映画は映画館で


インターネットで映画関係のページを色々覗くと、劇場で映画を観る人よりビデオやDVDで映画を家で観ている人の方がはるかに多いことに気づきます。

私も、映画館に行くより家で映画を観ている人間なんですが、1960年代は映画館で夢中になって映画を観たものでした。最近のシネコンと違って、当時の映画館は劣悪な環境で、映画を観ていて腹立たしい気持ち(映画の出来が悪かったからではありませんよ)になったことが何度もありました。当時、“映画を楽しく観るための十戒”というのがありましたが、最近はそれが必要なくなりましたね。

 

一つ、座席は深く腰かけるなかれ

当時の映画館は、背もたれが低く、前の座席との間隔が狭かったので、面接試験のように上半身直立型で観ていた人が結構いましたね。そんな人の後ろの席に座った時は悲劇。スクリーンが見えやしない。

一つ、帽子をかぶるなかれ

最近は帽子をかぶっている人が少なくなった。

一つ、タバコを吸うなかれ

当時の映画館は紫煙モウモウ。特に場末の映画館ほどひどかった。最近は、禁煙はしっかり守られていますね。だけど最近は携帯メールをしている奴がいますね。青白い光がチカチカするのは気になるんだよなァ。

一つ、話しをするなかれ

大イビキでグーグー寝られるのも困りもので〜す。

一つ、食べるなかれ

センベイもバリバリ噛む音、スルメに臭い、昔は映画館に充満していました。

一つ、貧乏ゆすりをするなかれ

椅子の造りが悪かったので、振動がもろに伝わってきたものでした。

一つ、赤ン坊を連れるなかれ

娯楽の中心が映画だったので、赤ン坊連れの観客がいましたねェ。途中で赤ン坊が泣き出し……

一つ、途中でトイレに立つなかれ

途中で立ち上がると影がスクリーンに写りのだよ。場末の映画館だと、扉を開けた瞬間、ションベンの臭いが場内へ。 

一つ、エンドマークが出るまで席を立つなかれ

最近の映画はエンドクレジットが長くて困りものです。

一つ、映画を途中から観るなかれ

通路の足を出していたら、ハイヒールの踵で踏まれたことがあります。最近の映画館は入替制になってきました。

 

てなわけで、環境のよくなった映画館で観た映画は……

 

『ISOLA』と『リング0バースデイ』の二本立て(2000年2月)

上の息子がタダ券をもらってくる。ホラー映画は嫌いというので、私が観に行きました。

 

『ISOLA』(東宝/監督:水谷俊之)

阪神大震災の被害者の心のケアにきた主人公(木村佳乃)が多重人格の少女(黒澤優)に会う。彼女の13番目の人格は悪意に満ちたもので……

サイコホラーなんですが全然怖くありません。CGも安っぽくてTVドラマを見ている感じでした。黒澤優(黒澤明監督の孫娘)は良い味を出していたんですけどねェ。

 

『リング0 バースデイ』(東宝/監督:鶴田法男)

 貞子誕生の物語。余計な情念ばかりで、まわりくどくて仕方がありません。恐怖を濃縮するのでなく、水増ししている感じです。

第1作目の『リング』は、謎解きを中心とした良質のホラーになっていたんだけどなァ。人間関係もアメリカ映画のようにカラっとしていて、余分な情念がなかったので、恐怖だけがストレートに伝わってきました。

シリーズ化するのであれば、貞子にはジェイソンの道しかな〜い。

 

史劇の復活!『グラディエーター』(2000年8月)

 大画面で映画を観るのは、フィルムセンターで開催された“ハワード・ホークス映画祭”以来だから半年振り。カミさんと映画を観に行くのは、去年の『スターウォーズ エピソード1』以来だから、1年振りということになりますね。

それにしても映画館で映画を観なくなったなあ。それだけ観たいと思う映画が少なくなったのと、新作映画でも半年〜1年でビデオ化されるし、ケーブルテレビの映画チャンネルでも放映されるから、不自由を感じないんですね。

 それなのに、わざわざ映画館まで出かけたのは、“「ベン・ハー」、「スパルタカス」から40年、史劇の復活!”の惹句を信用したからなんです。ハリウッド全盛時の史劇は70ミリで、大画面の迫力があふれていましたからね。テレビでは、絶対に味わうことのできない映画の魅力でした。

 前評判の高い作品は、期待しているとガッカリすることが多いのですが、これは予想以上の出来映えでしたよ。ゲルマンとローマ軍の戦闘シーン、ローマ闘技場での剣闘士と戦車隊の戦いはド迫力で、満足、満足!

 主演のラッセル・クロウはマッチョマンと違う男臭さをみせて史劇の顔になっていました。カミさんは、若い時のリチャード・バートンとスティーブン・ボイドを足したような顔だと言っていましたが、そういえば二人とも史劇が似合う顔をしてましたね。

敵役のホアキン・フェニックスは、顔がちょっとイカツかったかな。もっと病的で繊細な方がいい。例えば、若い時のテレンス・スタンプのような……

このキャラクターは現代的で、昔の史劇には、なかったものですね。これが逆に新しいタイプの史劇として作品の価値を高めた気がします。

それと、リチャード・ハリスとオリバー・リードが抜群にいい。特にこれが遺作となったオリバー・リードは、燃え尽きる前のローソクの明るさか、それまでの不調が信じられないくらいの名演です。だけど、コニー・ニールセンは私の好みじゃない。今イチ気品がないんだよなァ。なつかしの顔としてデヴィッド・ヘミングスが出演していましたが、ブクブク太って見苦しいたらありゃしない。あれじゃあ、ダスティ・ローデス(プロレス・ファンしかわからないだろうな)だ。

 豪華セットと大量なエキストラを動員した、昔の史劇のような物量による迫力は今後も期待できないけど、最新鋭のSFXを活用することで、昔の史劇に負けない映像を作り出せることを証明しましたね。史劇の復活に夢を与えてくれただけでも、この作品の意義は大きいです。

 

 

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