時代劇いろいろ


『武士道無残』(1960年・松竹/監督:森川英太朗)

高千穂ひづる

殉死が藩の名誉であった時代、本多家では若君が死に、殉死者として榊原信幸(森美樹)の弟・伊織(山下洵一郎)に白羽の矢が立つ。伊織は死んだ若君とは3度しか会ったことのない軽輩だったが、幕府への体面上、重臣の子息の代わりに身代わりにされたのだ。信幸の妻・お幸(高千穂ひづる)は、伊織を不憫に思い……

殉死を命じられた若侍が恐怖のあまり逃げ出し、追いかけてきた城の侍たちに斬られる冒頭シーンでのロングショットとカット割りが素晴しかったので期待したのですが、途中からメロドラマになり腰砕けです。武士道の矛盾について徹底すれば社会派時代劇として中途半端なものにならなかったと思いますね。

脚本を書いた森川英太朗はこの作品が監督デビュー作なのですが、他に1本しか監督しておらず、如何したんですかね。続けていれば、傑作を作る可能性が感じられたので、惜しい気がします。

 

『魔界転生』(2003年・東映/監督:平山秀幸)

島原の乱で無念の死を遂げた天草四郎(窪塚洋介)はクララお品(浅生久美子)と共に、秘術“魔界転生”によって甦る。紀州藩主・徳川頼宣(杉本哲太)の動向を探っていた柳生十兵衛(佐藤浩市)は、四郎が頼宣の野心を利用して再び戦乱の世に戻そうとしていることを知る。そして、十兵衛の前に四郎の“魔界転生”で甦った剣豪が次々と現れ……

窪塚洋介は妖艶さが乏しく、佐藤浩市は存在感不足と、前作と比較するとどうしても見劣りがしますね。特にチャンバラシーンはロングが少なく、アップばかりなので激しい動きのわりには迫力がありません。

「昔の俳優だと1カット20秒回せるけども、今は5秒しか回せない」と、平山監督が『時代劇マガジン』で語っていましたが、編集でカバーするしかないのでしょうねェ。

 

『無宿人御子神の丈吉・牙は引き裂いた』(1972年・東宝/監督:池広一夫)

旅先で足の生爪をはがし、破傷風になるところを茶屋の女・お千加(北林早苗)に救われた旅人の丈吉(原田芳男)は、しつこく言い寄る国定忠治の舎弟九兵衛(南原宏治)と長五郎(内田良平)からお千加を救い、お千加と所帯を持って堅気になる。

細工職人として幸せな生活を送っていたが、商品を納めに行く途中で九兵衛一家に見つかり、左手の薬指と小指をつぶされる。治療を終え、家に戻ってみると妻子は嬲り殺しにされていた。

様子を探っていた九兵衛の子分を捕え、白状させると、犯人は国定忠治、長五郎、九兵衛だという。女房の赤いシゴキを帯びに巻き、九兵衛一家へ殴り込みをかけるが、一家に草鞋を脱いでいた疾風の伊三郎(中村敦夫)との闘いで丈吉は傷を負い、谷川へ落ちる。

傷の養生をしている湯治場で、湯治客のお絹(松尾嘉代)をならず者から救ったことで、伝三郎(阿藤海)を首領とするならず者たちが仕返しに湯治場を襲う。居合わせた“天狗の親分”と呼ばれる旅人(峰岸隆之介)が情容赦なく伝三郎を斬り殺すが、人質にされていた旅篭屋の娘も殺されてしまう。お絹から、国定忠治が巳之吉(菅貫太郎)一家にいることを教えられるが、それは九兵衛が仕掛けた罠だった……

「木枯らし紋次郎」で股旅小説の新境地を開いた笹沢左保が、紋次郎に続くヒーローとして創出した「御子神の丈吉の映画化です。

シリーズ第1作目で、この後、『川風に過去は流れた』、『黄昏に閃光が飛んだ』と、全部で3本作られています。後の2作を観ていないので、シリーズとしての評価は控えますが、第1作目だけに関しては、今後の展開が期待できる面白い内容になっています。

国定忠治は妻子殺しに拘わっているのか?

天狗の親分というのが実は国定忠治で、肉体関係にある旅篭屋の娘を見殺しにする冷酷な面もあって、結構ミステリアスなんですよ。

疾風の伊三郎と丈吉の対決はあるのか?

アイパッチをした黒づくめの伊三郎は原作には登場しませんが、笹沢左保の別の股旅小説「北風の伊三郎」とよく似たキャラで、白い着物に赤いシゴキの丈吉との対比がオシャレで〜す。

 

 

 

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