西部劇ランダム


『ながれ者』

原題:The King and Four Queens(製作:1956年)

監督:ラオール・ウォルシュ、原作:マーガレット・フィット、脚色:リチャード・アラン・シモンズ、撮影:ルシアン・バラード、音楽:アレックス・ノース

 

流れ者のガンマン(クラーク・ゲイブル)が、強奪した10万ドルを隠したまま殺された4人兄弟の話を聞き、彼らの家に乗り込み、残された母と4人の妻とよろしくやりながら10万ドルのありかをさぐるが……

原題は「The King and Four Queens」で、Kingはもちろんクラーク・ゲイブル。ゲイブルはハリウッドのキングと称されていましたからねェ。

Four Queensは、エリノア・パーカー、ジーン・ウォレス、バーバラ・ニコルス、セーラ・シェーンの4人。それにジョー・ヴァン・フリートの母親が絡みます。

お色気たっぷりなのは良いのですが、これといったアクション・シーンはなし。西部劇というより艶笑喜劇ですね。結局、ゲイブルはエリノア・パーカーと結ばれてメデタシ、メデタシ。

それにしても、エリノア・パーカーって、超美人で〜す。

クラーク・ゲイブルとジョー・ヴァン・フリート

 

『無頼漢』

原題:The Desperadoes(製作:1943年)

監督:チャールズ・ビダー、原作:マックス・ブランド、脚色:ロバート・カースン、撮影:ジョージ・ミーハン、音楽:ジョン・レイポルド

 

金庫破りのシャイアン(グレン・フォード)は、仲間のニトロ(グィン・ウィリアムス)とユタの町にやってくる。郵便屋のウィリー(エドガー・ブキャナン)に仕事を頼まれたのだが、銀行の金庫は銀行家のクラントンに雇われたレスターによって破られていた。クラントンは、銀行強盗に襲われたことにして町の人の預金を盗んだのだった。従姉弟(クレア・トレバー)が経営するホテルに滞在していたシャイアンは、ニトロが火薬の爆発でケガをしたことから町に留まることになる。ウィリーの娘アイリス(イブリン・キース)に心惹かれたシャイアンは、昔馴染みの保安官スティーブ(ランドルフ・スコット)の勧めで堅気の暮しを考えるが……

ユーモア部分とシリアスな部分が上手くリンクしていないのが難点ですが、総体的には面白く仕上がっています。

ユーモアあふれる酒場の乱闘シーンや、迫力ある馬のスタンピード・シーンなんて、西部劇の面白さ満点です。だけど、ラストの銃撃戦は、ユーモアを強調するあまり、しまりのないものになってしまいましたね。グィン・ウィリアムスやエドガー・ブキャナンも個々に見ると面白い存在なんですが、ドラマの中では彼らのユーモアがフィットしていません。

主役はグレン・フォードですが、クレジットのトップはランドルフ・スコットでしたね。ちなみに、グレン・フォードは3番目。

ヒロインのイブリン・キースは、当時監督のチャールズ・ビダーと結婚していたんじゃないかなァ。

 

『絞首台の決斗』

原題:The Good Day for a Hanging(製作:1959年)

監督:ネイサン・ジュラン、原作:ジョン・リーズ、脚色:ダニエル・B・ウルマン&モーリス・ジム、撮影:ヘンリー・フリューリッヒ、音楽:ジェームス・フラスター

 

強盗団が銀行を襲い、ベン(フレッド・マクマレイ)は保安官と一味を追跡する。途中で待ち伏せされて保安官が射殺されるが、ベンが応戦して保安官を射ったエディ(ロバート・ヴォーン)を捕える。リンチを防ぐために、保安官なき後、ベンが保安官に就任する。裁判で名を上げようとする弁護士が現れ、証人の証言が覆されていく。しかし、ベンが証言したことでエディの死刑が決まる。ベンの娘ローリー(ジョーン・ブラックマン)はエディと幼馴染で、エディに恋していたので父を恨み、エディを留置場から助けだそうとするが……

保安官を射ったところを、はっきり目撃したのがベンだけというシチュエーションは面白いですね。裁判を通じて、邪推されたベンが孤立していくところを深く描いたら、名作になったでしょう。だけど、都合よくエディの仲間が助けに現れ(危険をおかしてまで助けに来る必要性がないんですよ)、射ち合いで決着する平凡な西部劇に終わっています。

フレッド・マクマレイの西部劇を何本か観ているのですが、バート・ランカスターを柔らかくしたような感じですね。でもやっぱり私にとってマクマレイは、テレビの『パパ大好き』のパパであり、『フラヴァー』のウッカリ博士であって、西部劇スターのイメージじゃないんですよねェ。

ところで、『決断の3時10分』と同じメロディーの曲がメイン・テーマとして流れるのですが、音楽がジョージ・ダニングでなく、ジェームス・フラスターになっていたけど何故?

 

『秘境』

原題:Lust for Gold(製作:1949年)

監督:S・シルバン・シモン、原作:バリー・ストーム、脚色:テッド・シャードマン&リチャード・イングリッシュ、撮影:アーチ・スタウト、音楽:ジョージ・ダニング

 

ジェイコブ・ワルツ(グレン・フォード)は、相棒(エドガー・ブキャナン)とメキシコ人が隠したアリゾナ奥地の金鉱を見つける。メキシコ人と相棒を殺し、ジェイコブは金塊の一部を町に持ち帰る。金鉱の登記をすると、場所がわかってしまうので、誰にも内緒にしていた。ピート・トーマス(ギグ・ヤング)の妻ジュリア(アイダ・ルピノ)は、金鉱の場所を探るために人妻であることを隠してジェイコブに近づくが……

原作者のバリー・ストーム(ウィリアム・プリンス)が、祖父ジェイコブの隠した金鉱を探しにアリゾナにやってくるところから物語が始まります。

金鉱探しにやってきた者は、これまでに4人も殺されており、バリーも命を狙われます。この話と、ジェイコブの話が並行して展開していきます。面白い演出方法だと思いますよ。

グレン・フォードって、偏執狂的人物を演らせたら巧いですね。アイダ・ルピノの悪女ぶりは今イチでした。

 

『欲望の谷』

原題:The Violent Men(製作:1955年)

監督:ルドルフ・マテ、原作:ドナルド・ハミルトン、脚色:ハリー・クライナー、撮影:バーネット・ガフィ&W・ハワード・グリーン、音楽:マックス・スタイナー

 

ジョン・パリッシュ(グレン・フォード)は、恋人キャロリン(メイ・ウィン)と結婚して東部へ行くために、牧場をウィルキンスン(エドワード・G・ロビンソン)に売るつもりだったが、不当に安い価格をウィルキンスンが提示したために返事を保留する。ウィルキンスンの妻マーサ(バーバラ・スタンウィック)は、谷全部の土地を自分のものにしようと考えており、ウィルキンスンの弟コール(ブライアン・キース)を使って、小牧場を武力で征服していた。コールに雇われた殺し屋マトロック(リチャード・ジャッケル)に牧童を殺されたパリッシュは、ウィルキンスンと戦う決意をして……

シネマスコープいっぱいに広がる風景は、最近の西部劇にはない空間的拡がりがあって、それだけで嬉しくなります。

大牧場主の暴虐な振る舞いに、ついに銃をとる主人公。支配欲にとりつかれた大牧場主と、さらにその上をいく悪妻。利用されているとわかっていても悪女の魅力に従う男。主人公を好きになる悩める娘(ダイアン・フォスター)と、結婚より戦いを選んだ主人公から去っていく女、愛した男を悪女に奪われた女(リタ・ミラン)と、ありふれた西部劇の構図となっています が、この約束事が西部劇の魅力なんですね。それにしても、バーバラ・スタンウィックは悪女が似合うなァ。

原作は“マット・ヘルム”シリーズのドナルド・ハミルトン。スパイ小説を書く前は、名の知れた西部小説家だったんですよ。

 

 

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