代の巨大なカタツムリが湖底から現われ、人間を襲う……

古代のカタツムリが現代に甦ったのは、放射能に汚染された湖水の影響という、これまた1950年代定番の放射能怪物。1950年代は核の恐怖を最も身近に感じていた時代なんですよねェ。それにしても、この怪物、イモムシみたいでカタツムリに見えないんだよなあ。基地の科学者がカタツムリの映像を使って生態を説明するまで、カタツムリだとは思わなかったです。

カタツムリじゃあ、動きがスローモーで、人類滅亡の恐怖を感じませんよ。おまけにダラダラした演出で盛り上がりにもかけるし……

おバカ怪物映画としての話のタネ程度の作品でした。

 

『巨大アメーバーの惑星』(1959年/監督:イブ・メルキオー)

消息が途絶えていた宇宙船が火星から帰還するが、船長は謎のアメーバーに身体を侵され、女性科学者は記憶を失っていた。やがて女性科学者は、船長を助けるために地球出発から順を追って記憶をたどっていくが……

火星の情景を赤一色の書き割りで描いた低予算映画。火星のシーンを人物も含めて赤一色にすることにより、食人植物やコウモリ蜘蛛といった火星生物の特撮をチーピーさから救っています。この表現方法は特筆に値しますね。火星人の姿を見せずに、メッセージだけを伝えるのもグッド・アイデア。

最近の『ミッション・トゥー・マーズ』や『レッド・プラネット』より工夫があって、好感が持てますますねェ。

監督のイブ・メルキオーは、私の好きな『デス・レース2000』の原案を書いているんですよ。

 

『恐怖のワニ人間』(1959年/監督:ロイ・デル・ルース)

新婚旅行中に失踪した夫を捜しに彼の故郷へやってきた妻(ビバリー・ガーランド)が、そこで夫の秘密を知ることになる。彼は軍隊時代に墜落事故で瀕死の重傷を負ったが、ワニの再生能力を利用した治療で回復したものの、副作用として身体がワニの体質に変化しつつあった。

『ハエ男の恐怖』と同じような人体実験の悲劇を描いた作品。

ワニ人間の造形がチーピーで笑えます。ホントは笑うシーンじゃないんですけど。ワニ男より、屋敷の使用人のロン・チャニー(ジュニア)の方が不気味だったなァ。

1950年代のホラーには、時代より進んだ研究がもたらす悲劇が結構描かれています。米国民の中に、科学万能に対する潜在的恐怖があったのかもしれませんね。

 

『恐怖の火星探険』(1958年/監督:エドワード・L・カーン)

ラモン顔の火星怪物が宇宙船の乗組員を次々に襲うSFホラー。物語の設定が『エイリアン』に似ていることから再評価された作品です。

あんなチャチな宇宙船の中で、手榴弾を爆発させたり、バズーガ砲を射ったりして大丈夫なのかなあ。

作り方は粗っぽいのですが、先の読める展開になっておらず(何しろ思いつきの攻撃ばかりで、計画性がないんだから)、結構楽しめましたよ。

 

『ヴァンパイアの惑星』(1965年/監督:マリオ・バーヴァ)

2機の宇宙船が、謎の通信の発信先である惑星にやってくるが、乗組員たちは狂暴になり、互いに殺しあう。それは、その惑星に住む生物が、乗組員の身体を乗っ取るために仕掛けたものだった……

奇才マリオ・バーヴァの演出らしく、低予算映画ながら凝った造形美を見せてくれます。だだっ広い宇宙船の内部は、およそ宇宙船らしくないのですが、不思議な魅力があるんですよ。

ヒネリの効いたラストも、現在では珍しいものではありませんが、当時は意外な感じがしたんじゃないかなァ。

 

『惑星Xから来た男』(1951年/監督:エドガー・G・ウルマー)

惑星Xが地球に近づき、観測所の取材にやってきた新聞記者が、霧の夜に沼地で宇宙船を発見し、乗っていた宇宙人とコンタクトを取ろうとするが……

オール・セットに書き割り、内容もチーピーなトホホ作品。スリルも興奮もありゃしない。古けりゃイイってもんじゃないぞ。

埴輪顔した小柄な宇宙人の着ぐるみが、小人か子役か、なんてどうでもいいことしか頭に浮かんでこな〜い。

 

 

 

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