まとめて市川雷蔵


花の白虎隊(1954年・大映/監督:田坂勝彦)

官軍が会津国境にせまり、藩校・日新館で学ぶ篠原準之助(市川雷蔵)たちも武器を取って戦場へ行かねばならなくなった。官軍に囲まれた味方部隊を救うべく白虎隊は出陣するが、官軍の最新兵器の前に仲間が次々に倒れていく。生き残った白虎隊士は飯盛山に集結し……

市川雷蔵の映画デビュー作品。他にも新派の花柳武始、長唄の勝新太郎がこの作品で映画デビューしました。

中でも雷蔵が際立っていますね。演技は巧いし、キレイだし、華があります。御曹司たちの出演がウリなんでしょうが、内容も悪くありません。白虎隊が特攻隊的で、太平洋戦争の記憶とダブラして観た人が、当時は多くいたでしょうね。ある意味では反戦映画かも……

 

 

旅は気まぐれ風まかせ(1958年・大映/監督:田坂勝彦)

 市川雷蔵と根上淳の旅がらすが、家出した大前田英五郎になりすまして悪党ヤクザをやっつける物語。二人の正体は……

雷蔵が手品好きの旅人を演じたコミカル時代劇。未見の映画だと思っていたら、子どもの頃、雷蔵ファンだった母親と見た映画でした。

「力まかせに打ちこんだら、相手が防いだ木刀もろとも、相手の頭を打ちすえてしまった」というセリフは、今でも憶えているもの。題名を忘れていたが、この映画だったんだ。

セリフの面白さは、さすが小国英雄の脚本で〜す。

 

千羽鶴秘帖(1959年・大映/監督:三隅研次)

 金山の公金横領の事実を記した羅針儀を巡って、謎の怪盗(市川雷蔵)が大暴れ。

黒と白との背景画が、交互にめくられるタイトルがモダンで、どこかで見たことがあるぞ。そして、折り鶴を染め抜いた白黒の着物を着た雷蔵が画面に現れた時、この映画も大昔に母親と見た映画だったことを思い出しました。

 カミさんも、見たことがあったらしく、「雷蔵が凧に乗って、金の鯱鉾を盗りにいくのよねえ」と、途中で口をはさんできた。

 映画的には、どうってことのない作品ですが、雷蔵は二枚目が似合うなァ。

 

江戸へ百七十里(1962年・大映/監督:森一生)

市井に暮らしていた長谷部兵馬(市川雷蔵)は、津山藩の若殿・亀之助(市川雷蔵の二役)の双子の弟だった。お家騒動から亀之助が毒殺されそうになり、亀之助が回復するまでの間、身代わりとなって将軍家の娘・福姫(嵯峨三智子)と見合いをする。福姫は兵馬を気に入り、婚約の許可を受けるために江戸まで旅をすることになり……

山手樹一郎の原作を笠原良三が脚色。双子の兄弟が身代わりになって、お家乗っ取りを企む悪家老をやっつける話は毎度おなじみです。

雷蔵は気品があるので、この手の貴種流離譚がよく似合います。嵯峨三智子は唇を整形して変な顔になっていたなァ。

剣の好敵手の名前が宍戸丈之進というのは、宍戸錠からきていると思うのですが、原作がそうなっているのですかね。主人公の好敵手の代名詞になるくらい、当時は日活アクションでの宍戸錠のイメージが強烈だったということでしょう。

 

大殺陣・雄呂血(1966年・大映/監督:田中徳三)

隣藩の侍を斬った家老の息子の身代りとして、1年の約束で脱藩した古布施拓馬(市川雷蔵)は、藩から帰参の約束を反故にされた上、上意討ちの追手をさしむけられる。隣藩からも斬られた侍の兄が、拓馬を仇として追っていた。さらに、傲岸不遜の代官を斬ったことから、代官所の役人からも追われ……

バンツマの名作『雄呂血』のリメイク。純真な男が人々の誤解から社会に対して孤独な戦いをせざるを得なくなるバンツマ版に対して、組織に裏切られた男の孤独な戦いへと設定を変えていますが、物語展開が粗っぽく、映画的価値からみると前作には及ぶべきもありません。

だけど、ラストのムチャクチャな立回り(百人以上を相手にしたチャンバラ)にはカタルシスを感じましたよ。雷蔵は腰から下が弱くて、立回りに安定感を欠くのですが、疲労困憊して転がりまわりながら斬る殺陣は凄絶で、上位ランクに位置付けることができるチャンバラだと思います。それと伊福部昭の音楽が、重厚な中に悲壮感をたたえ、チャンバラシーンにマッチして効果をあげていましたよ。

未見の作品でしたが、意外な掘出物でしたね。公開当時より、リストラに切り捨てられる会社人間が多くいる現在の視点でみる方が、評価がアップするんじゃないかなァ。

 

 

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