ミュージカル映画


ヘアー(1979年/監督:ミロス・フォアマン)

反体制の象徴であるヒッピーを主人公に、ベトナム反戦をテーマにしたミュージカル。

徴兵入隊のためにオクラホマの田舎からニューヨークへやってきた若者・クロード(ジョン・サベージ)は、セントラルパークでヒッピーのバーガー(トリート・ウィリアムズ)や、その仲間たちと仲良くなる。クロードが一目惚れした上流階級の女(ビバリー・ダンジェロ)を捜しだしてくれたり、ベトナム出征前にネバダのキャンプ地まで会いにきてくれるが…

1968年にブロードウェイに衝撃をあたえたミュージカルの映画化。日本でも翌年に上演され話題になりました。元タイガースの加橋かつみ(最近、井上陽水が歌っている「花の首かざり」は加橋のヒット曲だよ)が出演していたので、よく憶えています。確か、閉幕直後に加橋は大麻パーティーで逮捕されたんじゃなかったかなァ。

話を映画に戻しますと、ラストの結末を変えて、戦争が持つ不条理さを表現していましたが、現在の視点で観ると完全にテーマが陳腐化していますね。映画化した時点(上演から10年以上経過していた)でも、すでに色褪せていたんだから当然です。社会風俗を扱った映画はタイミングを失うとどうしようもなくなりますねェ。

ミュージカルの場合、音楽の良さで、まだ救われます。『ヘアー』には、「アクエリアス」をはじめとする名曲が揃っています。明るい3拍子の無いものづくしの歌「エイント・ゴット・ノー」、ヒッピーたちの髪への賛歌「ヘアー」、メロディアスな「グッド・モーニング・スター・シャイン」、フィナーレ・ナンバーの「レット・ザ・サンシャイン・イン」などは聴かせてくれますよ。

 

ティル・ザ・クラウズ・ロール・バイ(1946年/監督:リチャード・ウォーフ)

日本未公開のアーサー・フリード製作のMGMミュージカル。

ブロードウェイの作曲家で、後世に強い影響を与えたジェローム・カーン(ロバート・ウォーカー)の人生成功物語。ヴァン・ヘフリンの編曲家との友情を中心に描いているが、話に起伏がなく、ストーリーはどうしようもありません。

当時のMGM所属の歌えて踊れるスターは殆ど出演していたそうですが、ジューン・アリスンや、ヴァン・ジョンスン、アンジェラ・ランズベリーの歌と踊りは、できるというだけで上手いものじゃない。シド・チャリシーの踊りをもっと見せてくれェ〜。

それにしても、フィナーレの演出はひどかったですね。白いタキシード姿のフランク・シナトラが歌う「オール・マン・リバー」は、ないだろう。シャレになりませ〜ん。

唯一の見所は、冒頭の劇中劇『ショウ・ボート』の15分間短縮版。ブロードウェイの舞台はこんな感じなんでしょうね。ここでは、本物の「オール・マン・リバー」を聴くことができました。

 

ハロー・ドーリー(1969年/監督:ジーン・ケリー)

19世紀末のニューヨーク、結婚仲介人の未亡人ドリー・レヴィ(バーブラ・ストライサンド)は、男やもめの飼料店主ホーレス(ウォルター・マッソー)に結婚の世話をしているうち、彼に惚れて自分を売り込み始めるが……

1964年の初演以来、大ヒットを続けたブロードウェイ・ミュージカルを、ハリウッドらしくド派手に映画化。

19世紀末のニューヨークをオープンセットで再現し、パレード・シーンには延べ人員2万2千人のエキストラを、675名の撮影班が、16ユニットに分かれて撮影したそうです。内容はともかくとして、そのスケールには圧倒されます。マイケル・キッドの振付による群舞がいたるところで展開されるのですが、ダンスそのものに面白味はありません。とにかく数で圧倒するという力技の世界になっていますね。

それでも、ハーモニア・ガーデンで繰り広げられるドリーと給仕たちの「ハロー・ドーリー!」はバーブラが存在感をしめして見応えがありますよ。バンドの指揮者でルイ・アームストロングが特別出演しているのはご愛敬ですけどね。

それにしても、当時26歳のバーブラ・ストライサンドの貫禄には驚かされました。

 

スター!(1968年/監督:ロバート・ワイズ)

ガートルード・ローレンス(ジュリー・アンドリュース)は1898年にロンドンで生まれる。幼少の頃より芸事が好きで、ミス・イタリア・コンティの舞台学校へ入学する。そこで生涯の友人ノエル・カワード(ダニエル・マッセイ)と出会う。

第一次大戦が終結してまもない頃、一座の若い役者と結婚し、長女パメラが生まれるが2年で離婚。その頃、彼女の後援者としてスペンサー卿(マイケル・クレイグ)が現れ、ロンドン社交界にデビューでしてたちまちスターとなる。舞台でも人気を博し、ノエルと共にニューヨークへ乗り込む。ブロードウェイでもスターになるが、どうしてもスペンサー卿の愛を受け入れることができず、スペンサー卿はインドへ去っていく。

世界恐慌により大きな借金を抱えた彼女は死に物狂いになって働き、過労で倒れる。そんな時、新作「闇の中の女」を持って現れたのが劇場主のリチャード(リチャード・クレンナ)だった。「闇の中の女」は彼女の生涯の代表作となり、リチャードの求婚に同意する。ガートルード42歳の時だった……

ロンドンとニューヨークで華麗の活躍した舞台女優ガートルード・ローレンスの半生を描いたミュージカル。

3時間の長尺をジュリー・アンドリュース一人でもたすには無理がありましたね。ガートルードの舞台を再現していたといっても、私は彼女を知らないので長ったらしく退屈なだけでした。記録映画風にセピア色で彼女のターニング・ポイント・シーンを表現したりして、演出には工夫が見られましたけどね。

 

巨星ジーグフェルド(1936年/監督:ロバート・Z・レナード)

今や伝説の興行士となったフローレンツ・ジーグフェルドの半生を描いたミュージカル。

ジーグフェルド(ウィリアム・パウエル)は、シカゴの博覧会で怪力男のショーで大当りをとり、ヨーロッパに渡り女優のアンナ・ヘルド(ルイーゼ・ライナー)に恋をする。彼女と結婚し、アメリカに帰ってジーグフェルド・フォーリーズを結成して舞台での成功を収めるが、ジーグフェルドの女性関係に悩んだアンナは彼のもとを去る。アンナに去られて空虚な生活を送っていたジーグフェルドの前に現れたのがビリー・バーグ(マーナ・ロイ)だった……

MGMが総力をあげて壮大なセットを組み、大量の芸人を結集した大作で、1936年度のアカデミー賞で、作品賞・主演女優賞・ミュージカル監督賞を受賞しました。主演女優賞を獲ったルイーゼ・ライナーは、最初の方は巧いとは思わなかったのですが、ウィリアム・パウエルに再婚を祝う電話するシーンだけは名演技で、印象強いものになっています。

この作品に出演した本物のジーグフェルドのスターはファニー・ブライスとハリエット・フォクターの二人だけですが、ジーグフェルド・フォーリーズの豪華絢爛な舞台を再現しただけで満足です。特に、直径70フィート、175段のらせん階段がついた渦巻型の塔がそびえ立ち、その巨大な渦巻が回ると同時にデニス・モーガンが82人の歌手、ダンサーともに歌いはじめる「美女のメロディー」のシーンは、圧巻を超えて空前絶後で〜す。

 

 

 

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