騎兵隊西部劇


『ブラボー砦の脱出』(1953年/監督:ジョン・スタージェス)

南北戦争下の1863年、ブラボー砦には少数の守備隊と南軍捕虜がいた。ロウパー大尉(ウイリアム・ホールデン)はインディアンに襲撃されている駅馬車を救い、乗客のカーラ(エレノア・パーカー)に心が惹かれた。カーラは、ビーチャー大尉と結婚する砦司令官の娘アリス(ポリー・バーゲン)に会いに砦へやってきたのだが、目的は捕虜となっている許婚者のマーシュ(ジョン・フォーサイス)救出だった。結婚式の夜、カーラはマーシュ、キャンベル(ウィリアム・デマレスト)、ヤング(ウィリアム・キャンベル)、ベイリー(ジョン・ラプトン)と砦を脱出する。翌朝、ロウパー大尉が彼らを追跡するが、インディアンが不穏な動きを……

ジョン・スタージェスの初期の作品で、日本で公開された彼の最初の西部劇です。

ロケの素晴らしさ(褐色の岩山と青い空の色調が素晴らしい)と、セットの稚拙さにギャップを感じるという欠点はありますが、全体としては西部劇の醍醐味を味あわせてくれました。

 私が西部劇を観て、満足するかどうかの一つにインディアンの描き方があるのですが、この作品は申し分ありませんでした。ロングの鳥瞰撮影でインディアンが列をなして現われるところなんか、ゾクゾクしましたね。そして、荒野の真中で主人公たちを襲撃する。凹地に身をひそめた主人公たちに、インディアンたちが周辺に槍を立て、それを目印に空に向けて矢を放つんですよ。そして矢の落ちた位置をチェックして軌道修正し、主人公たちに矢の雨を降らせます。まさに恐るべき知恵ある野蛮人です。インディアンはこうでなくちゃあ……

主演は、ウィリアム・ホールデン。ホールデンが全盛期の時の作品で、実に溌剌としています。相手役はエリノア・パーカーで、50年代を代表する美人女優です。インディアンに襲われた駅馬車に乗っていたエリノア・パーカーが持っていた拳銃が、滅多に映画ではお目にかかったことのない4連デリンジャーだったのは嬉しかったですね。拳銃に興味のない人には関係ないことですが……

 

『午後の喇叭』(1952年/監督:ロイ・ローランド)

シャフター(レイ・ミランド)は、女性をめぐってガーランド(ヒュー・マーロウ)に傷を負わせたことから、軍隊を追放になる。西部を流れ歩き、騎兵隊員を募集していた第七騎兵隊に入隊するが、そこで仇敵ガーランドと再会する。 二人は、またしても女性をめぐって対立し、シャフターの上官となったガーランドは、次々にシャフターへ危険な任務を命じるが……

恐ろしくつまらない内容ですが、騎兵隊とインディアンが激突するシーンは、空間的な広がりがあり、満足です。

レイ・ミランドって、後年のB級ホラー役者のイメージが強いので、西部劇には違和感があります。当時は二枚目スターだったのでしょうが、西部劇役者じゃないですね。

ヒロインのヘレナ・カーターは、美人だけど惹きつけるものがありません。他に、めぼしい作品がないのも肯けますね。

それから、リトルビッグホーンの戦いがクライマックスなのですが、主人公はリノ少佐の部隊だったので、死なずにすむので〜す。

ヘレン・カーターとレイ・ミランド

 

『無法のライフル』(1966年/監督:ウィリアム・ウィットニー)

1869年のアリゾナ、アパッチの酋長コチーズ(マイケル・キープ)が蜂起し、その襲撃に備えてコバーン大尉(オーディ・マーフィ)は開拓民をウェルズ砦へ移送していた。その中には婚約者エレン(ラレイン・スティーブンス)の家族もいたが、彼女の父親が砦に着く寸前にアパッチに襲撃されて命を落とす。砦の騎兵隊には銃が不足しており、新式銃の受取りにコバーン大尉が出向くことになる。志願したのは、入隊したばかりのエレンの弟マイク(マイケル・ブロジェット)とダグ(マイケル・バーンズ)、それにコバーンを目の敵にしているボーディン伍長(ケネス・トビー)だった。銃を受取った帰路、コバーン隊はアパッチに襲撃され……

任務に厳しく、奪われた銃を一人で取り返しにいく主人公。経験もないくせに憎しみだけで猪突猛進する若者。臆病ゆえに兄を見殺しにしたが、主人公のピンチを見て勇気を取戻す弟。銃を奪ってアパッチに売りつけようとする悪党。この手の映画の定食メニューですね。味の方は喰えるだけマシといった料理でしょうか。

キャロル・ベーカー似のラレイン・スティーブンスは、添物程度で存在感ありません。結論は凡作。

 

『ハンプス』(1976年/監督:ジョー・キャンプ)

時は1850年代、米陸軍上層部が西部の砂漠にラクダを導入することを思いつき、失敗してもいいように無能な若い中尉(ジェームズ・ハンプトン)が辺境の砦に派遣されます。砦では、てっきりアラブ馬が来ると思っていたのに、来たのはラクダ。ブチャむくれした騎兵隊員たちを、なだめすかして訓練にはげむのが、前半の愉しいシーン。ラクダから落ちた隊員が、そのまま横になって、「ラクラクだ」なんて駄洒落を言ったりしてね。

ようやく、ラクダと親密になった時に、軍上層部がもうヤーメタと言ってくるんです。ラクダを嘲笑した部隊と、砂漠横断500キロのレースをしてラクダの優秀性を見せるのが、後半のヤマ場。ジャック・イーラムをボスとするズッコケ無法集団がしつこく絡んできて、もう私の口もとは緩みっぱなし。

監督が『ベンジー』のジョー・キャンプなので、ベンジー君もカメオ出演しています。

ところで、ラクダ部隊ですが史実に残っているんですね。1856年に「荒地で開拓民の安全を守るには、軍隊の自由な活動が第一である。それには砂漠に行っても頑健で従順、長躯に耐えるラクダを輸入すべきである」と、合衆国上院にラクダ輸入案が提出され、アラビアから3千ドルで75頭のラクダが輸入されました。1ヶ月かけてニューメキシコに送られ、早速編成された騎兵中隊は、訓練の後、翌年の2月にアパッチの大群を相手に大戦果をあげたと記録されています。しかし、識者によると、アパッチは見たこともないラクダの姿に驚いて、戦意を失って逃げただけとのこと。

実際、ラクダ部隊はすぐに解散しています。ラクダの臭気と騎乗戦闘の困難が理由だそうです。用なしとなったラクダは、見世物用として一頭当り3ドルで興行主に払い下げられました。

 

 

 

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