まとめて市川雷蔵


おけさ唄えば(1961年・大映/監督:森一生)

旅の途中で黒姫一家の子分に絡まれているお君(三木裕子)を助けた千太郎(市川雷蔵)は、男姿で旅をしているお勝(水谷良重)と道連れになる。そして、お勝の父親・勘治郎(中村鴈治郎)の一家にワラジを脱ぐと、そこにはお君が捜していた半次(橋幸夫)がいた……

悪党志願していても、根が正直者の好人物という役柄に市川雷蔵はピッタリ。極悪非道の悪親分を裏切った自分は、もっと悪党だ、といってニッコリするところは爽やかでライサマらしくて良いです。

当時人気歌手だった橋幸夫を客寄せとして作られた作品で、内容を云々しても始まりません。橋幸夫と雷蔵を見て、ファンが喜べばそれでいいのです。

それにしても中村鴈治郎は巧いなァ。

 

花の兄弟(1961年・大映/監督:池広一夫)

父の仇を求めて旅をする香山市之進(市川雷蔵)は、旅籠で手がかりをつかみ、ヤクザの親分・大津の勘右衛門(石黒達也)の一家に草鞋をぬぐが、そこには9年前に別れたきりの弟・新次郎(橋幸夫)がいた。仇の行方をつきとめるためにヤクザ修行をしているうちに、勘右衛門の娘・お玉(水谷良重)に惚れられてしまう。勘右衛門の縄張りを狙っている横木の剛八がお玉を嫁に欲しいといってきたことから……

橋幸夫の歌に始まり、橋幸夫の歌に合わせて桜の小枝を持って踊るラストまで、大衆時代劇そのものといった作品です。雷蔵がヤクザ一家で花畑三四郎なる偽名を使いますが、『用心棒』ギャクですね。クレージー・キャッツのギャグが出てきたり、大衆演芸の世界ですよ。芸術性は皆無ですが、この手の映画を演出させたら、池広監督はソツなくこなしますね。

 

弥太郎笠(1957年・大映/監督:森一生)

旗本の家に生まれながら武士を嫌ってヤクザになった弥太郎(市川雷蔵)は、松井田の宿でヤクザ稼業から足を洗って紬の織工場を営んでいる虎太郎(清水元)の一家の世話になる。虎太郎にはお牧(矢島ひろ子)という愛人がいたが、お牧は松井田の縄張りを狙っているお神楽の大八(柳永二郎)ともできていた。弥太郎は心惹かれた虎太郎の娘・お雪(浦路洋子)のために、親友である八州出役の桑山盛助(夏目俊二)に頼んで、虎太郎がお牧と別れるように仕向け、松井田を旅たつ。桑山は宴席で、お牧の正体をばらし、虎太郎はお牧と別れるが、恥をかかされた大八は、浪人・平井九馬(石黒達也)を雇って虎太郎を殺す。平井九馬はお雪に横恋慕し……

付け睫毛・白塗りの市川雷蔵の典型的二枚目映画。演出の妙なんて、ありません。キレイな雷蔵を見るだけの作品ですね。雷蔵を助ける女賭博師役で木暮実千代が出演していますが、原作は男じゃなかったかなァ。

とにかく、登場する女性全員に惚れられるという二枚目で〜す。

 

鬼火駕篭(1957年・大映/監督:弘津三男)

老中と結託した隣藩の六郷弾正に領地を奪われた天童藩は、家老の篠原兵之進を大目付への使者として送るが、江戸に到着するや六郷弾正に雇われた刺客・山田剛右衛門(細川俊夫)に殺される。兵之進と同道していた娘・琴江(中村玉緒)はショックで発狂し、歩き回っているところを瓦版屋の月太郎(市川雷蔵)に救われる。江戸屋敷にいる琴江の兄・兵馬(林成年)と琴江の許婚者・御手洗伴次郎(和泉千太郎)は、六郷弾正の悪行を老中に訴えるが、逆に老中の家来に追われ、これまた月太郎に助けられる。山田は、芸者をしている妹の染次(嵯峨三智子)を月太郎に近づけるが……

一言で言えば勧善懲悪の平凡な時代劇。雷蔵は二枚目ですが、もてるのは嵯峨三智子に対してだけ。この頃の嵯峨三智子ってホントに綺麗で、私ならそれだけで十分ですけど。でもって、作品の見所は、う〜ん、ないなァ。

 

月姫系図(1958年・大映/監督:渡辺実)

武田家の埋蔵金の在処がわかるという風・林・火・山の四枚の枝折を巡って展開する伝奇時代劇。将軍家の隠密・酒井進太郎(市川雷蔵)は、大久保長安(小沢栄太郎)の悪事を探っているうちに、謎の黒覆面に襲われている雪絵(田代百合子)を救う。雪絵は旗本・水町三郎太(中村鴈治郎)の娘だったが、年に一度三日月堂で月姫と会うのが習慣となっていた。その月姫を警護しているのが、武田の遺臣で……

最初から“山”の枝折を持っている主人公の素性が不明なのですが、角田喜久雄の原作はその辺が明解になっているんですかね。謎とイイカゲンは違いますよ。当時の日本映画の最大の欠点は、娯楽映画だから細部にこだわる必要がないといった気持ちで作られていることですね。この作品だって作り方次第では、もっと面白くなったと思うのですが……

 

鬼斬り若様(1955年・大映/監督:安田公義)

旗本・蜻蛉組は大老・酒井雅楽頭の権力を笠に町中で横暴な振るまいをしていた。女スリのおれん(水戸光子)は、そんな蜻蛉組にやり方に腹を立て、頭領・跡見八郎太(羅門光三郎)のサイフを掏り取る。八郎太に追われ、逃げ場を失ったおれんを助けたのは、松平長七郎(市川雷蔵)だった。サイフの中から百合の局(八潮悠子)暗殺の密書を発見した長七郎は、百合の局を救出するために箱根に向かう……

雷蔵は品が良いので、この手の貴種流離譚の主人公が似合っていますね。ただ、デビューしてから1年も経っていない頃の作品なので演技は青臭いです。チャンバラも腰が決まっておらず、ヘナヘナ、ヨタヨタ。敵役の羅門光三郎の方が、はるかに強く見えま〜す。

 

 

 

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