長谷川一夫の銭形平次


銭形平次捕物控・死美人風呂(1956年・大映/監督:加戸敏)

左乳房に痣のある娘が銭湯で殺されるという事件が起きる。背景に世継をめぐっての伊達藩の御家騒動があった。当主・頼宗には腰元に生ませた姫がいたが、生まれてすぐに里子に出されていた。この姫の左乳房に痣があったのだ。御家乗っ取りを狙う一味に対して、平次の十手が……

タイトルの後、美空ひばりの歌が流れ、不良旗本に絡まれている町人をひばりが助けます。ひばり映画のいつものパターンです。ひばりがご落胤というのも、これまで何度観たことか。銭形平次までひばり映画にしているのですから、サスガとしか云い様がありません。

ちなみに、ひばりが歌う挿入歌は、「旅の軽業娘」と「お江戸八丁堀」です。

ところで、殿様の密命を帯びた大河内伝次郎がギッチョの立回りを見せていましたが、何か意味があるのだろうか。丹下左膳の立回りの練習でもしていたのかなァ。

 

銭形平次捕物控・鬼火灯篭(1958年・大映/監督:加戸敏)

シマと呼ばれる姥ケ池の暗黒街に暮らす遊び人が殺され、平次が清次と名乗ってシマにやって来る。その頃、米問屋の子供が次々に誘拐され、身代金が奪われていた。子供誘拐にはシマに住む浮浪児たちが係わっており……

カスバのような無法地帯というのは舞台設定として面白いのですが、活かしきれていませんね。それと、意外な黒幕というのも売りの一つなのでしょうが、すぐに解っちゃうんですよねェ。

結局、モテモテ男の一夫さんの流し目に、淡路恵子も、香川京子も、岸正子もゾッコンになるという、長谷川一夫のワンマン映画で〜す。

※左記画像は、淡路恵子と長谷川一夫

 

銭形平次捕物控・地獄の門(1952年・大映/監督:森一生)

伊豆の最上一族が秘匿している埋蔵金の扉を開く鍵を所持している人たちが “天”と名乗る謎の人物に殺される。平次の昔馴染みの踊りの師匠(三浦光子)も鍵を持っており、“天”から脅迫状が届く。平次は“天”の正体を探るべく、偽鍵を用意して“天”が指定した場所に行くが……

 脚本は伊藤大輔。密室殺人から始り、埋蔵金の隠し場所を開けるラストまで、物語が淀みなく展開するので退屈しません。長谷川平次のシリーズは、長谷川一夫をいかに美しく見せるかに主眼がおかれているので退屈な作品が多いのですが、これは上出来の仕上がりとなっています。

それと、平次に味方する浪人役の羅門光三郎の立回りが、スピードがあって意外な素晴らしさでした。羅門は、戦後は傍役として目立たなくなりましたが、戦前はB級チャンバラスターだったんですよ。三浦光子も色気があって良し。

 

銭形平次捕物控・金色の狼(1953年・大映/監督:森一生)

廃絶となった元金山奉行の大久保石見守の屋敷跡から七之助という男の死体が発見される。七之助は石見守の五男で、前日、踊りの師匠のお歌(木暮実千代)のところにいたことをガラッ八(益田喜頓)が平次(長谷川一夫)に知らせる。平次は、お歌から七之助が叔父で、自分に似た女が留守中にやってきて、代々家に伝わる三味線の胴を切り裂いたことを知らされる。平次が三味線の棹を外すと中から古地図が出てくる。古地図を預かって家に帰ると、お袖(南田洋子)という娘が平次を待っていた。母が先祖の残した財宝の隠し場所がわかる古地図を持って出かけたというのだ。そして、その場所は大久保石見守の屋敷跡で、お袖の母親も死体となって発見される。お袖の母親も石見守の娘だったのだ。平次は石見守の隠し財産に関連した事件と目星をつけ……

財宝の隠し場所を記す暗号の解読と、犯人捜しがメインとなっていますが、それほど複雑なトリックではありません。捕物帖なので、この程度の謎でも充分面白く仕上がっています。

ただ、キャスティングには問題あり。益田喜頓は、とぼけた味わいがありますがガラッ八のキャラではないですね。山本富士子もお静役よりも他の作品で見せたお品役の方が似合っています。

 

銭形平次捕物控・女狐屋敷(1957年・大映/監督:加戸敏)

深川芸者の染次が美濃屋(香川良介)主催の踊りの会で殺される。一緒に踊っていた藤間勘美津(木暮実千代)が疑われるが、鎌が本身にすり返られていたことがわかる。江戸中で評判の天心教祖・天童四郎(伊沢一郎)が、座主の赤座真乗(小堀明男)に語らせた予言通りに事件が起こり、予言通りに犯人だという芸者の君香が毒を飲んで自殺する。その頃、豆腐屋六兵衛の死体が川に浮かび、女目明し石原のお品(近藤美恵子)は六兵衛の財布から天心教の鏡を発見する。その帰途、黒覆面の一団に襲われるが、お品を救ったのは銭形平次(長谷川一夫)だった。平次は、一連の事件の背後に天心教の陰謀があると推理し……

大塩平八郎の残党が幕府転覆を計画するというスケールの大きな作品ですが、ラストの大立回りで刀が使えないのがつらいですね。目いっぱい投げ銭を使って、殺陣に変化を持たせていますが、バッタバタと斬りすてるような迫力が出ません。投げ銭で敵の目をつぶすというのは、これまであったかなァ。

脚本は、小国英雄でシリーズの中でも出来のよい方だと思いま〜す。

 

銭形平次捕物控・八人の花嫁(1958年・大映/監督:田坂勝彦)

江戸洲崎5万坪の埋立地に、八竜王の社が建立されることになり、それに因んで竜王の花嫁になぞらえて8人の小町娘が選ばれる。しかし、その小町娘が次々に殺され、背後に埋立地を強制退去させられた住民の恨みがあることを平次は推理し……

小町娘が、お糸、お六、お半と“いろは”の順に殺されていく出だしから、従来の捕物帖にないサスペンスがあふれ退屈しません。

伊藤大輔の脚本もさることながら、薄幸な美女役の八千草薫が抜群にいいですね。単純な勧善懲悪でなく、社会悪を追求した傑作で〜す。

 

 

 

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