『牡丹燈籠』(1968年・大映/監督:山本薩夫)
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燈籠流しの夜、新三郎(本郷功次郎)は、吉原の遊女・お露(赤座美代子)と下女のお米(大塚道子)と知り合う。お露の境遇を聞いた新三郎は、自分も意にそまぬ縁談を強いられていることからお露に惹かれる。お米の頼みで盆の間だけ逢瀬を楽しむことになったが、新三郎と同じ長屋に住む伴蔵(西村晃)がお露とお米を目撃して首をかしげる。知人から二人は自殺したと聞いていたからだ。伴蔵から話を聞いた易者の白翁堂(志村喬)は、新三郎の顔に死相が出ているのに驚き、新三郎をお堂に閉じ込め護魔符で封印するが…… “四谷怪談”のお岩さんや“累ヶ淵”の豊志賀と比べると、お露さんは“皿屋敷”のお菊さんと並んで美形なので怖くありません。山本薩夫は“おどろおどろしさ”を排除して、エロティシズムに溢れた幽玄的な世界を描いていますね。カランコロンと響くゲタの音で幽霊表現するのでなく、空中を滑るように並行移動する映像で幽霊表現しているところは見事です。 『牡丹燈籠』は18本映画化されていますが、私が観ているのは3本だけ。だけど、この作品は怪談映画としては上出来だと思います。怨でなく、愛する男への女の情念が全面にうちだされ、これまでにない怪談映画でした。 |
『白夜の妖女』(1957年・日活/監督:滝沢英輔)
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女人禁制の仏教の聖地・高野山が明治5年にこの禁がとかれることになる。全山の僧侶たちは反対するが、聖として仰がれている宗朝老師(滝沢修)は、「私にはその資格がない」と言って、若き日の懺悔を語りはじめる。修行中の宗朝(葉山良二)は飛騨の山道で、道に迷い、一軒の家にたどり着く。その家には美女(月丘夢路)と障害を持つ夫が暮らしており…… 原作は泉鏡花の『高野聖』で、日本の幻想小説を代表するものです。SFファンであれば必読書なのですが、一時期、流行病的にSFが好きになっただけの私としては、恥ずかしながら読んでいません。 でもって、映画の方ですが、宗朝を誘惑する美女役の月丘夢路がイイんだなァ。妖艶な中に気品があって、魅力的なことでは彼女の代表作と云えると思いますよ。 当初は岩風呂から霧の中に消えていくヌードシーン(後ろ姿だけですが)もあったとか。「月丘夢路を裸にしてまでゼニをもうけたくない!」という日活重役の一声で、そのシーンはカットされたそうで〜す。 |
『怪談鬼火の沼』(1963年・大映/監督:加戸敏)
篠原甚左衛門(浜村純)に不正を追求されたお数寄屋坊主の宗伯(沢村宗十郎)だったが、甥の敬助(小林勝彦)が甚左衛門と若党を殺し、危ういところを助かる。それから1年、宗伯は金をせびる敬助を疎ましく思い、敬助は宗伯の財産を自分のものにしようと考えていた。遊び仲間の三郎太(若山富三郎)の入れ知恵で、妾のお蓮(近藤恵美子)と宗伯を事故死に見せかけて温室で殺そうとしたが、死んだのは侍女の八重(高野通子)だった。その夜、八重の兄と名乗る清蔵(丹羽又三郎)が妹の安否を訪ねてやってくる。三郎太が清蔵を斬って井戸に投げ込むが…… 井戸を調べると清蔵の死体がなく、おまけに彼が旅回りの役者とあっては物語の予測はつくのですが、悪党顔のワカトミが意外や意外というのがミソですね。 全然怖くない怪談映画でした。 |
小林勝彦と近藤恵美子 |
『四谷怪談・お岩の亡霊』(1969年・大映/監督:森一生)
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民谷伊右衛門(佐藤慶)とお岩(稲野和子)の初夜の寝床に、天井から蛇が落ちてくるけれん味タップリのオープニングからタイトルへ続く出だしは好調です。藩の領地が減俸となり、浪人となった伊右衛門とお岩は江戸へ。仕官の手づるのためにゴロツキを雇って両替商・伊勢屋の娘・お梅を襲わせ、それを救うという狂言をお岩の父(浜村純)に知られた伊右衛門は義父を殺します。お梅に惚れられ、ジャマになったお岩に毒を盛り、按摩の宅悦(沢村宗之助)を脅してお岩を口説かせますが失敗。宅悦は伊右衛門の悪計をお岩にバラスんですな。毒のために顔は醜く腫上り、絶望と恨みでお岩は自害します。伊右衛門は下僕の小平を殺し、不義密通者ということでお岩と小平を戸板に打ち付けて川に流します。お梅との祝言の日にお岩の亡霊が現れ、伊右衛門は亡霊と間違えてお梅をはじめ伊勢屋一家を皆殺し。川でウナギを漁っていた伊右衛門の悪仲間の直助(小林昭二)はお岩の櫛を拾い、それとは知らずに横恋慕していたお岩の妹・お袖(御影京子)にプレゼントします。お袖に事情を問い詰められた直助は伊右衛門の所業を話し、お袖を襲いますが駆けつけたお袖の恋人・与茂七(青山良彦)に斬られます。お袖と与茂七は仇を討つために伊右衛門の隠れ家へ…… 森一生の演出は四谷怪談の主要ポイントをけれん味タップリに描いて怪談映画の本筋を行っています。脚本も要領よくまとめてあり、物語展開に緩んだところがなかったのも良かったです。 だけど、何といっても佐藤慶が憎々しい民谷伊右衛門を好演。亡霊なんざ怖くない、首が飛んでも動いてみせる、と徹底した悪役ぶり見せています。稲野和子もメークはきつめで、怖〜いお岩さんになっていました。やっぱり、お岩さんは怖くなくちゃーね。 |