(1932年・松竹)
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(スタッフ) 監督:衣笠貞之助 脚本:衣笠貞之助 撮影:杉山公平 音楽:塩尻清八 |
(キャスト) 浅野内匠頭:林長二郎 大石内蔵助:坂東寿三郎 吉良上野介:上山草人 瑤泉院:川崎弘子 脇坂淡路守:市川右太衛門 大野九郎兵衛:岩田祐吉 不破数右衛門:斎藤達雄 不破の妻:飯田蝶子 吉田沢右衛門:林長二郎 八重:田中絹代 |
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大石瀬左衛門:高田浩吉 勝田新左衛門:坂東好太郎 浮橋太夫:八雲恵美子 垣見五郎兵衛:市川右太衛門 千坂兵部:藤野秀夫 清水一角:中村吉松 るい:岡田嘉子 |
“忠臣蔵”映画の最初のトーキー作品であるとともに、日本で最初の長編トーキー映画でした。封切り当時は前後篇で3時間半を越えるものでしたが、私が観たのは東京フィルムセンターが所蔵している139分のダイジェスト版で、おまけに『赤垣源蔵』(1938年・日活)のフィルムが挿入されているという不完全なものです。ブツ切れ状態で物語展開もわからず、セリフも半分以上聞き取れませんでしたが、演出面での工夫は随所に見られましたね。真上から撮った勅使の列が松の廊下を行くシーンは素晴しいですよ。 サイレント時代の“忠臣蔵”は人気スターが一人で何役も演っていましたが、この作品でも長谷川一夫(当時は林長二郎)は浅野内匠頭と吉田沢右衛門の二役をしています。前編では浅野内匠頭を中心に、後編では吉田沢右衛門を中心に物語が展開しますから、大石内蔵助の坂東寿三郎が主役でなく、長谷川一夫の“忠臣蔵”といってもよいですね。長谷川一夫と並ぶ人気スターだった市川右太衛門も脇坂淡路守(前編)と垣見五郎兵衛(後編)の二役をしています。応援出演(右太衛門は右太プロを作って独立していた)なので、“忠臣蔵”ではお馴染みの儲け役ですな。 ところで、後編の物語の中心となる吉田沢右衛門は他の“忠臣蔵”では馴染みのない人物ですが、内容は岡野金右衛門でお馴染みの“恋の絵図面取り”でした。町人として暮らしていた沢右衛門が吉良家の女中・八重(田中絹代)と愛しあうようになるんですな。沢右衛門は八重から吉良家の間取りを聞き出します。八重の姉・るい(岡田嘉子)が沢右衛門を怪しみ、愛人の清水一角に告げると、一角は沢右衛門を捕まえて拷問しますが、危機一髪のところを八重が沢右衛門を逃がします。そして、吉良家の茶会の日を沢右衛門に教え、赤穂浪士は本懐を遂げるのです。討入りの成功は全て吉田沢右衛門の活躍によるものとなっており、真に主役となっていま〜す。 |
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敵を欺くために祇園で遊ぶ大石内蔵助。 浮橋太夫(八雲恵美子)と内蔵助(坂東寿三郎) |
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討入りのため、近衛家用人・垣見五郎兵衛と偽って江戸に向かう内蔵助の前に現れた本物。 垣見五郎兵衛(市川右太衛門)と内蔵助(坂東寿三郎) |