『大西部への道』(1967年)
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原 題:THE WAY WEST 製 作:ハロルド・ヘクト 監 督:アンドリュー・V・マクラグレン 原 作:A・B・ガスリー・JR 脚 本:ベン・マドー 撮 影:ウィリアム・クロウシャー 音 楽:ブロニスラウ・ケイパー&マック・デビッド キャスト カーク・ダグラス(タドロック) ロバート・ミッチャム(サマーズ) リチャード・ウィドマーク(ライジ・エバンス) ローラ・オルブライト(レベッカ・エバンス) キャサリン・ジャスティス(アマンダ) ハリー・ケリー・JR(マックビー) サリー・フィールド(マーシー) |
サントラLP |
史上に名高いオレゴン・トレイル踏破を描いたアンドリュー・V・マクラグレン監督の隠れた名作です。原作は、『シェーン』のシナリオを書いたA・B・ガスリー・JR。 1943年、ミズーリ州インディペンデンスの町からオレゴンへ向けて幌馬車隊が出発する。隊長は上院議員だったタドロックで、オレゴンの地に新しい町作りを夢見ている。同じように新天地にロマンをはせている農夫のエバンスも妻子をつれて参加している。 道案内人サマーズが先導する幌馬車隊は、途中でいろいろな事件に遭遇するが、タドロックの非情ともいえる決断でやっと目的地にたどりつく。しかし、タドロックは目的地を目の前にして、恨みを持つ女に殺されてしまう。 大自然の中を行く幌馬車隊の映像は、西部劇の原点ですね。マクラグレン監督は、フォード譲りの素晴らしい映像を見せてくれます。テレビで観るのと劇場で観るのでは比べものになりませんが、それでも感動しますよ。ただ今回CSN1が放映したのは、シネスコサイズでなかったのが残念です。 私はこの映画を学生時代にリアルタイムで観ているんですが、今度の方がショックを受けましたね。学生時代は、この映画の持つリアリズムが作品全体を暗くしてマイナス作用していると思ったんですが、改めて観ると登場人物の性格が今日的で、むしろ作品に深みを与えている感じがしました。 |
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目的達成のためには、“嘘も方便”とばかりに決断するタドロックは、アメリカの政治家の一つの典型ですよ。オレゴンでの都市計画図をエバンスの妻に見せ、女性を味方につけようとするのは、アメリカかぶれのどこかの総理大臣みたい。 それにしても、執念さと非情さを持った人物を演じさせたらカーク・ダグラスは抜群ですね。ミッチャムもウィドマークも、キャラクターにピタっと合っていました。 それとインディアンの扱いにも好感が持てます。125分という時間枠にの中に、いろいろな人間関係を積め込みすぎた嫌いはありますが、見応えのある作品であることは間違いありません。 マック・デビッド作詞、ブロニスラウ・ケイパー作曲による主題歌と、「マーシー・マックビー」は聴かせてくれますよ。 |
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『血と怒りの河』(1968年)
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原題:BLUE 監督:シルビオ・ナリツァーノ、原作・脚色:ロナルド・M・コーエン、脚色:ミード・ロバーツ 撮影:スタンリー・コルテツ、音楽:マノス・ハジダキス、第2班監督:ヤキマ・カヌート キャスト:テレンス・スタンプ、ジョアンナ・ペティット、カール・マルデン、リカルド・モンタルバン メキシコの盗賊・オルテガ(リカルド・モンタルバン)に育てられたブルー(テレンス・スタンプ)は、アメリカの開拓村を襲う。仲間が医者(カール・マルデン)の娘・ジョアンヌ(ジョアンナ・ペティット)に乱暴しようとしたところを、ブルーは仲間を射ち殺してジョアンヌを救う。しかし、逃げ遅れたブルーは負傷し、今度はジョアンヌに助けられる。ジョアンヌの家で過ごすうちに、ブルーは自分がアメリカ人であることを意識しはじめ、ジョアンヌを愛し始める。開拓民としての生活になじんできた頃、オルテガが現れ…… |
ジョアンナ・ペティット |
映画は、映像・音楽・演技による総合芸術ですが、この作品はその三つが見事に調和した哀愁感あふれる西部劇です。オーソドックスな西部劇と比べるとかなり異色ですけどね。 シルビオ・ナリツァーノは、見事な構図でシネスコ画面いっぱいに素晴しい映像美(特にブルーを象徴するかのような空の青さが眼をみはります)を見せてくれます。 哀愁感に満ちたマノス・ハジダキスの音楽は、これまでの西部劇にないもので、ハートにビンビンきました。 性格俳優のテレンス・スタンプは、抑えた演技でクールな持ち味を出していたし、ブルーを愛するようになるジョアンナ・ペティットも、彼女が一番輝いていた頃の作品で、彼女の魅力があふれています。 アメリカ人でもなく、メキシコ人でもなく、国境の河を漂いながらブルーが死んでいくラストシーンは哀愁感あふれ、不覚にも涙しましたよ。西部劇というだけでなく、映画としての魅力あふれた作品となっていま〜す。 |