怪談映画


『怪談鏡ケ淵』(1959年・新東宝/監督:毛利正樹)

安次郎(伊達正三郎)とお菊(北沢典子)は、呉服屋の夫婦養子に入るが、それをよく思わない番頭が愛人と共謀して呉服屋を乗っ取ることを企む。呉服屋の主人の女房を殺して、番頭の愛人が後妻に入り、安次郎とお菊を追い出す。安次郎に理解のある島野屋を殺し、鏡ケ淵に沈めようとするが……

番頭が殺すのは、売りつけた花嫁衣裳が粗悪品だったために破談となり、恨みを言って迫ってきたお菊の友人・お里とその母親、呉服屋の女房、島野屋の4人。

恨みの対象が弱いので、怖さはありません。ストーリー展開にもムリがあるし、駄作。

原作は三遊亭円朝の怪談噺なんだけど、原作も同じ物語展開なのだろうか……

 

『怪談本所七不思議』(1957年・新東宝/監督:加戸野五郎)

旗本・小宮山左膳が甥の権九郎(天知茂)に殺される。息子の弓之助(明智十三郎)の仇討を、左膳に助けられた狸が手伝うが……

叔父を殺し、叔父の後妻を誘惑して深い仲となる天知茂は、色悪がよく似合います。とにかく、独特のムードを持っているんですね。

内容は狸の恩返しで、狸が一ツ目小僧や三ツ目入道といった妖怪に化けて出てくるのは、子供ダマシで失笑、失笑、また失笑。

子供向けにしてもチーピーすぎま〜す。

 

『怪談一つ目地蔵』(1959年・東映/監督:深田金之助)

重五郎と伝蔵は、千両箱を盗んで役人に追われ、旗本・間柄家に逃げ込むが、伝蔵は京之介少年に斬られ、重五郎は伝蔵を見捨てて逃げる。途中、一つ目地蔵のそばで伝蔵が捨てた娘のお浪を殺そうとするが、一つ目地蔵の目が光り、アイクチを落としてお浪の頬を傷つける。お浪の泣き声に旅の一座が気づき、重五郎は逃げ出し、お浪は一座に拾われる。20年後、間柄京之介(若山富三郎)は、お浪(千原しのぶ)のヒモになっていたが、金の切れ目が縁の切れ目、重五郎の娘・お絹(花園ひろみ)をならず者から救ったことから、お絹と深い仲になり、お浪を捨てる。京之介の仲間の遊び人・伊助(田中春男)がお浪を殺し、一つ目地蔵のそばの沼に沈めるが……

親の因果が子に報いという情念の怪談映画。若山富三郎の色悪は、ギラギラしすぎて魅力に欠けます。惚れた千原しのぶがアホに見えるんだよなァ。ただ、当時の東映には怪談映画の似合う役者がいなかったので、ゲテモノ新東宝から移ってきたばかり若山富三郎は恰好の役者だったんでしょうね。

千原しのぶの幽霊は怖くないけど、なかなか情感があって良かったですよ。なんやかや云っても、B級作品として及第点をつけることができま〜す。

 

『白蛇小町』(1958年・大映/監督:弘津三男)

安藤家の嫡男・新之助の婚礼の日、花嫁が駕篭から姿を消し、一匹の白蛇が駕篭から這い出てきた。驚いた当主の左門は、自分の過去の因縁話を新之助に話す。それによると、「左門が若い頃、お巳年という侍女と恋仲になったが、よい縁談がきたため親がお巳年を不義者に仕立てて暇を出した。発狂したお巳年は花嫁衣裳を着て家に火をはなち、顔の半面に大火傷を負って死んだ。左門の婚礼の日、花嫁姿のお巳年の亡霊が現れ左門を土蔵に招くと、そこには首をくくってブラ下がっている花嫁がいた。そして白蛇が落下し、どこへともなく消えていった」というのだ。以後、左門は妻を娶っても婚礼することをやめたのだった。新之助は父から勘当されている弟の源次郎(梅若正二)を訪ね、そのことを話すと、源次郎は背後に事件の臭いを感じ……

“蛇”シリーズの第1作目。オープニングは怪奇性があって少しはイケルかと思ったのですが、亡霊=犯罪者のトリックというのが簡単にわかって、後はイケマセン。見どころは蛇女優の毛利郁子かな。グラマラスな肢体に蛇を這わせ、“蛇”シリーズの支柱となる存在感を見せつけています。

 

『執念の蛇』(1958年・大映/監督:三隅研次)

踊りの師匠・歌次(毛利郁子)は、伊勢屋の手代・清二郎を誘惑して関係を持ったが、清二郎は伊勢屋の娘・お千代と相思相愛だった。清二郎が伊勢屋の跡取りになるのをよく思わない番頭の彦六は、伊勢屋の主人が歌次を見て昔関係のあった女に瓜二つだと言ったことから、歌次を伊勢屋の娘に仕立て上げるようと考える。そこで邪魔なお千代を、歌次が竜神堀に誘い出し……

“蛇”シリーズ第2弾。三隅研次の演出はメリハリがあって、恐怖シーンのショック度合いが高いものとなっています。だけど、主演の毛利郁子は悪女ぶりを発揮したものの、襲いかかる蛇に乳房や太腿を露わにしてもがき苦しむシーンが呆気なくて不満です。当時としては映像の限界なのかもしれませんね。

 

『青蛇風呂』(1959年・大映/監督:弘津三男)

老舗の料亭を営む清吉(伊沢一郎)の弟・佐助の婚約の日、佐助は盗みの疑いで奉行所に捕まる。番頭が佐吉の部屋から、その盗品を見つけ、清吉に知らせる。清吉の女房・おえん(毛利郁子)は、事件を隠蔽するために清吉をそそのかして番頭を毒殺する。その日から、料亭には番頭の幽霊や清吉が怖がっている蛇が出現するようになる。佐助の無実を信じている許婚者の依頼で与力(島田竜三)が捜査すると……

毛利郁子の“蛇映画”三部作の最後の作品。風呂場で大量の蛇が身体にまとわりつくという毛利郁子の見せ場はあっても、それだけではね。幽霊騒ぎで主人を狂い死にさせ、店を乗っ取るという毎度同じパターンで新鮮味がありません。

毛利郁子は、別府でミス温泉に選ばれて大映に入社し、『透明人間と生え男』でグラマラスの姿態を見せて肉体派女優として売出しました。蛇が好きというので、“蛇映画”が作られたのですが、犬など違って蛇が芝居するわけがなく、気色悪さだけでは表現に限界がありましたねェ。

 

 

トップへ    目次へ   次ページへ