テレビから映画へ


隠密剣士

『隠密剣士』(1964年東映/船床定男監督)

幼少の徳川家斉が11代将軍に就任するのを不満とする、尾張・徳川家の策謀の証拠である連判状を手に入れて尾張を脱出した公儀隠密の伊賀忍者が甲賀忍者に襲われ、居合わせた秋草新太郎(大瀬康一)が瀕死の伊賀忍者からその連判状を預かる。

秋草新太郎は家斉の妾腹の兄・松平信千代で、老中・松平定信(加賀邦男)の要請で、尾張への使者として伊賀忍者の霧の遁兵衛(牧冬吉)を供に連れて旅立つ。しかし行く手には、連判状奪還のために甲賀竜四郎(天津敏)率いる尾張忍者が待ち受けていた。

隠密剣士と甲賀忍者の激しい立ち回りは、テレビでは味わえない迫力がありますよ。伊賀忍者の頭領である品川隆二の壮絶な最後、新人・藤純子のくノ一など見所満載で〜す。

『続・隠密剣士』(1964年東映/船床定男監督)

江戸城の宝蔵蔵が襲われ、“風神の鏡”が奪われる。襲ったのは風魔小太郎(天津敏)率いる風魔一族で、風神・水神・雷神の三つの鏡と、その謎を解くための風神帳があれば北条家が発掘した隠し金山の所在地がわかるという。風魔一族は、隠し金山を手に入れ、幕府転覆を企てていた。秋草新太郎(大瀬康一)は、霧の遁兵衛(牧冬吉)と“火神の鏡”がある小田原・早雲寺へ向かうが……

テレビだと、ワンクール(30分13回)の争奪戦が、83分に詰め込んだため、物語の展開は荒っぽいです。そうはいっても、江戸城の宝蔵から風魔忍者が風神の鏡を奪う冒頭シーンなどは、非常にテンポがよくワクワクさせてくれましたね。それと風魔騎馬部隊と秋草新太郎の、馬を使った立回りは近年お目にかかっていないので、嬉しくなりました。

それにしても、忍者の親玉を演った時の天津敏って、メチャ存在感があるなァ。

 

 

三匹の侍(1964年・松竹/監督:五社英雄)

テレビの人気シリーズの映画化で、テレビでも演出を担当していた五社英雄の初の劇場用映画。

年貢米軽減の交渉のため、三人の百姓が代官の娘(桑野みゆき)を人質にして立てこもっている水車小屋に旅の浪人・柴左近(丹波哲郎)がやって来る。左近は百姓の味方となって、人質を取りかえしにきた代官所の役人を追っ払う。代官は娘を救い出すために居候の浪人・桔梗鋭之助(平幹二郎)と、牢内につながれていた無頼の浪人たち、それに百姓出身のイモ侍・桜京十郎(長門勇)を水車小屋へ差し向けるが……

虐げられた農民の味方となって、悪らつな代官一味と戦う三人のキャラクターが個性的で、それぞれにカッコいいんですよ。五社監督は、この三人の活躍を重厚なタッチで描いています。辛口の結末にも満足、満足。

それにしてもチャンバラは見応えがあります。特にラストの水車小屋での決闘は、大道具小道具をうまく使って、斬新な立回りとなっていましたよ

テレビで多くのチャンバラドラマが放送されましたが、五社英雄はテレビが生んだ唯一人のチャンバラ監督ですね。この『三匹の侍』を引っさげて映画界進出をはたしましたが、もうチャンバラ映画の時代でなくなっていたのが残念です。

 

燃えよ剣(1966年・松竹/監督:市村泰一)

司馬遼太郎の人気小説がテレビ化され、それに主演した栗塚旭に人気が出てきて、彼を主演にして映画化したもの。

天然理心流の師範代をしている土方歳三(栗塚旭)は、竹刀剣法はそれほどでもないが、喧嘩剣法にはめっぽう強かった。暗闇祭りで知り合った宮司の娘(小林哲子)と恋仲となり、彼女を護衛していた生涯のライバル・七里研之助(内田良平)とめぐりあう。時は流れ、新撰組の副長となった土方は、池田屋襲撃で七里と対決する。

歴史ものというより、剣にも女にも強い青年剣士の物語となっています。私は、同じ司馬遼太郎原作で栗塚旭が主演した『新選組血風録』はテレビで見ていたのですが、『燃えよ剣』は見ていないんですよ。だけど、この両作品で土方歳三が一躍注目を浴びるようになったのですね。栗塚旭のイメージが、それまで幕末ものでは目立たなかった土方歳三を有名にし、私淑者まで出る歴史上の人気者にしました。

テレビで多くのチャンバラドラマが放送されましたが、栗塚旭はテレビが生んだ唯一人のチャンバラスターですね。彼が主人公を演じた現代劇を私は見たことがありません。

マゲと刀が似合う男、それが栗塚旭でした。時代劇全盛の昭和30年代に登場していれば、スクリーンで彼のチャンバラを堪能できたと思うのですが、生まれてくるのが遅すぎて残念です。

※テレビ版の『燃えよ剣』を再見して、観たことを思い出しました。映画では近藤勇が和崎俊哉だったので、見たことがないと思っていたんですね。それと、『新選組血風録』と混同していたことに気づきました。

 

 

 

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