時代劇いろいろ


『蝉しぐれ』(2005年・東宝/監督:黒土三男)

海坂藩の下級武士の子・牧文四郎は(石田卓也)は、隣家のふく(佐津川愛美)にほのかな想いを寄せながら、道場通いと友人との交遊に毎日を送っていた。しかし、世継をめぐる御家騒動で父(緒形拳)は切腹となり、家禄は減らされ貧乏長屋住まいとなる。江戸屋敷に奉公にあがったふくと別れて数年後、成長した文四郎(市川染五郎)は筆頭家老の里村左内(加藤武)に呼ばれ、旧領回復の処置を受ける。藩内随一の剣の腕前を利用するために、里村が文四郎に恩を売ったのだ。主君の側室となったふく(木村佳乃)は主君の子を身ごもり、江戸から藩の領地に戻っていた。里村は、後ろ盾になっている世継のために、ふくの命を狙うが……

藤沢周平時代劇の第3弾。山田洋次監督の前2作が上出来だったので、あまり期待していなかったのですが合格点はつけられます。

四季の風景の美しさ、市川染五郎と緒形幹太との決闘は見事だったですね。そうはいっても、注文は色々あり、特に題名の“蝉しぐれ”が物語展開において効果的に使われていないのが気に入りませ〜ん。

 

『郡上一揆』(2000年/監督:神山征二郎)

1754年(宝暦4年)、美濃・郡上藩は藩主の多額の交際費の捻出のため検見税(農作物の出来状況で年貢を決める増税策)を導入するが、度重なる増税に怒った農民たちが城下に押しかける。群集に恐れをなした家老は免状を書き、とりあえずは収拾するが、翌年、またしても検見税が申し渡される。藩に上告しても埒があかないと考えた四郎左衛門(林隆三)は、幕府に強訴することを決意する。直訴のため江戸に向かう農民の中に定次郎(緒方直人)がいた。定次郎には妻(岩崎ひろみ)と産まれたばかりの娘がいたが、子供の頃より父親(加藤剛)から農民の役に立つ人間になれと教えられていた。定次郎たちは、老中への直訴に成功するが……

足掛け5年におよぶ郡上一揆は江戸時代の三大一揆のひとつで、その史実を英雄物語にせず、淡々と描くことで逆に胸を打つ作品になっています。

膨大な登場人物がそれぞれ丁寧に描かれており、群像劇によく見られる粗さはありません。出演者の顔ぶれにTVタレントがいなかったのが、よかったですね。名前だけ有名でも、ど下手な演技をされたら、それだけでブチ壊しになる作品ですからね。しっかりした演技があれば、それだけで感動します。

それと、星の数ほどある時代劇の中で、農民を主人公にした映画は全くといってなく、それだけでも価値がありますよ。

それにしても、いつの時代でも、弱者が強者に対抗できるのは団結だけだァ。

 

『闇の狩人』(1979年・松竹/監督:五社英雄)

闇稼業の元締・五名(仲代達矢)の配下・弥市(梅宮辰夫)は、記憶を失っている浪人・谷川弥太郎(原田芳雄)を手引きして、白金の徳三を殺すことに成功する。徳三は三大闇稼業の元締の一人だった。闇稼業の独占を企む治平(大滝秀治)は、五名の女・おもん(岸恵子)とできている弥市を仲間に引入れ、五名を誘い出して殺そうとするが逆に五名と弥太郎に殺される。裏切り者の弥市は殺され、おもんも川に沈められそうになるが、嘉助(藤田まこと)に助けられる。田沼意次(丹波哲郎)に味方して藩をつぶした元北前藩の家老・下国左門(千葉真一)が、北前藩残党の暗殺を五名に依頼する。弥太郎は暗殺に成功するが傷を負う。身投げしたところを五名に助けられ、五名の女となったおりは(いしだあゆみ)が弥太郎を看病するが、弥太郎の顔を見て驚く。弥太郎は彼女の夫だったからだ。弥太郎は北前藩士で、左門を殺そうとして失敗し、左門の配下に追われて千尋の崖から転落し記憶を失ったのだった。弥太郎は記憶を求めて、般若院の住職(東野英治郎)に会いに行くが……

「血に狂った劇画のような、エロと血しぶきのバイオレンスを新しいと思っているのだから、どうしようもない」と原作者の池波正太郎が酷評した作品。

原作の面白さで、最後まで退屈せずに観ましたが、内容は褒められたものではありません。豪華キャストと女の裸が売りと云われても仕方ないで〜す。

 

『獣の剣』(1965年・松竹/監督:五社英雄)

下級武士だった平木弦之助(平幹二朗)は出世のために城代家老を斬ったが、これは次席家老(天知茂)の策略だった。城代家老の娘・美沙(木村俊恵)、美沙の許婚者で弦之助の友人でもある鳥尾大三郎(菅貫太郎)、剣術師範の香取軍太夫(加藤武)の三人に仇として追われ、弦之助は天領に逃げ込むが、その首には賞金がかけられていた。ひょんなことから、ヤクザの丹治(田中邦衛)を助けた弦之助は、山奥の川で砂金が取れると聞き、丹治と砂金採りに山に入る。山には、砂金を盗掘している山根十郎太(加藤剛)とたか(岩下志麻)の夫婦がいた。十郎太は、藩財政を立て直すために家老の坂崎帯刀(東野英治郎)から密命を受けていたのだ。山に入ってくる者は、十郎太によって斬り殺されており……

権力者に利用される下級武士の悲哀を描いた五社英雄の佳作。

ドラマの弱さを、チャンバラの魅力で補っています。テレビの『三匹の侍』ではスタジオが狭く窮屈な立回りをしていた平幹二朗が、生き抜くために獣のように刀をふるって追手を斬りまくる立回りはスケール大きく、カッコよく決めていましたね。

 

『茶々 天涯の貴妃(おんな)』(2007年・東映/監督:橋本一)

小谷城が落城し、母・市(原田美枝子)と茶々たち姉妹は、秀吉(渡辺篤郎)に救出される。帝王の血を受け継ぐ者として信長(松方弘樹)の前で杯をほした茶々は、やがて成人(和央ようか)し、天下人・秀吉の達ての願いで側室になる。秀吉が死に、徳川家康(中村獅童)が将軍となり……

浅井家滅亡から大阪城落城までの茶々(和央ようか)の生涯を描いた歴史ドラマ。トントン拍子び物語が展開し、結局何を言いたいのか、わからない内容になっていますね。茶々の誇り高き生涯を描きたかったのでしょうが、それを表現する葛藤シーンがないので全然盛り上がらないんですよ。

キャスティングにも問題あり。小督役の寺島しのぶは巧いけど妹には見えないし、家康役の中村獅童も狸オヤジに見えません。主演の和央ようかは宝塚の男役だったようで、鎧姿が凛々しくて似合っていたので、こんな映画より女武者を主人公にした時代劇に出演させたいですねェ。

 

 

 

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