PD Classic Inc.から発売されているDVDがあるのですが、珍品のB級作品が安くて手に入るので重宝しています。私が利用している大宮エキナカのCDショップでは380円ですからね。一般のDVDショップでは殆ど扱っておらず、見かけるのはエキナカや書店のDVDコーナーです。どんな作品があるかというと…… |
『セントルイス銀行強盗』(1959年/監督:チャールズ・グッゲンハイム)
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大学でフットボール選手だった若者(スティーブ・マックィーン)が、退学になった大学に戻る資金を得るために、恋人の兄に誘われて銀行強盗の仲間に加わる。リーダーの男はホモで、若者に目をつけるが、リーダーとホモ関係の男が若者に嫉妬し、若者が恋人と逢っているところを目撃し、リーダーに告げ口する。恋人は若者の銀行強盗を止めさせようとして、リーダーに殺され…… スティーブ・マックィーンがテレビ西部劇『拳銃無宿』で人気を得る前の日本未公開作品。マックィーンはこの作品を、「タイトルだけが“グレート”な(原題:THE GREAT ST.LOUIS BANK ROBBERY)お粗末な映画だったな。映画に出たということだけで、それ以外はまったく無意味な作品だったよ」と語っていますが、ちょっとした仕種にも細かな演技をして存在感を出していましたよ。 強盗仲間全員が精神的トラウマを持っていて、その感情表現が見せ場となっているので、派手でカッコいいアクションは期待できません。低予算のプログラム・ピクチャーとしては、悪くない作品だと思います。少なくとも、『マックィーンの絶対の危機』より上出来で〜す。 |
『C・C・ライダー』(1970年/監督:シーモア・ロビー)
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C・C(ジョー・ネイマス)は、改造バイクでハイウェイをブッ飛ばすオートバイ集団の一員だったが、故障で停まっていたリムジンに乗っていたアン(アン・マーグレット)を仲間から救ったことから、ボスのムーン(ウィリアム・スミス)との間に亀裂が入る。そして、飛び入りで参加したモトクロスでC・Cは3位になり、賞金を獲得したことから…… 『イージー・ライダー』などに見られる、“見せかせだけの社会”から逃れ、“見せかけだけの自由”を楽しむアメリカの若者を描いた風俗ドラマ。 “ヘルズ・エンジェル”ものを含め、この手の映画が70年代初めに多く製作されましたね。製作・脚本が『サンセット77』でスペンサー探偵役だったロジャー・スミスで、その関係からか当時スミスの細君だったアン・マーグレットが出演しています。 アン・マーグレットが輝いていたのは60年代までで、この作品では少しくたびれた感じを受けました。それでも、「ツーデイ」というバラード風な挿入歌を聴かせてくれ、踊りもほんの少しだけ見せてくれましたけどね。 主演は当時フットボールの人気選手だったジョー・ネイマス。全体としては安直な作り方で、平凡な出来ばえで〜す。 |
『大ターザン』(1938年/監督:D・ロス・レダーマン)
米国の富豪ロジャー(ジョージ・バービア)は、妻と娘エリナー(エリナー・ホルム)、それにエリナーの婚約者であるネヴィンを連れてアフリカへ猛獣狩にくる。ジャングルの沼に落ちて動けないでいるエリナーを救ったのは、ターザン(グレン・モリス)だった。ターザンとエリナーは、互いに心惹かれあうが…… 数多くあるターザン映画の中で、これは出来の悪い作品といえます。猛獣との格闘シーンはないし(ライオンとじゃれあうような格闘は格闘といいません)、ジェーン(この作品ではエリナー)にピンチらしいピンチはないし、蛮族はアラビアの王様みたいな感じで野蛮人には見えないしで、ハラハラ・ドキドキがないんですよ。 ターザンのグレン・モリスは1936年のベルリン・オリンピックで陸上十種競技の金メダリストです。ターザンにセリフは必要ないので素人でも務まりますね。 でもって、相手役のエリナー・ホルムも1932年のロサンゼルス・オリンピックで水泳100メートル背泳ぎの金メダリストです。ワニに追いかけられたり、ターザンと水中キスをしたりと、水泳シーンは多いのですが、エスター・ウィリアムズほど魅力がないので映画はこの作品だけのようです。 日本でターザン映画を作るなら、室伏と柴田になるのかなァ。 |
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『東京スパイ大作戦』(1945年/監督:フランク・ロイド)
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東京クロニクルの記者ニック(ジェームズ・キャグニー)は、大金をつかんでアメリカへ帰国する仲間の記者オリーを見送りに行くが、船室は荒されオリーの妻が殺されていた。オリーから連絡が入り、急いで家に帰るとオリーは拳銃で撃たれ倒れていた。オリーはニックに日本の世界征服計画書を渡すと息をひきとる。この計画を世界に報せようとするニックの前に謎の女アイリス(シルビア・シドニー)が現れ…… 太平洋戦争前の日本が舞台ですが、日本ロケは行われておらず全てハリウッドのセットです。製作年度から考えて日本でのロケは無理だったでしょうね。 田中義一首相が世界征服の計画を立て、その秘密を知ったキャグニーを殺そうとするが失敗し、東條と山本に後を託して神棚の前で切腹するというトンデモ映画です。 田中や憲兵隊長が、細くて吊上がった目をした米国マンガに出てくる悪い日本人そのまんまなのが笑えますよ。キャグニーの日本語レベルは『キル・ビル』のユマ・サーマンやルーシー・リューのレベルで、外人俳優の日本語レベルは60年たっても進歩していないことがわかりました。 ところで、田中義一の世界征服計画というのは、1927年に書かれたと云われている“田中上奏文”がモデルになっているんですね。「支那を征服せんと欲せば、まず満蒙を征服せざるべからず。世界を征服せんと欲せば、必ず支那を征服せざるべからず」という文句で始まるとされ、中国の新聞に掲載されたものが英訳されて世界中の注目を集めました。戦後の東京裁判でも問題にされましたが、結局“田中上奏文”の存在は否定されています。 |
『シャーロック・ホームズの殺しのドレス』(1946年/監督:ロイ・ウィリアム・ニール)
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オークションに出品された三つの安物のオルゴールのうち一つを落札したワトソン(ナイジェル・ブルース)の友人が殺される。残りの二つのうち一つはホームズ(バジル・ラズボーン)が手に入れるが、一つは謎の女(パトリシア・モリソン)によって奪われる。オルゴールには、造幣局から盗まれた5ポンド紙幣の原版の在処が秘められていた。オルゴールのメロディーが暗号となっており、ホームズが暗号解読に挑むが…… B・ラズボーンとN・ブルースのホームズ映画は平和孝さんの資料によると全部で14本あり、これは最終作。 やせぎすの長身で、鼻はとがって高く、目はするどく英知にあふれ、おまけにフェンシングの名人というホームズ像はラズボーンのイメージにピッタリですね。残念ながらこの作品ではラズボーンのフェンシングを見ることはできませんでしたが…… |
『ケンネル殺人事件』(1933年/監督:マイケル・カーティス)
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名探偵ファイロ・ヴァンスが活躍するS・S・ヴァン・ダインの古典ミステリーの映画化。といっても、当時としては原作が発表されて1年しか経っておらず、新作ミステリーの映画ということになりますね。 骨董品収集家のアーチャー・コーが密室の中で、死体で発見される。最初はピストル自殺かと思われたが、検死の結果、死因は細身の短刀による刺し傷と判明する。何故すぐに判るような偽装を犯人はしたのか、そして同じ凶器による新たな死体が……、ファイロ・ヴァンス(ウィリアム・パウエル)の名推理により事件の謎が解明されます。 密室の機械トリックなど手際よく描写され、私は原作を読んでいないので結構楽しめました。 ファイロ・ヴァンスが活躍する作品は全部で12作あるのですが、8作が映画化されています。そのうち4本がウィリアム・パウエルのファイロ・ヴァンスです。原作で読んだファイロ・ヴァンスと少しイメージが違う気がしますね。 ただ、私が読んだのは『ベンスン殺人事件』、『グリーン家殺人事件』、『僧正殺人事件』だけですが…… |