大映時代劇


『紅蓮菩薩』(1949年・大映/監督:森一生)

加賀前田の支藩・大聖寺藩から出火し、加賀藩お抱えの加賀火消しが消火にあたるが、火の回りが速く、頭領・勘蔵(月形龍之介)は風下の塀を壊して表門の延焼を防いだ。大名屋敷炎上において表門さえ免れれば幕府からのお咎めがなかったからだ。その為、風に乗った炎は、町屋を焼き払った。町火消し・わ組は、加賀火消しが駆けつける前に現場に着いていたが、大名屋敷の火事は町火消しが消火することは禁止されていた。同様に、大名火消しが町屋の火事を消火することも。わ組の頭領・松五郎(市川右太衛門)は、焼け出された町衆のために加賀藩に援助を求めるが……

月形龍之介が悪役かと思いましたが、悪は別にいました。GHQによりチャンバラが禁止されていた頃の作品なので、斬りあいはなく死人も出ません。ラストも、ご都合主義ですが、これ以外の結末は考えられないでしょうね。

民門敏雄の原作を伊藤大輔が脚色。火災シーンの特撮は円谷英二です。

 

『関の弥太ッペ』(1953年・大映/監督:田坂勝彦)

黒川弥太郎

ヤクザの意地でしつこく絡んでくる箱田の森介(坂東好太郎)をまいて、盗まれた50両を取り返すために関の弥太郎(黒川弥太郎)は堺の和助(河野秋武)を追いかけていた。和助に追いついた弥太郎は、抵抗する和助を止むなく斬り、和助の今わの際の頼みで娘のお小夜(松島トモ子)を祖母のいる吉井宿・沢井屋へ連れて行く。弥太郎がお小夜を預けるために、祖母おきん(浪花千栄子)とかけあっている時に、執念深く追ってきた森介が暴れこんでくる。弥太郎は50両をお小夜の向こう10年間の食い扶持として渡し、森介の決闘に応じる。森介に手傷を負わせた弥太郎は、傷を治して出直せと言って立ち去り……

当時天才子役と云われていた松島トモ子が出演しているので、子供時代のお小夜のシーン(セリフが多い)が、他の“関の弥太っぺ”と比べて多いですね。でもって、松島トモ子が小生意気なくらい巧いんだなァ。

成長したお小夜(山本富士子)との再会シーンは、情感が不足して今イチです。何といっても錦之助の“関の弥太っぺ”が最高でした。

 

『舞妓と暗殺者』(1963年・大映/監督:三隅研次)

脱藩浪士の九鬼進二郎(津川雅彦)は暗殺に成功した後、見廻り組に追われ、祇園の舞妓・ひな菊(高田美和)に助けられる。西陣の貧乏町家で育ったひな菊と、貧乏侍の家で育った進二郎は互いに心が通じあうものがあり、二人は愛しあうようになる。しかし、ひな菊に目をつけた進二郎の上司・前川(山本耕一)がひな菊を水揚げしようとしたことから……

社会派の新藤兼人の脚本にしては甘い結末になっていますね。娯楽性優先で、変更されたような気がしてなりません。

内容はともかくとして、ロケ中心の映像が新鮮な驚きでした。電柱1本ない町並みが当時の京都にはたくさんあったんですね。

 

 

『地獄の刺客』(1962年・大映/監督:池広一夫)

佐渡金山で暴動が起こり、鉱夫46人が脱走し行方不明となった。勘定奉行と結託して私腹を肥やしていた田沼意次は北町奉行に命じ、秘密裏に無宿人70名を捕らえる。金の採掘が遅れると、自分の悪事がバレる恐れがあるので、彼らを佐渡送りにするためだった。護送隊長の美津野(島田竜三)は、八丈島送りの囚人・間風伝十郎(藤巻潤)を赦免の条件で用心棒にする。伝十郎は我流であったが無類の剣客だった。竜巻組のお勝(炎加世子)は、愛人を救出するために護送隊を襲うが……

護送隊を襲ってくる連中を藤巻潤がバッタバタと斬り倒します。その強いこと、強いこと。キャッチコピーが“二秒に三人!十秒に十七人!俺は斬る!”ですからね。しかし、殺陣に工夫はなく、ただ斬るだけなので飽きてきます。

脚本は新藤兼人。社会派らしい結末になるのかと思っていましたら、海に向かって「バカやろう!」はないでしょう。青春映画してどうするんだ!

 

『木曽路の子守唄』(1953年・大映/監督:加戸敏)

誤解から勘助を殺してしまった国定忠治(黒川弥太郎)は、勘助の子・勘太郎を背負って赤城山を脱出する。お俊(霧立のぼる)と千吉(杉山昌三九)夫婦のもとへ身を寄せるが、忠治の懸賞金に目の眩んだ千吉の裏切りによって、忠治は岩村田の伊平(市川小太夫)に捕まってしまう。しかし、子分の清水の巌鉄たちに救出され、再び勘太郎を連れて旅立つ。浪人たちに襲われている、材木問屋の島屋藤兵衛(羅門光三郎)と娘のおつや(伏見和子)を救ったことから、忠治は島屋宅に逗留することになり……

伊丹秀子の浪曲によって物語が進行する浪曲時代劇。

黒川弥太郎の国定忠治は典型的な二枚目演技。中身が面白いかというと、偶然の連続という安易な脚本で観ていてシラケます。

山場、山場は浪曲で知られている“忠治ストーリー”なので、物語の展開方法は如何でもよかったのかもしれませんが……

 

 

 

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