時代劇いろいろ


『鬼輪番』(1974年・東宝/監督:坪島孝)

公儀隠密“鬼輪番”になるために、少年(少女もいるけどね)の頃から苛酷な修行をして生き残った5人が、紀州藩の謀反を未然に防ぐために新式銃が隠されている火薬庫を爆破する物語です。

紀州藩に潜入し、“鬼輪番”狩り(佐藤慶)の探索をかいくぐって目的を達するスリルとサスペンスを期待したのですが、厚みのない内容にガッカリ。原作は小池一夫の劇画ね。鬼の面をつけた忍者“鬼輪番”の陳腐な設定に、ズッコケましたよ。

1970年代はテレビ時代劇の全盛時代で、時代劇映画は絶滅期にさしかかっていました。血しぶきと女の裸を売りにしただけのお粗末な内容では、映画館には行かないよォ。

 

 

『忍者武芸帖・百々地三太夫』(1980年・東映/監督:鈴木則文)

伊賀攻めをしている秀吉(小池朝雄)の腹臣となった甲賀忍者の不知火将監(千葉真一)の卑劣な策謀によって父と母を殺された百々地三太夫の子・鷹丸(真田広之)は、明に逃れ、カンフーをマスターして日本に戻り、仲間と再会して秀吉と将監に復讐を誓います。仲間は義賊・石川五右衛門と名乗って、盗んだ財物で百々地家再興の軍資金にしているんですな。百々地家の隠し金山の在処をしめす地図が記されている短刀が二本あって、一本は鷹丸が、一本は戸沢白雲斎(丹波哲郎)が所持しています。将監に襲われて多くの仲間を失った鷹丸は、生き残った仲間と白雲斎のもとで修行して必殺技を会得し、服部半蔵(夏八木勲)から将監の動向を知らされて最後の決戦へ。

アクションシーンは千葉真一が監督していて、高い木の上での佐藤允率いる蜘蛛一族と甲賀忍者の戦いや、ストーリー的には関係ないような志穂美悦子のカンフーアクションなど、それなりに見応えのあるものになっています。真田広之もキレのいい体技を見せていますし、CG特撮とは違う生身の迫力がありますよ。もっと、忍者らしい動きがあれば良かったんですけど。

財宝探しの短刀争奪戦が展開するのでもなく、志穂美悦子の存在や、幼馴染の蜷川有紀との絡みも取ってつけたようなもので深みがなく、全体的に中途半端なものになっています。エピソードの寄せ集めで、基軸となる芯が通っていないんですね。散漫な作品で〜す。

 

『仇討』(1964年・東映/監督:今井正)

播州の小藩を舞台にした橋本忍のオリジナル脚本です。武器庫の点検のおり、無役の下士・新八(中村錦之助)は上士(神山繁)と諍いとなり、上士からの果し合いを受けて彼を殺します。藩は私闘を禁じており、両家の申し出により二人は乱心して斬りあったものとして処理しますが、殺された上士の弟(丹波哲郎)は納得できず、新八を殺そうとして逆に斬られます。丹波と錦之助の殺陣は、真剣勝負の緊迫感があって、TV時代劇では味わえない迫力がありましたよ。

二人の兄を喪い、家督相続のため三男(石立鉄男)が仇討を願い出て藩は許可します。家老立会いのもとに公の果し合いとなります。藩の意向や家名を守る兄(田村高広)の頼みもあって、仇として討たれる気持ちで臨んだ新八でしたが、見物人が大勢おしかけ、藩命を受けた助太刀たちを前にして、自分の死を見世物にすることに怒りを覚えるんですな。刃びきした刀で助太刀を打ち据え、相手の刀を奪って斬りまくるラストの大立回りは悲壮感あふれてグッドです。

家名尊重と武士としての生き方という武士道の矛盾を鋭くついた時代劇です。矛盾の中でもがき苦しみ、結局は死に追いやられていく主人公の精神的葛藤を錦之助は内面演技でうまく表現しています。今井正も、この暗い話を格調高く、醒めた視点で描いており、力作といって言いでしょう。だけど、良い時代劇ですが、“誰がみても面白い時代劇”ではありませ〜ん。

 

『大江戸五人男』(1951年・松竹/監督:伊藤大輔)

時代劇でお馴染みの幡随院長兵衛(阪東妻三郎)の物語です。太平の世になって存在感を失った旗本たちがその憤懣から徒党を組んで、江戸町民に狼藉三昧。みかねた町奴の頭領・長兵衛がとりなすのですが、旗本たちは逆恨みして、長兵衛一家を眼の仇にします。旗本白柄組の頭領・水野十郎左衛門(市川右太衛門)と腰元・絹(高峰三枝子)、白井権八(高橋貞二)と花魁・小紫(花柳小菊)の色模様を絡めて、長兵衛と十郎左衛門の宿命の対決を描いています。

松竹30周年記念映画ということで、スタッフ・キャストは当時のトップクラスを揃えており、セットや美術にも金がかかっていることが一目でわかります。

内容的には歌舞伎の演目を寄せ集めた古臭い物語ですが、伊藤大輔は大セットを巧く活用し、群衆シーンなどで時代劇のダイゴ味を味あわせてくれます。出演者の所作やリアルなセットを見ているだけで時代劇ファンは嬉しくなりますね。

時代劇で人妻がお歯黒しているのは、当時の映画ファンにとっては常識でしたが、最近の若い人には不気味に感じるかな。

 

『雷桜』(2010年・東宝/監督:廣木隆一)

母の愛情を知らずに育ち、人間不信の将軍の子(岡田将生)と、森の中で人知れず育った野生の少女(蒼井優)の純愛物語です。持病の療養のために側近(小出恵介)の故郷に来た将軍の子が、天狗が住むという森で少女と出会うんですな。少女は赤ん坊の頃、刺客(時任三郎)に連れ去られた側近の妹で、刺客が殺すことができずに育てていたんですよ。療養地の藩を取潰すために、将軍の子を暗殺しようとしますが、少女が邪魔をし、住んでいた小屋を焼いて刺客は森を去ります。少女は側近と実家に戻りますが、村での生活に馴染めません。でもって、孤独な二人は愛し合うようになりますが……

世間の常識から少しズレた二人でしたが、将軍の子が常識に従うことになり、別れがきます。蒼井優は少し変わった女の役が似合っていますね。考証的にはおかしな時代劇ですが、ファンタジーとして楽しめました。

 

 

 

トップへ    目次へ    ページ