時代劇いろいろ


『嵐が丘』(1988年・東宝/監督:吉田貴重)

山の祭事を司る東の庄高丸(三國連太郎)は、都から孤児の鬼丸(松田優作)を屋敷に連れて帰る。高丸の娘・絹(田中裕子)は鬼丸に好意を持つが兄の秀丸(萩原流行)は鬼丸を毛嫌いする。やがて鬼丸と絹は愛しあうようになるが、高丸が死に、秀丸が跡取りとなったことから、鬼丸は絹を棄てて屋敷を去る。絹は分家の西の庄光彦(名高達郎)に嫁ぎ……

エミリー・ブロンテの原作を、室町時代に舞台設定した翻案時代劇です。長い歳月にわたる狂気に満ちた恋物語を、吉田貴重は荒涼たる独特な雰囲気をいかし、能や歌舞伎の所作や振付など日本的要素を取り入れて幻想的に仕上げています。

松田優作の強烈無比の個性は見応え充分だし、田中裕子も巧いなァ。

ただ、全体的にしつこくて、食傷気味になりますね。ゴーリキの『どんぞこ』や、シェークスピアの『マクベス』を翻案時代劇にした黒澤明のタッチが随所に見られるのも気に入りませ〜ん。

 

『嗤う伊右衛門』(2003年・東宝/監督:蜷川幸雄)

浪人暮らしをしている伊右衛門(唐沢寿明)は、御行乞食の又市(香川照之)から民谷家への婿入りを勧められる。民谷家には岩(小雪)という娘がいたが、病がもとで顔の半分に醜い痣があった。しかし、伊右衛門と岩は互いに理解し、愛し合っていくが……

原作が京極夏彦なので新解釈の“四谷怪談”か、と思ったのですが、怪談ではなかったですね。幽霊や怪奇現象が出てこないんだもの。お岩さんは最初から化物顔だし、伊右衛門はとっても好い奴。二人は深く愛し合っているんですな。

直助(池内博之)も好い奴で、正体を隠す時の名が小平とはね。ひとり悪いのは伊藤喜兵衛(椎名桔平)で、こいつが不幸をバラマク張本人。原作を読んではいませんが、演劇関係者が歓びそうな題材ですね。

蜷川幸雄が照明や長台詞など舞台演出調そのままに映画演出しています。それが成功しているかとなるとウ〜ン。

 

『山桜』(2008年・東京テアトル/監督:篠原哲雄)

野江(田中麗奈)は墓参の帰りに、山桜を見ていて手塚弥一郎(東山紀之)と出会う。弥一郎とは以前に結婚の話があったのだが、諸事情があって断った経緯がある。野江は最初の夫と死別し再婚していたが、嫁ぎ先は金貸しをしている吝嗇武家で暗い毎日を送っていた。弥一郎と出会ったことで、彼の姿が心の片隅に残るようになる。

藩は農民の困窮を省みず、藩の財政を私物化する諏訪平右衛門(村井国夫)によって支配されていた。若侍たちは江戸にいる主君に訴えて、諏訪を糾弾しようとしていたが、藩の重役たちは事なかれ主義で見てみぬふりをしていた。ある日、農民の窮状に我慢できなくなった弥一郎が諏訪を斬殺する。諏訪に組していた野江の夫が弥一郎を悪しざまに言ったことから、野江は夫を詰り、離縁されて実家に戻る。弥一郎の裁決はなかなか下りず、主君の帰国を待つことになる。野江は弥一郎の母親(富司純子)を訪ねて親しくなり……

藤沢周平の短編小説が原作で、お馴染みの東北・海山藩が舞台になっています。四季の美しさの中で、秘めたる情愛を描いた癒し系時代劇になっています。ドラマチックな盛り上がりを作らず、淡々とした展開は監督の意図したものなのでしょうが、物足らなさを感じますね。何か一工夫あってもよかったような気がします。

田中麗奈は、役柄的によくガンバッテいるという感じですね。この作品では東山紀之の好演が光ります。セリフでなく表情で見せる東山には華がありよ。立回りにおける動きもいいし、時代劇が似合う役者だと思いますね。彼を活かす時代劇をもっと作って欲しいで〜す。

 

『BALLAD・名もなき恋のうた』(2009年/監督:山崎貴)

原案のアニメ映画の方は観ていませんが、“クレヨンしんちゃん”は知っている(『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』は西部劇のパロディ満載で面白かった)ので、アニメの面白さが実写版で出ているかというと疑問ですね。

実写化ということで、草g剛の侍と新垣結衣の姫の恋を中心に描いていますが、内容はアニメ的SF時代劇ね。荒唐無稽な話であっても、実写化するのなら本当らしいところが欲しかったです。最低でも時代設定を明確にして、それにあわせた考証をして欲しかったですね。役者の所作・立回りもひどく(端から期待していなかったのだけど)、単なるコスチューム劇にすぎませ〜ん。

草g剛は役者として時代劇に合う雰囲気を持っているので、所作と殺陣を練習したら時代劇の顔になれると思いますよ。だけど、需要がないか……

 

『カムイ外伝』(2009年・松竹/監督:崔洋一)

抜け忍のカムイ(松山ケンイチ)は、領主(佐藤浩市)の馬の脚を切って持ち去った半兵衛(小林薫)と知り合うが、逃走の途中で嵐の海に投げ出されてしまう。島に流れ着いたカムイは半兵衛一家に救われ、娘のサヤカ(大後寿々花)はカムイに好意を寄せるが、女房のスガル(小雪)は自分が抜け忍であることからカムイの命を狙う。しかし、領主に捕えられた半兵衛を一緒に救出したことから、心を許すようになる。島の漁場がサメの大群に荒され、サメ退治に不動(伊藤英明)の一団がやってきたことから……

原作は白土三平の劇画で、“カムイ外伝”シリーズの第二部「スガルの島」を映画化しています。CGの進歩に一昔前の忍者映画では表現できなかった劇画的動きが再現できるようになりましたね。

どうせなら、罪のない島民や仲間を皆殺しにした不動への、カムイの壮絶な復讐も原作通りにして欲しかったです。磔になる半兵衛救出シーンも、原作ではカムイとスガルは煙幕を使って領主たちの視界を防ぎ、追手の前に金をバラまいて見物人を刑場へなだれこませて逃亡に成功するんですが、白昼堂々の乗り込んでくるのは無謀ではないかえ。原作が優れているので、下手な脚色はシラケます。

どうせ映画化するなら、原作を思い切って変えるような脚色の方が良かったんじゃないですかねェ。

 

 

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