劇場公開作品


『西部悪人伝』(1970年/監督:フランク・クレーマー)

夜の闇にまぎれて強盗団が、軍隊が預けた10万ドルの金を狙って、金庫ごと銀行から盗みだす。瀕死の警備兵が酒場へころがり込み、銀行強盗に襲われたことを告げるが、一足早く強盗団追跡の行動をおこしていた男がいた。男の名はサバタ(リー・バン・クリーフ)。長射程距離銃身を装着したライフルで強盗団を射ち倒し、10万ドルを取りかえす。警備隊長は賞金5千ドルをサバタに渡し、強盗団全員を捕えることを宣言する。これを聞いて顔色が変わった男たちがいた……

劇場で観て以来、改めて今回観たのですが、当時の印象と変わっていませんでしたね。『西部悪人伝』は、私に言わせると遅すぎたマカロニです。マカロニ初期に登場していたら話題になったと思いますよ。

冒頭で大金庫を強盗団が襲うのですが、2階にある金庫を狙って、一味の身軽なやつ(強盗団はサーカスの一座)が跳び上がって警備兵を倒し、つづいて金庫室の鉄格子をロープで結び、数頭の馬で引き倒す。そしてレールをひき、馬力で金庫をひっぱり出すという手際は、ズサンなマカロニ強盗にしては珍しく手のこんだものでした。

逃げる一味を、クリーフが高性能ライフル?で射ち倒し、金を取りかえすところから後は射ち合い、また射ち合いの連続です。

銃身を変えることのできるライフル(画像:右)や、7連デリンジャー(4連デリンジャーは実在するけど)、ウィリアム・バーガーのバンジョー・ガンもマカロニならではの発想ですね。

二階堂卓也氏が言うところのマカロニらしい残虐なリンチや凄惨な殺し、陰惨なムードはありませんが、アメリカ西部劇にないナンセンスさがタップリあります。これもマカロニの特長ですよ。

マカロニ特有の粘着的体質部分を好む人にとっては、アッサリした味はもの足りなくて評価が落ちるのでしょうが、私のような射ち合い中心派は、新手が出るだけで嬉しくなりました。

公開当時のキャッチフレーズが“任侠ウエスタン”

「お客さん、嬉しゅうござんす! ここまで悪事をやらせてもらえるなら…… ズラリ並んだもの凄い面々が顔を上げた! ぶちかませ、罠をかけろ、どぎもを抜く大仕事だ!」というコピーなんですよ。(笑)

 

『西部決闘史』(1972年/監督:フランク・クレーマー)

ボブソンビルの町にサーカスの一行がやってきた。ショーの主役はサバタ。一座の女優・ダイアナが何者かに殺され、サバタは事件を究明するために、酒場の歌姫マギーに惹かれたかのように装い、町に居座る。町の支配者・マッキントックは、税金としてかき集めた金をニセ札と交換し、サーカスの車で取替えた金をカリフォルニアへ運んでいた。ダイアナは、ニセ札を調べるためにサーカスに入り込んだ捜査官だったのだ。マッキントックの悪事を暴いたザバタは、金の隠し場所を探るために、着服した金の1割をよこすようにマッキントックを脅すが……

ミステリー・タッチで新しい面を出そうとしたのでしょうが、『西部悪人伝』と比較すると、作品レベルは格段に落ちます。“決闘史”という題名が恥ずかしいくらい、決闘に魅力がないんですよ。

趣向を凝らした射ち合いは少ないし、7連デリンジャー(4連+銃杷の中に3連)は出てきますが、私のお気に入りの長銃身装着ライフルは出てきません。新兵器が、足につけたゴムで石をはじき飛ばして遠方の敵を倒す人力投石機(人間パチンコ)じゃあね。

ただ、掌で握りしめて発射するレモン・スクイーザー・パーム・ピストル(画像:左)が出てきたのは嬉しかったですね。実存する拳銃ですが、映画の中で見るのは初めてでした。

“サバタ”シリーズは『悪人伝』と『決闘史』の間に、『大西部無頼列伝』がありますが、この作品は、ユル・ブリンナーが主演で、役名もインディオ・ブラックなので、シリーズ作品と呼ぶには、私としては抵抗がありますね。

 

『大西部無頼列伝』(1971年/監督:フランク・クレーマー)

ユル・ブリンナーがイタリアに渡って撮ったマカロニウエスタン。

マキシミリアン治世下のメキシコを舞台に、謎のガンマン(ユル・ブリンナー)が革命軍のために政府軍の黄金を奪うことを引き受けるが……

主人公の名前がフィルムによって、インディオ・ブラックになったり、サバタ(私が観たテレビ放映分はサバタで、原題も“ADIOS SABATA”)になったりしますが、通常“サバタ・シリーズ”の2作目として位置付けられています。私としては、リー・バン・クリーフのサバタとはキャラクターが少し異なる(使用している銃も違う)ので、シリーズとしては認めたくないんですがね。

それと、ブリンナーの気取ったカッコウが鼻について好きになれないんです。ブリンナーは『荒野の七人』のガンマン・スタイルで西部劇スターの仲間入りをしましたが、西部劇の似合わない役者だと私は思っています。西部男特有の土の匂い(マカロニだから土の匂いは必要ないかもしれません)が、まるで感じられないんですよ。ブリンナーのガンマン・スタイルが一番ピッタリきたのが、『ウエスト・ワールド』のロボット・ガンマン。(笑)

ブリンナーはともかくとして、お話の方は射ち合いの連続で楽しめる内容になっています。ブリンナーが使うハーモニカ弾倉の珍銃を見るだけで嬉しくなりますよ。

賞金を横取りしようとする狡っからい若者役で、ディーン・リード(画像:左)が出演していますが、彼は“レッド・エルビス”と呼ばれて、旧ソビエト国民の間で絶大な人気があったロック歌手なんですよ。ちなみに、トム・ハンクスが製作を兼ねて主演が予定されている『コムレード・ロックスター』は、ディーン・リードが謎の死をとげる後半生を描く作品のようです。

 

 

 

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