西部劇ランダム


『サン・アントニオ』

原題:San Antonio(製作:1945年)

監督:デビッド・バトラー、脚本:アラン・ルメイ&W・R・バーネット、撮影:バート・グレノン、音楽:マックス・スタイナー

 

サン・アントニオで酒場を経営しているロイ・スチュアート(ポール・ケリー)が家畜泥棒の首謀者である証拠を掴んだクレイ・ハーデン(エロール・フリン)は、メキシコからサン・アントニオに戻ってくる。しかし、その情報はロイに知れており、殺し屋が途中で待ち伏せしていた。クレイは保安官のチャーリーと殺し屋を倒すが、敵を欺くために歌手のジーン・スター(アレクシス・スミス)の馬車に強引に乗り込んでサン・アントニオの町に入る。ロイの酒場で歌うジーンの楽屋にクレイが訪ねた時、ロイの分け前に不満を持っている酒場の共同経営者レガール(ヴィクトル・フランサン)が、チャーリーを殺し、クレイがチャーリーに預けていた証拠書類を奪う。クレイは臨時保安官に任命され……

戦後最初の本格カラー西部劇。本格といったのは、その前にコメディ西部劇の『腰抜け二挺拳銃』があるからです。

悪党たちが仲間割れをし、主人公は歌姫とよろしくやっているうちに事件が解決していくというエロール・フリン主演ならではの西部劇です。

サン・アントニオの町が舞台なので、アラモ砦の廃墟が出てきたのは嬉しかったですね。それと、酒場での集団射ち合いに見られるモブ・シーンは、往年の西部劇の楽しさがあります。アレクシス・スミスが歌う「サム・サンディ・モーニング」も聴かせてくれますよ。

 

『掠奪の町』

原題:Texas(製作:1941年)

監督:ジョージ・マーシャル、脚本:マイケル・ブランクフォート&リュイス・メルツァー&ホレイス・マッコイ、撮影:ジョージ・ミーハン、音楽:M・W・ストロフ

 

南北戦争が終わり、ダン(ウィリアム・ホールデン)とトッド(グレン・フォード)はテキサスへやって来る。駅馬車強盗と遭遇した二人は、犯人に間違われて保安官に追われ、離ればなれになる。ダンはウィンドフォールの町にたどりつくが、保安官に見つかり、歯医者のソープ(エドガー・ブキャナン)に助けられる。しかし、ソープこそ駅馬車強盗の黒幕で、ダンはソープ一味に加わる。一方、トッドはキング牧場に雇われ、娘のマイク(クレア・トレバー)と仲良くなる。町のパーティでダンとトッドは再会し、ダンとマイクは互いに惹かれあう。東部で牛肉の価格が高騰していることから、トッドは牛の大群をアビリーンへ輸送することになる。ソープは牛を強奪する計画をたて、輸送途中で襲うようにダンに命じるが……

親友同士が敵味方に分かれ、ひとりの女性を愛するようになったら、悪に味方した方が死ぬのは西部劇の定石です。

新しいところはありませんが、駅馬車強盗にキャトルドライブ、通りでのホールデンとジョージ・バンクロフトとの決闘といった西部劇らしさが随所に見られ、気楽に楽しめました。

 

『ケンタッキー人』

原題:The Kentuckian(製作:1955年)

監督:バート・ランカスター、原作:フェリックス・ホルト、脚本:A・B・ガスリーJr、撮影:アーネスト・ラズロ、音楽:ロイ・ウェッブ

 

イーライ・ウェークフィールド(バート・ランカスター)は、フロームス一家との争いを逃れて息子(ドナルド・マクドナルド)とテキサスへ行く決意をする。途中の町で女給のハンナ(ダイアン・フォスター)と知りあい、彼女の借金を肩代わりしたため、テキサスへ行く資金がなくなってしまう。ヒュミリティの町でイーライは兄・ザック(ジョン・マッキンタイア)のタバコ工場で、ハンナはボーディン(ウォルター・マッソー)の酒場で旅費を作るために働きはじめる。ザックは、弟を町に落ち着かせるために女教師のソフィー(ダイアナ・リン)をイーライに紹介する。イーライはソフィーに心惹かれはじめるが……

1820年頃のケンタッキーを舞台にした開拓劇。颯爽としたアクションがなく、どちらかというと退屈な作品です。

ハンナのおかげでウォルター・マッソーのムチ攻撃から脱出できたり、弾丸込めの間にダッシュして相手を倒したりと、今イチ盛り上がらないんですよ。

この手の映画は子役に魅力があれば、それなりに楽しめるのですが、ドナルド・マクドナルドは泣きべそ顔で可愛くありません。演技も上手いとは思えないしね。

バート・ランカスターの第1回監督作品でしたが、自ら才能がないことを悟ったのか、以後監督業に手を出さなかったところがランカスターの偉いところで〜す。

 

『荒野の貴婦人』

原題:Strange Lady in Town(製作:1955年)

監督:マーヴィン・ルロイ、原作・脚本:フランク・バトラー、撮影:ハロルド・ロッスン、音楽:ディミトリー・ティオムキン

 

1879年のニューメキシコ州サンタフェ、この町にボストンから女医のジュリア(グリア・ガースン)がやって来る。弟のデイビッド(キャメロン・ミッチェル)が、騎兵隊員としてこの町の砦にいたからだ。ジュリアはデイビッドを愛しているスパース(ロイス・スミス)と親しくなるが、スパースの父オブライエン(ダナ・アンドリュース)は自分も医者をしていることから、何かとジュリアと反目する。しかし、ジュリアと接しているうちにオブライエンは彼女の態度に惹かれ、愛しはじめるようになるが……

フランキー・レインの主題歌にのってグリア・ガースンが馬車でやって来るオープニングは西部劇の雰囲気満点ですが、結局はハーレクイン的ラブロマンスでした。

当時は東部でさえ女医は偏見をもたれていたのに、この作品にはそれがありません。それと、東部から来たというのに、西部とのカルチャーギャップも出てきません。東部から来た女医というキャラクターが、ドラマに全然反映されていないんですよ。テレビドラマ『ドクター・クイン(大西部の女医物語)』のレベルの高さを、改めて実感しました。

ところで、ビリー・ザ・キッド(ニック・アダムズ)やウォレス知事といった実在の人物が登場するのは、オマケみたいなものですね。

 

『硝煙のカンサス』

原題:The Kansas(製作:1943年)

監督:ジョージ・アーチャンボー、原作:フランク・グルーバー、脚色:ハロルド・シューメイト、撮影:ラッセル・ハーラン

 

ジョン・ボニーウェル(リチャード・ディックス)はカンサスの町で銀行強盗に遭遇し、自慢の拳銃でそれを未然に防いだことから、町の実力者である銀行頭取のスティーブ(アルバート・デッカー)から保安官に推挙される。ジョンは銀行強盗と射ちあって負傷した時に看護してくれたホテルの女主人エレノア(ジェーン・ワイアット)と親しくなるが、スティーブの弟(ビクター・ジョリー)が彼女に結婚を申込んでいた。ジョンの友人がテキサスから牛を運んできた時にスティーブと一悶着あり、ジョンはスティーブが町の癌であることに気づく。自分の言うことをきかないジョンが邪魔になったスティーブは、ジョンの宿敵ハットンにジョンを殺させようとするが……

主演のリチャード・ディックスは、お齢のせいか動きが重く颯爽としたところはありませんが、派手な射ち合い、酒場での大乱闘、牛の群れのスタンピードと見せ場タップリの西部劇となっています。戦前(日本で公開されたのは戦後)の娯楽西部劇の典型的なスタイルですね。

何も考えずに、センベイでも食べながら寝転がって楽しむ作品で〜す。

 

 

 

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