『INTO THE WEST』に見る西部開拓史

 

BS日テレで放送された『INTO THE WEST』は、スピルバーグが製作総指揮したミニシリーズで、アメリカ西部部開拓時代の壮大な叙事詩です。考証が正しく行なわれているので、アメリカ史やインディアンに興味を持っている人には、もってこいの作品です。まずはストーリーの紹介から……

 

(第1回:2006年11月1日)

フレッチャーからスミスが西部探検の隊員を集めていることを聞いたジェイコブは、兄のネイサンと探検隊に加わるために稼業の車輪鍛冶を継ぐのを捨てて家を出る。しかし、ネイサンはポーカーに勝ってテキサスの土地を手に入れたことから、探検隊に加わるのをやめテキサスに向かう。

探検隊に加わったジェイコブはスミスから色々なことを学び、成長していく。しかし、モハベ族に襲撃された探検隊はバラバラになり、ジェイコブはスミスと別れマウンテンマンのキャンプに行く。そこでスー族の女“雷の心”と知り合う。“雷の心”は白人商人と結婚して子どもまであったが、クロウ族に襲撃されて夫は殺され、自分は奴隷として売られたのだった。子どもはクロウ族に連れ去られていた。

“雷の心”を自分の物にしようとする荒くれマウンテンマンとの決闘に勝ったジェイコブは、“雷の心”と彼女の父兄弟がいる部落へ。“雷の心”の弟“白い羽”はメディシンマンとして修行しており、精霊の啓示を得て“野牛の寵児”と呼ばれるようになり、さらなる修行のため一人旅立つ。

 

(第2回:2006年11月8日)

ジェイコブは妻子を連れて故郷に戻り、家業の車輪鍛冶を手伝うが、カリフォルニア移住を決意する。弟のジェスロと従姉妹のリナ、レイチェル、ナオミが同行することになり、ホクシーが率いる幌馬車隊に加わる。

しかし、旅の途中でリナとレイチェルは死亡し、ナオミは襲撃してきたクロウ族にさらわれる。クロウ族の酋長“草原の火”は、妻を亡くしており、ナオミを妻にする。

ジェイコブはクロウ族との戦いで重傷を負い、ジェスロに妻子を託す。ジェイコブは通り合わせた妻の弟“走る狐”に助けられ、命をとりとめる。“走る狐”は白人との取引を行なうために兄の“犬の星”と分かれ、別行動をしていたのだ。

傷の治ったジェイコブは妻子を捜すが見つからず、メキシコ戦争に巻き込まれてフレモント大尉の軍に参加する。そして、休憩で立寄った農家で、妻と弟が夫婦となって新しい生活をしているのを目撃し、ひとり立ち去る。

 

(第3回:2006年11月15日)

カリフォルニアのゴールド・ラッシュでジェスロは金の採掘に夢中になる。父ジェイコブを捜すために家を出たマーガレットは、写真家のイーサンに助けられ、二人は愛し合うようになり結婚する。エイブもジェスロと諍いして家を出て、ポニー・エクスプレスのライダーとなる。ジェスロは大きな金鉱石を見つけるが、取り分を巡って争いとなり命を落とす。その頃、マーガレットはジェイコブを捜し出す。ジェイコブは妻“雷の心”のところに戻り、平和な生活を取り戻す。

カンサス州ローレンスに住むジェイコブの従兄弟サムソンは、奴隷解放支持者でカントレル・ゲリラのローレンス町の襲撃で殺される。

“走る狐”と“犬の星”は、部族の平和のためにフォート・ララミー条約に調印するが、白人のインディアン攻撃は始まったばかりだった。

 

(第4回:2006年11月22日)

マーガレットと夫のイーサンが乗った駅馬車がローマン・ノーズの率いるシャイアン族に襲われ、サンド・クリークのブラック・ケトル酋長のキャンプに連れていかれる。平和主義者のブラック・ケトルに共鳴して二人はキャンプに滞在していたが、シビントン大佐のコロラド第3義勇連隊に襲撃され、一方的に虐殺される。イーサンも殺され、マーガレットはブラック・ケトルと行動を共にする。

白人の侵略に対してスー族は、ローマン・ノーズに協力し、レッド・クラウド酋長が中心となって戦いを開始する。インディアンの反抗に手をやいた政府は和平条約を結ぶが、軍はシャイアン族殲滅に固執し、カスター率いる第7騎兵隊がワシタ川上流にシャイアンのキャンプを襲い、ブラック・ケトルを殺す。マーガレットは白人の仕打ちに対し、インディアンとして生きることを決意する。

ローレンスの町で一家を皆殺しにされたサムソンの娘クララは、親戚のダニエル(ジェイコブの又従兄弟)の家に身を寄せる。ダニエルは、セントジョセフから西に向かうユニオン・パシフィック鉄道の鉄道建設に便乗して工事現場で酒場を開いていた。クララは、ダニエルの行く先々の場所で洋裁の仕事をするうちに、ダニエルの息子ロバートと愛し合うようになる。

エイブはカリフォルニアから東に向かうセントラル・パシフィック鉄道会社の鉄道工事で中国人と一緒に働いていた。ユタ州で二つの鉄道が結ばれ大陸横断鉄道が完成した時、クララとロバート、そしてエイブは新しい旅に出発する。

“野牛の寵児”は大陸横断鉄道を見て、恐れていた予言通りになったことを痛感する。

 

(第5回:2006年11月29日)

クララとロバートは夫婦になり、ロバートは雑貨屋を始め、クララは町の子供たちに勉強を教えていた。一方、マーガレットは保留地でインディアンの女・子供を守って生活していた。

政府が保証しているインディアンの土地ブラック・ヒルで金鉱が発見され、白人入植者が押し寄せたことでシッティング・ブルをリーダーとするインディアンの戦士は保留地を離れ、白人と対決する。カスター率いる第7騎兵隊はリトルビッグホーンに突入するがインディアンの攻撃に全滅する。第7騎兵隊の偵察員をしていたジェイコブJrは、カスターに批判的であったが、両親への手紙を友人に託してカスターと同行し戦死する。手紙は郵便業も兼ねていたロバートの手に渡り、ジェイコブに届けられる。

第7騎兵隊の惨敗は、政府のインディアン対策を激しいものにし、保留地は困難にあえぐ。そんな時、インディアンを白人社会に同化させるためにプラットが保留地を訪れる。彼は子供たちの教育の必要性を説き、設立したばかりのカーライル全寮制学校に子供たちを入学させるようにレッド・クラウドや“犬の星”たちに要請する。その学校にはロバートとクララも教師として参加していた。しかし、白人のやり方を“走る狐”の息子“伝える声”たちインディアンの子供へ強引に押し付ける指導方法に疑問を持ち学校を去る。

 

(第6回:2006年12月6日)

マーガレットは、パインリッジにあるスー族居留地で、親のいない子供たちの母親代わりをして暮らしていた。ロバートとクララも同じ居留地で、ロバートは物資の配達を、クララはスー族の子供たちの教師として働いていた。年老いたジェイコブ夫婦がロバートたちと暮らすために居留地にやってきてマーガレットと巡り逢う。

“伝える声”も東部から居留地内のウーンデッド・ニーに住む兄“赤い槍”のところへ戻ってくる。その頃、伝統的生活への回帰と死者や野牛の再生を、踊りを通して達成しようとするゴースト・ダンスがスー族の間に広まっていた。

シッティング・ブルのキャンプへ、ゴースト・ダンスの中心的存在であった祈祷師キッキング・ベアを捕えにいった警官隊とインディアンの間でトラブルが起こる。発砲騒ぎで両者に死傷者が出、ブルも射殺される。居留地に駐在していた新聞記者はインディアンの一斉蜂起と騒ぎたて、気の小さい居留地の監督責任者は軍隊を招請する。

やってきた第7騎兵隊は、ウーンデッド・ニーのインディアンたちに武器を全て引き渡すように命じる。聾唖のインディアンが理解できずに拒んだため、第7騎兵隊は無差別に射撃を開始する。約350人中250人のインディアンが死傷するが半数以上は女と子供だった。“赤い槍”は死に、暴挙を止めようとした“伝える声”とロバートは負傷する。惨劇の現場でマーガレットと“野牛の寵児”が出会い、死んでいったインディアンを思い瞑目する……

 

西部開拓とともに歩む一族の物語と思って観ていたのですが、終わってみればインディアン迫害史の印象を持ちました。力での統治を絶対視する白人のインディアンに対する無理解というメッセージだけでなく、アメリカが行なってきた政治体制に対するスピルバーグの批判がこめられているような気がしますね。

 

関連年表

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1869年

1876年

1879年

1890年

ジェッド・スミス、大陸横断に成功

アメリカ最初のカリフォルニア開拓団移住

メキシコ戦争終結、カリフォルニアのアメリカ移管

カリフォルニアでゴールド・ラッシュ

スー族とフォート・ララミー条約締結

ポニー・エクスプレス開通

ポニー・エクスプレス廃止

カントレル・ゲリラ、カンサス州ローレンスを襲撃

サンド・クリークの虐殺

ワシタ川の虐殺

大陸横断鉄道完成

リトルビッグホーンの戦い

カーライル全寮制学校設立

ゴースト・ダンス運動とウーンデッド・ニーの虐殺

 

 

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