ハイパー時代劇


『五条霊戦記』(2000年・サンセントシネマワークス/監督:石井聰互)

平家が支配する平安末期。平家の武士が斬殺される怪事件が相次ぎ、世間は鬼の仕業と噂した。都は混乱に陥り、“鬼を斬れ”というお告げを受けた弁慶(隆大介)は、無宿の刀鍛冶・鉄吉(永瀬正敏)とともに、鬼退治に乗り出す。五条橋を跳梁跋扈する鬼・遮那王(浅野忠信)と出会った弁慶は、鬼の宿命をうけて五条橋で遮那王と激突する……

 ♪〜Kyou no Gojou no On the Bridge Way

    Big Man no Benkey ga

    Long Long knife furiagete

    Ushiwaka megakete Cuting

    京の五条の橋の上

    大の男の弁慶が

    長い薙刀ふりあげて

    牛若めがけて斬りかかる〜

 唱歌にも歌われた弁慶と牛若丸の五条橋での伝説の闘いを、SF的解釈で特撮を駆使して描いた“ハイパー時代劇”だそうだ。こんなのはチャンバラじゃないや。

オーソドックスな時代劇は夢のまた夢。年寄りには、ついていけないなァ。

 

RED SHADOW 赤影』(2001年/監督:中野裕之)

架空の世界(信長の時代を想定しているみたいだが)を舞台にした時代劇。ゲームの世界のノリに近いですね。

でもって、こんなのは時代劇じゃないや。チャンバラが全くできていない、こんな作品は願い下げです。

若者うけを狙ったのかも知れませんが、1960年代の“赤影”にシビれたオジさん連中には、評判悪いだろうなあ。私は“赤影”世代より前の、“隠密剣士”世代なので、“赤影”にそれほど思い入れはないのですが、それにしてもねェ。

怒りの大放屁、チャブ台返し!

 

『陰陽師』(2001年・東宝/監督:滝田洋二郎)

鬼や魔物の存在が不思議でなかった平安時代。陰陽師の安倍晴明(野村萬斎)は、都におきつつある異変を感知し、その元凶である陰陽師頭の道尊(真田広之)と戦いを開始する……

怨念の力より愛の力の方が勝るという、手垢のついたようなテーマを、CGを駆使してテライもなく描いていますね。

真田広之は、動きは良いのですが、怨念の塊といった感じが出ていません。『陰陽師U』の中井貴一の方が悪役にはむいているかも。

野村萬斎の濃いめの顔は、いかがわしきヒーローにピッタリ。動きも美麗いだし、萬斎と真田広之の立回りは、もっと見せてほしかったですね。

小泉今日子、岸部一徳、柄本明の脇役陣も良し。

 

『陰陽師U』(2003年・東宝/監督:滝田洋二郎)

太陽が突如黒くなる“日隠れ”が起こり、宮中に人肉を喰らう鬼が現れる。安倍清明(野村萬斎)は藤原安麻呂(伊武雅刀)から、毎夜さまよい歩く娘の日美子(深田恭子)が怨霊に祟られているのではないかとの相談を受ける。同じ頃、源博雅(伊藤英明)は琵琶を弾く少年・須佐(市原隼人)と出会い……

大和朝廷が出雲族を滅ぼしたという古代史と神話をリンクさせた魔界物語。

中井貴一に前作の真田広之以上の悪役を期待したのですが、見事に肩すかしをくいました。奇跡を起こして人々から神のように崇められる男なんて、胡散臭さ満点で、これはイケルと思ったのですがねェ。残念ながら前作の出来には遠くおよびませ〜ん。

 

『大帝の剣』はSF時代劇(2007年4月)

時は江戸時代初期、万源九郎(阿部寛)は三種の神器を求めて旅をしていた。源九郎は神器の一つ“大帝の剣”を所持しており、“ユダの十字架”は徳川幕府が、“闘神の独杵銛”は加賀の離れ小島に埋まっており、幕府が発掘作業をしていた。三種の神器を持つ者は無限のパワーを得ることができると云われていたからだ。ひょんなことから豊臣家の血筋をひく舞(長谷川京子)を助けた源九郎は、真田幸村(津川雅彦)から舞の護衛を頼まれる。真田忍者の佐助(宮藤官九郎)を加えた3人は加賀に向かうが、行く手には徳川忍者・破頭坊(竹内力)の一味が待ちかまえていた……

ハリウッドほど金がかかっていないのでSFXが見劣りするのは仕方ないにしても、物語の設定がいい加減なのはガマンできません。三種の神器が何故日本にあるのか、源九郎が何故選ばれたものなのか、謎の美剣士・牡丹(黒木メイサ)は何のために登場したのか、荒唐無稽な話でも、そのへんはキッチリしておかないとね。

俳優たちは遊び心で演じており、特に宇宙人に乗り移られた猟師役の遠藤憲一と、真田の初老忍者役の本田博太郎は見ていてこちらが楽しくなるくらいノリノリしていましたよ。

堤幸彦監督には申し訳ないですが、タダ券があったので観ただけで、金を出してまで観る映画じゃないで〜す。

 

 

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