騎兵隊西部劇


騎兵隊のもとは独立戦争の時にイギリスに倣って4つの竜騎兵隊(ドラグーン)を作ったことに始まります。独立戦争が終わると竜騎兵隊も必要なくなり、縮小され名前だけが残るといった状態になります。しかし19世紀に入り、西へ西へとフロンティア・ラインが進むに及んで、インディアンと対抗するために再びこの竜騎兵隊が必要になります。

1833年に6個中隊からなる騎兵隊が編成され、あらためて第1竜騎兵として発足し、36年にはさらに第2竜騎兵も生まれて、フロンティア・ラインの守備を担当しました。1846年には騎兵銃隊(マウンテッド・ライフルマン)と呼ばれる守備隊が誕生し、また55年には第1、第2騎兵隊(キャヴァリイ)が発足し、三種の騎兵隊が揃います。

1861年、第3騎兵隊があらたに設けられますが、南北戦争により将校や兵が南軍に多く加わったため合衆国騎兵隊は著しく弱体します。そこで以前に作られていた3種の騎兵隊を一本にしてUSキャヴァリイとし、第1から第6までに騎兵隊を再編成して充実を図ります。騎兵隊は開拓民や鉄道建設等へのインディアンの攻撃を防ぐのが目的でしたが、南北戦争でフロンティア・ラインの守備が不足になり、インディアンの勢力が盛り返してきます。そこで南北戦争が終わるや、騎兵隊は西部へ移り、インディアンと戦うことになります。拡充のため第7から第10までの騎兵隊が新設され、第9と第10は下士官以下全員が黒人で編成されていました。

騎兵隊とインディアンの戦いで最も有名なのが、カスター率いる第7騎兵隊が、リトル・ビッグホーンで全滅したことでしょうね。リトル・ビッグホーンの戦いについては別途詳述したいと思いますが、これをモデルした騎兵隊西部劇は数多く作られています。

それでは、騎兵隊西部劇を……

 

栄光の野郎ども(1965年/監督:アーノルド・レーヴェン監督)

センタ・バーガーとトム・トライオン

白人の横暴に耐えかねたシャイアン族が蜂起し、第3騎兵隊がドニファン砦に結集した。マッケーブ将軍(アンドリュー・ダガン)と対面したハーロッド大尉(トム・トライオン)は、将軍に新兵の訓練を要請され不快な感情を抱いていた。6年前の戦いで、将軍の個人的な名誉のために多くの新兵が犠牲になったからだ。夜を日につぐ猛訓練の合間に、ハーロッドはシャイアンに殺された牧師の娘・ルー(センタ・バーガー)への愛情を芽生えさせていく。しかし、スカウトのソル(ハーブ・プレスネル)もルーに求婚しており……

サム・ペキンパーがシナリオを書いていますが、ペキンパーらしいところはありません。一人の女性をはさんで、騎兵隊の大尉とスカウトが喧嘩友達となって友情に結ばれるというのは、西部劇では使い古された設定だし、鬼軍曹が応募兵を一人前に鍛え上げるくだりも、騎兵隊映画ではよくお目にかかっているものです。

名誉欲の強い将軍が、他の部隊が合流してくるのを待たずに、自隊を三つに分け、自ら率いる一隊でインディアンの村に突入して全滅するのは、完全にカスター将軍がモデルですね。

シナリオも平凡なら、レーヴェン監督の演出も平凡なんで、左のレコード・ジャッケト(ちなみに、音楽はリズ・オルトラーニ)にあるような迫力あるシーンがみられません。

演技的には、新兵役で出演した売出し前のジェームズ・カーンが一番うまかったです。

 

遠い喇叭(1964年/監督:ラオール・ウォルシュ)

1883年のアリゾナ。任地デリバリー砦に向かうマット少尉(トロイ・ドナヒュー)は、途中でアパッチに襲われるが、冷静に指揮をとり砦に到着する。砦には隊長がまだ着任しておらず、メインウェアリング中尉が代理で指揮していた。マットはメインウェアリング中尉の妻・キティ(スザンヌ・プレシェット)に心惹かれるが、マットにはローラ(ダイアン・マクベイン)という婚約者がいた。ある日、メインウェアリング中尉は軍馬補給のためにベイヤード砦に向かい、キティは休暇のためにワシントンへ出発した。マットは建築用材を伐採に出かけるが、アパッチに襲われ逃れることができたが、道に迷ってしまう。そこへ、馭者のいない馬車が暴走して来る。中にはキティ一人だけだった。アパッチに襲われ、皆殺しにされたのだった。マットとキティは砦に帰る途中で嵐にあい、洞窟で一夜をあかす。そのことで、二人は愛しあうようになり……

ダイアン・マクベイン

当時人気バツグンだったトロイ・ドナヒューのための西部劇。健康的で明るいトロイの持ち味が、よく出ていましたね。アパッチには勇敢で、たるむ部下には厳しく接し、脱走兵には軍規に準じて容赦せず、悪徳商人(クロード・エイキンズ)には青年らしい怒りを爆発させます。

トロイのお相手が、トロイと結婚したばかりのスザンヌ・プレシェットと、テレビドラマ『サーフサイド6』で一緒だったダイアン・マクベインというのもトロイ映画らしいです。人妻だったプレシェットが、夫がアパッチに殺され、結局トロイと結ばれるのはご都合主義でアホくさくなりますが、全体としては出来のよい騎兵隊西部劇といえるでしょう。

監督のラオール・ウォルシュは当時72歳。齢を感じさせない筋金入りのアクション演出で、騎兵隊とインディアンの戦いを堪能させてくれます。連隊を率いてやってきたクエイト将軍(ジェームズ・グレゴリー)とアパッチとのクライマックスの戦闘シーンは面目躍如の出来ばえです。まずはゴキゲンな作品でした。

 

 

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