テレビから映画へ


『帰ってきた木枯し紋次郎』(1993年・東宝/監督:市川崑)

5年前、崖から落ちて河に流された紋次郎(中村敦夫)は、木こりの伝吉(加藤武)に助けられて堅気になっていた。しかし、伝吉の息子・小平次(金山一彦)が評判のよくない木崎の五郎蔵(岸辺一徳)一家の身内になっていることを知り、伝吉の許に連れ戻すべく旅に出る。小平次は五郎蔵に利用されて、百姓一揆の煽動を行なっていたが……

テレビドラマ化20周年を記念して製作されたもので、テレビ放映に先立って劇場で特別公開されました。20年も経つと中村敦夫の動きは重いものになっていますが、それでも人生の裏街道を流れ歩く天涯孤独の紋次郎は、やっぱり中村敦夫ですね。

主題歌を歌っている上條恒彦がゲスト出演していますが、如何ってことなし。

 

『木枯し紋次郎』(1972年・東映/監督:中島貞夫)

兄弟分の左文治(小池朝雄)の身代わりで、三宅島に流された紋次郎(菅原文太)は、島送りされてきたヤクザから左文治に騙されたことを知る。紋次郎が心密かに想いを寄せていたお夕(江波杏子)に面影が似ていて、何かと面倒をみていた流人の女が自殺し、紋次郎は捨吉(山本麟一)たちと島抜けをする……

テレビでヒットし、それに便乗して映画化した作品。10年前だったら、テレビと映画では制作費だけでなく、役者にしても監督にしても格段の差がありましたが、1972年では金を出して観るだけの魅力がなくなっていましたね。作品の出来自体は悪くないのですが、テレビとどれだけ違うのかと云ったら明確に答えられません。

テレビ時代劇が衰退した現在、改めてリメイクしたら面白いものができそうな気がするけど……

 

『隠密同心・大江戸捜査網』(1979年・東宝/監督:松尾昭典)

皆殺しにされた村の生き残りが江戸に逃げてきて清次郎(松方弘樹)の前で殺される。殺した男は、かつて道場で同門だった天馬八郎太(伊吹吾郎)だった。その頃、徳川信吾(大和田獏)と名乗る御落胤が現われ、松平定信(三船敏郎)の命を受けた内藤勘解由(中村竹弥)は清次郎たち隠密同心が御落胤の正体を探る。定信失脚を狙う鳴神鉄山(芦田伸介)が背後にいることがわかり……

東京12チャンネル(現:テレビ東京)開局15周年記念映画です。『大江戸捜査網』は1970年にスタートし、84年まで続いた(その後1990年に復活し、92年に終了した)同局の人気時代劇でした。「死して屍、拾う者なし」のナレーションは聞いたことがあるでしょう。主役は杉良太郎、里見浩太朗、松方弘樹、並木史朗と代わり、私が観ていたのは杉良が主演していた第2シーズンぐらいまでじゃなかったかな。後年、再放送で里見のものも、松方のものも何本か観ていますが、キャラは同じでしたね。悪人成敗のクライマックスで、メンバーが横一線に歩く(西部劇の決闘シーンからの頂き)のは、この作品が元祖でしょう。映画化されたのは、松方弘樹主演の第5シ−ズン(1979年9月〜84年3月)で、他のメンバーは中村竹弥・瑳川哲朗・土田早苗・かたせ梨乃ね。

でもって感想ですが、本者を偽者と思わせて隠密同心に殺させようとする、捻ったストーリーは面白いですが、どうでもいいような人情話と血みどろ殺陣の過剰サービスで安っぽいものになりましたね。色々盛り込みすぎて、結局中途半端になる悪い見本で〜す。

 

 

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