ミュージカル映画


検察官閣下(1949年/監督:ヘンリー・コスタ)

バーバラ・ベイツとダニー・ケイ

インチキ薬の行商をしているゲオルギー(ダニー・ケイ)は正体がバレて、ブロドニーの町へやってくる。この町に変装した検察官がやってくるという情報を得た市長は、ゲオルギーを検察官と間違える。税金をごまかして私腹を肥やしていた町の有力者たちは、ゲオルギーを宴会攻めにするが……

ゴーゴリの戯曲『検察官』をミュージカル・コメディ化したもので、ダニー・ケイのワンマン映画。ダニー・ケイの定番芸に、“合図の銃を天に向けて射つと鳥が落ちてくる”といったような使い古されたギャグで、目新しさはありません。

全体としては巧くまとめられており、気楽に愉しめる作品となっていますね。ダニー・ケイ以外では、色気をむきだしにする市長夫人役のエルザ・ランチェスターが可笑しくて存在感があります。

それにしてもダニー・ケイの相手役のバーバラ・ベイツは今イチ魅力がなかったなァ。

 

ホワイト・クリスマス(1954年/監督:マイケル・カーティス)

ラジオと舞台の人気コンビ、ボブ・ウォレス(ビング・クロスビー)とフィル・デービス(ダニー・ケイ)は戦友同士、クラブのショーで知り合った姉妹芸人ベティ(ローズマリー・クルーニー)とジュディ(ヴェラ=エレン)の二人とスキーホテルへ出かける。そのホテルのオーナーは、戦争中、父親のようにボブとフィルが慕っていた部隊長だった。

スキー・シーズンだというのに雪のないホテルは破産寸前で、二人は自分たちの一座を呼び寄せてショーを開催し、お客を集めることを計画する。やがて、ボブとベティ、フィルとジュディの間に恋が芽生える。フィルはボブが仕事に熱中しているのを見て、ベティとの仲をとりもとうとするが、彼女はボブが自分の利益のためにショーを計画していると誤解し、去って行く。しかし、間もなく誤解はとけ、ショーは無事開催。昔の戦友たちもやって来る。外は雪が降り始め、ホワイト・クリスマスの楽しい場面が繰り広げられる。

左から、ダニー・ケイ

ヴェラ・エレン

ローズマリー・クルーニー

ビング・クロスビー

この作品は、『スイング・ホテル』『ブルー・スカイ』に続く、ビング・クロスビー、フレッド・アステアのコンビと、アーヴィング・バーリン音楽によるミュージカルの第3作目として企画されたんですね。ところが、アステアが病気になり、アステアに代ったドナルド・オコーナーも病に倒れて、結局、ダニー・ケイになったんですよ。

アステアやオコーナーと違い、ダニー・ケイのダンスは今イチですから、ヴェラ=エレンのダンスの相手はジョン・ブラシアが務めています。ダニー・ケイがヴェラ=エレンとデュオで踊るのは、“ザ・ベスト・シングズ・ハプン・ホワイル・ユアー・ダンシング”の1曲だけ。だけど、ダニー・ケイのコメディ・センスは一級ですね。身体の動きとセリフの間が何とも可笑しく、大いに笑わせてくれます。

ビング・クロスビーが歌う“ホワイト・クリスマス”は『スイング・ホテル』『ブルー・スカイ』でも使われていますが、いつ聴いてもしっとりさせられます。それと、ローズマリー・クルーニーとのデュエット“眠れぬ夜は”は、私のお気に入り。

ローズマリー・クルーニーとヴェラ=エレンが歌う“シスターズ”は楽しい歌なんですが、ヴェラ=エレンの声は吹替えなんですよ。歌っているのは、トルーディ・スティーブンスです。ヴェラ=エレンの踊りは素晴らしいんですが、歌はダメみたいですね。

それはそうと、この映画はビスタビジョンの記念すべき第1作です。ビスタビジョンというのは、スクリーン・サイズが1対1・85で、1対2・2のシネスコ・サイズと比較すると、従来の普通サイズの画面が左右にちょっと広がった程度の感じですね。ハワード・ホークス監督がインタビューで、「シネマスコープは充分にすぐれたものでないと思う。動いている巨大なものを映すときぐらいにしか効力がない。その他の場合はフレームが空っぽになってしまうし、モンタージュの効果も困難にするばかりだ。……私は、1対1・85のサイズが好きで……云々」と言っていますが、私もホークス監督の意見に同感で、シネスコ・サイズのように天地が狭くおさえつけられたものより、画面のおさまりがよいビスタ・サイズが好きです。

当初ビスタ・サイズが喜ばれたのは、当時の劇場構造がシネスコ用になってなかったからみたいですね。60年代はシネスコ全盛になりますが……

最近またビスタ・サイズが増えていますが、ワイドテレビ用にビデオ化するのに都合がいいからですかね。

 

ブルー・スカイ(1946年/監督:スチュアート・ヘイスラー)

上段:ビリー・デ・ウォルフ

左から、ジョーン・コールフィールド

フレッド・アステア、オルガ・サン・ファン

物語はジェド(フレッド・アステア)の回想で、第一次世界大戦後のブロードウェイから始まる。ジェドは舞台のスターダンサーで、ショーの相手役にメアリー(ジョーン・コールフィールド)を選ぶが、メアリーはナイトクラブの経営者で歌手であるジョニー(ビング・クロスビー)と恋に落ちて、やがて結婚する。しかし、ジョニーは店を開いたかと思ったら、すぐ転売して別の店を開くという悪い癖があって、安定を求めるメアリーとの仲にひびが入る。

はじめの予定では、この作品はアステアでなく、ポール・ドレイパーが出演するはずでした。(ポール・ドレイパーが、どのようなダンサーか私は知りません)

ところが、撮影開始直後に監督だったマーク・サンドリッチが急死して、計画が白紙に戻ります。監督がスチュアート・ヘイスラーに決まるとともに、ジョーン・コールフィールドと全く馬の合わなかったドレイパーが外され、アステアに代りました。

ビング・クロスビー

いつもながら、アステアの踊りは素晴らしいです。アステアは全部で6曲踊りますが、中でも8人のアステアがバックで踊る“プッティン・オン・ザ・リッツ”は最高。だけど下のスチール写真にあるような振付けはなかったんですよねえ。カットされたんだろうか。彼はコピーによる特撮を許さず、同じ踊りを8回踊ったそうですから、完璧主義者の彼としては気に入らなかった箇所があったのかもしれませんね。

ビリー・デ・ウォルフが女装して演じる一人芝居は、イッセー尾形のそれを見てるようで可笑しかったなあ。当時ナイトクラブの人気スターだったオルガ・サン・ファンも、愛敬のある個性で芸達者ぶりを見せてます。

ビング・クロスビーも“ブルー・スカイ”“ホワイト・クリスマス”といったアーヴィング・バーリンの名曲を16曲歌っています。

それでも、やっぱりアステアが一番。アステアですよ、アステア!!

 

 

ブリガドーン(1954年/監督:ヴィンセント・ミネリ)

スコットランドの高原に猟に行ったトミー(ジーン・ケリー)とジェフ(ヴァン・ジョンスン)は、霧で道に迷い、地図にのっていない村ブリガドーンを発見する。そこは100年に1日だけ現れる村で、トミーは村娘のフィオナ(シド・チャリシ)に恋をして……

お目当てはシド・チャリシの踊りだったのですが、エレガンスであってもダイナミックなところがなく全体的にフワフワした感じで今イチでしたね。振付がワンパターンだったからかなァ。ロングスカートでは自慢の美脚も拝めません。

意外だったのがヴァン・ジョンスンで、ジーン・ケリーと並んであざやかにタップを踏み、芸達者なところを見せてくれました。ミュージカルには縁のないスターと思っていたのですが、芸に幅があるんですね。

これといったサスペンスもなく、のんびりロマンチックな気分に浸ってみるには格好のミュージカルかも……

 

最高にしあわせ(1967年/監督:ノーマン・トーカー)

アイルランドからフィラデルフィアにやってきたジョン(トミー・スティール)は、ビドル家の執事となる。ビドル氏(フレッド・マクマレー)は、邸内にワニを飼ったり、ボクシング・ジムを作って娘のコーデリア(レスリー・アン・ウォーレン)にまで教えたりしている。伯母のメリーは、それを見かねてコーデリアを寄宿学校へ入れさせる。コーデリアはパーティーでアンジー・デューク(ジョン・デヴィッドソン)と知りあい、愛しあうようになるが……

男女の恋を、歌と踊りをおりまぜながら明るいタッチで描いたディズニーらしいミュージカル。音楽は『メリー・ポピンズ』のシャーマン兄弟です。私が聴いたことのあるナンバーは「バイヤン・パム・パム」だけでしたが、親しみやすいメロディーの曲が多かったのでスンナリ映画(ミュージカル)の世界へ入ることができました。

物語はジョンを狂言回しにして進んでいきます。ビドル氏はさまざまの奇行で知られた実在の人物で、娘のコーデリアとタバコ王デューク家の一人息子アンジーとのロマンスは、1930年代はじめにアマリカじゅうの話題になったそうです。

ビドル夫人にグリア・ガースン、デューク夫人にジェラルディン・ペイジとベテラン女優が顔を揃えています。レスリー・アン・ウォーレンはこの作品がデビュー作で、なかなか魅力的ですが出演作品が少ないので知られていませんねェ。

 

 

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