アキラ映画


『やくざの詩』(1960年・日活/監督:舛田利雄)

やくざに恋人を殺された滝口哲也(小林旭)は犯人を追って横浜にやって来る。手がかりは、恋人を射った拳銃がゲルニカという日本では珍しい拳銃だったことだ。そして、ヤクザ同士の対立がある所に必ずゲルニカの銃弾が残されていた。哲也は黒沢組と対立している佐伯組のクラブでピアノ弾きとして雇われるが……

アキラと仇の兄・二谷英明、二谷英明と弟・垂水吾郎、垂水吾郎と愛人・南田洋子、南田洋子と義弟・和田浩二といった登場人物の全て関係が情念で結びついている現実ではありえない世界なのですが、徹底すると逆にリアル感を持ってくるので不思議です。劇中でアキラが歌う主題歌と相俟って、アキラの陰の部分が見事に活かされており、傑作といえるでしょう。

全体の音楽は黛敏郎ですが、アキラが歌う主題歌は中村八大の作曲です。アキラが弾くピアノを吹替えて演奏しているのもね。

 

『日本最大の顔役』(1970年・日活/監督:松尾昭典)

大矢根組三代目の黒木和也(小林旭)は、終戦直後の神戸の町で無法の限りをつくす三国人と戦っていた。大矢根組の倉庫が金山(宍戸錠)率いる三国人に襲われたことから、壮絶な市街戦に発展する。進駐軍の追及を受けた黒木と金山はそれぞれ旅に出るが、旅の途中で黒木が金山を助けたことから、二人は心を許す仲となる。朝鮮戦争がはじまり、黒木は進駐軍が撤退した神戸に戻ってくるが、北川(安部徹)率いる陣野組が盛り場を押さえていた。黒木は港湾労働者の待遇改善を船会社と掛け合い、港湾荷役は大矢根組が受けもつことになる。黒木の台頭に、北川は黒木を殺そうとするが……

モデルは明らかに山口組三代目・田岡組長ですね。内容的には、きれい事に終始して気に入りませんが、後年アキラが“仁義なき戦い”シリーズで見せたヤクザ組長の貫禄を、この作品から感じることができました。

 

『赤道を駈ける男』(1968年・日活/監督:斎藤武市)

伊吹(小林旭)は恋人・玲子(若林映子)のためにヤクザの足を洗おうとしていた。最後の仕事である宝石の密輸取引で、仲間の佐伯(郷^治)に宝石もろともボートを爆破されてしまう。貨物船に救助された伊吹は宝石を持って、ブラジルへ逃れる。5年後、玲子は伊吹のボス・岸田(金子信夫)と結婚しており、岸田はリオのボス・ペドロ(内田朝雄)との密輸取引のためブラジルへやって来る。週刊誌の写真で伊吹を見つけた宗方刑事(丹波哲郎)は、伊吹を逮捕するためにブラジルへ。途中の機内で、夫のところへ行く玲子と知り合うが……

小林旭百本記念作品であるとともに、自社プロダクション(アローエンタープライズ)による第1回製作作品です。ブラジルに長期ロケしたりして金をかけているのはわかるのですが、登場人物の行動に常識ハズレが多いのは困りものです。無国籍アクションというムードだけで作られていますね。

イグアスの滝での、アキラのライバル役であるリオのボスに雇われている殺し屋(内田良平)との決闘シーンなどの見せ場はあるのですが、伏線が張られていないので全てにおいて唐突で〜す。

 

『南国土佐を後にして』(1959年日活/監督:斎藤武市)

刑期を終えて出所した譲司(小林旭)は、母と暮らすために故郷の高知に帰ってくる。しかし、譲司のダイスの腕を惜しむ、昔の仲間の会津(二本柳寛)とベレー(西村晃)が譲司の前科をバラし就職できない。父親の借金をかたに結婚を迫る北村(内田良平)から、恋人の春江(浅丘ルリ子)を救い、再び東京に戻ってくるが……

『夜霧の第二国道』と同じように、ペギー葉山のヒット曲に便乗した歌謡アクション映画です。恋人のために、封印した過去の特技を使うというのは、『女を忘れろ』と同じパターンですね。

この作品では地方ロケが加わり、アキラの基本パターン(歌・アクション・ギャンブル・ヒロイン・地方ロケ)がほぼ出揃いました。『ギターを持った渡り鳥』でライバルが登場し、アキラ映画が完成するんですね。

歌謡映画といっても川内康範の脚本はしっかりしており、アキラも魅力的で悪くない出来で〜す。

 

『太陽、海を染めるとき』(1961年・日活/監督:舛田利雄)

二等航海士の北川(小林旭)は、ブラジル航路の貨客船に採用されて港町にやってくる。そこへ商船大学時代の友人・大森(垂水悟郎)が現れ、船員手帳を盗んで北川になりすます。大森はヤクザの金600万円を盗み、恋人の冴子(白木マリ)と高飛びしようとしていたのだ。しかし、大森を追ってきた殺し屋が地元の顔役・飯岡に協力を求め、船の出港を止める。睡眠薬で眠らされていた北川も船に駆けつけ……

パターン化されたシリーズものではないのですが、ケンカでデイト的関係の浅丘ルリ子、ヤクザと結託してアキラが働く海運会社を潰そうとするライバル会社の専務(安部徹)といった毎度お馴染みの日活キャラによるアクション映画です。

海の男といっても海洋シーンはなく、その点は物足らないのですが、船乗り仲間との荒っぽい友情はこれまで見られなかった魅力がありました。それと、ズボン姿でボーイッシュな浅丘ルリ子が、アキラを好きになってワンピース姿で現れた時のハッとする可愛さね。

ところでこの作品は広島ロケしているのですが、ロケを見ようと駆けつけたら、すでに終わっていたという悔しい思い出があります。アキラが垂水悟郎と話しをする貯木場は、私が住んでいた近くにあったんですよォ。

 

 

 

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