怪談映画


『怪猫お玉が池』(1960年・新東宝/監督:石川義寛)

山道に迷った忠彦(伊達正三郎)と啓子(北沢典子)は、黒猫を追って廃屋に辿り着く。疲れて眠った啓子は化け猫の悪夢を見て熱を出す。啓子をおぶって寺に着いた忠彦は、住職から啓子がお玉が池の黒猫の怨霊に取り憑かれていることを知らされる。

話は百年前にさかのぼり、代官(芝田新)の圧政に苦しむ領民のために名主の南条新兵衛は、直訴も辞さない覚悟で代官に抗議するが、お玉が池の畔で、代官の弟・五郎太(新宮寺寛)と医者の玄斎(沼田曜一)によって殺される。玄斎の娘・小笹(北沢典子)と新兵衛の息子・八千丸(伊達正三郎)は恋仲だったが、私利私欲のために玄斎は五郎太に小笹を嫁がせようと考えていたのだ。

新兵衛が殺された夜、新兵衛の屋敷は代官によって焼き払われ、新兵衛の母(五月藤江)は殺され、娘の秋乃(松浦浪路)は代官屋敷に連れ去られる。代官の手篭めから逃げようとした秋乃は簪で自分の首をつき、自害する。一家の異変を知った八千丸は焼け跡で代官の印籠を発見し代官所に乗り込むが、代官・五郎太・玄斎によって殺される。全ての惨事を見ていた新兵衛の飼い猫・玉が八千丸の血をすすり、小笹に乗り移り……

新東宝らしい泥絵の具を塗りたくったような怪談映画です。化け猫は毛むくじゃらで顔がわからず今イチなのですが、五月藤江の怪老婆はピッタリですね。

まさか、『花嫁吸血魔』で池内淳子に毛むくじゃらの扮装をさせたように、北沢典子に化け猫の扮装させたんじゃないでしょうね。北沢典子は新東宝にあって、最後まで清純派女優でしたねェ。

 

『怪談累が淵』(1970年・ダイニチ映配/監督:安田公義)

深見新左衛門(伊達三郎)は、借金の取立てにきた按摩の宗悦(石山健二郎)を不義密通の罠にかけ、妻もろとも殺してしまう。二人の死体を遊び人の甚蔵と仙太に命じて累が淵に捨てさせるが、宗悦と妻の怨霊が現れて狂い死にする。宗悦の娘・お志賀(北島マヤ)は父とは不仲で家を出ていたが、宗悦の隠し金を見つけ料理屋“春駒”を乗っ取る。そんなお志賀を脅しにきたのが、勘当されて遊び人になっていた新左衛門の息子・新五郎(石山律)だった。二人は互いに惹かれあい、一緒に暮らし始めるが、お志賀に怨みに持つ“春 駒”の女将がお志賀の顔に熱湯をかけたことから……

ダイニチ映配というのは、1970年に大映と日活が共同で設立した会社でして、大映作品として製作されましたが、日活系の映画館でも上映されています。

映画会社が傾き始めると、安手のエログロ作品が増えますね。これもその一つですが、金と愛欲という人間の欲望を、醜悪なくらいにドロドロ描いており、C級ながらも見応えのあるものになっていま〜す。

 

『怪猫岡崎騒動』(1954年・大映/監督:加戸敏)

岡崎城主・水野伊勢守(沢村国太郎)の妾腹の弟・刑部(杉山昌三九)は、伊勢守の側室・萩の方(入江たか子)に横恋慕し、奥女中の八重(霧立のぼる)を使って伊勢守を毒殺する。しかし、萩の方は伊勢守の子を身ごもっており、城主の地位を手に入れたものの刑部は生まれてきた伊勢守の子・雪太郎にいずれは家督を譲らねばならなかった。雪太郎の宮参りの日、刑部は配下に雪太郎を襲わせるが、家老の縫殿之助(坂東好太郎)が雪太郎を救出する。縫殿之助は刑部から守るために雪太郎を死んだものとして、自分の子として育てる。刑部は八重をお部屋様にしたものの、萩の方への邪恋絶ちがたく何かにつけて言い寄り、天守閣に閉じ込める。萩の方に嫉妬した八重は萩の方を殺し、刑部は萩の方の愛猫ともども天守閣の壁に塗りこめるが……

入江たか子十八番の化け猫映画ですが、怪談としての怖さより怪猫アクションの面白さがあります。入江たか子の化け猫が、我が子を守って侍たちと繰り広げるチャンバラ・シーンは歯切れがよく、爽快感がありますよ。

「見たなァ!」から始まる、霧立のぼる相手の“猫じゃらし”の様式美も入江たか子ならではです。化け猫は、やっぱり入江たか子だァ。

 

『秘録怪猫伝』(1969年・大映/監督:田中徳三)

鍋島丹後守(上野山功一)は竜造寺又七郎(戸田皓久)の妹・小夜(亀井光代)を側室に迎えようとするが、又七郎はそれを断る。又七郎が丹後守に重用されるのを恐れた家老の矢淵刑部(戸浦六宏)は、丹後守に又七郎謀反を吹き込む。疑心暗鬼となった丹後守は、又七郎との囲碁の席で些細なことから又七郎を斬ってしまう。刑部は又七郎の死体を井戸に投げ込み、勝手に出奔した罪で竜造寺家を取り潰す。夢枕で又七郎が殺されたことを知った小夜は、愛猫に復讐を託して自害する。小夜の血をすすり、魔性となった猫は、刑部の妹で丹後守の側室・お豊の方(小林直美)の中老・沢の井(毛利郁子)に乗り移る。城中で起こる不気味な出来事に、小森半左衛門(本郷功次郎)が捜査を開始するが……

鍋島の化け猫騒動をホラー・アクション的に描いた作品です。

化け猫の乗り移った中老が行灯の油を舐める「見たなァ!」のシーンはあっても、“猫じゃらし”はありません。側室に噛み付き、今度は中老から側室に乗り移るんですね。

側室を幽閉し、周りを何百本の蝋燭で囲み、山伏たちが悪魔払いをするシーンは、オカルト洋画の影響があるかもしれません。

この作品以後、化け猫映画を見かけないのですが、復活して欲しいですねェ。

 

『鍋島怪猫伝』(1949年・新東宝/監督:渡辺邦男)

鍋島城下に怪猫事件が発生して噂で持ちきりの頃、家老の田沼勘太夫(江川宇礼雄)は因縁のある碁盤を主君・丹波守(中村彰)に献上する。丹波守は囲碁の相手に竜造寺又七郎(田中春男)を招くが、その碁盤は嘗て又七郎の父とその友人が碁の上で争って流血事件を起こし、竜造寺家没落の原因となった不吉なものだった。丹波守のすすめで差し始めるが、丹波守が待ったをしたことから言い争いになり、又七郎は丹波守に小柄で刺される。碁盤の上では、又七郎の愛猫が丹波守を睨んでいた。恐怖に襲われた丹波守は後の処理を勘太夫に任せる。勘太夫は又七郎の止めをさし、事件を闇に葬る。又七郎の恋人・お豊(木暮実千代)は、又七郎の消息を探るために丹波守の側に仕えるが、丹波守はお豊に化け猫の影を見て遠ざける。勘太夫も又七郎の亡霊に取り憑かれ、言動がおかしくなっていく。ただならぬ城中の気配に小森半左衛門(大河内伝次郎)が真相究明に乗り出すが……

化け猫騒動に絡んだ御家騒動の物語です。巨大な猫の顔が二重撮影で映し出されるだけで、化け猫なんか出てきません。木暮実千代の「見たなァ!」を観たかったのですが、既に過去の女優だった入江たか子と違い、人気スターの木暮実千代には猫化けはさせられなかったのでしょう。

額を割られた田中春男の亡霊姿がドキっとするくらいで、怪談映画としては物足りませ〜ん。

 

 

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