『望郷の海』(1962年・日活/監督:古川卓巳)
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ボクサーの清(藤竜也)は試合で竹村(郷鍈治)に勝つが、その夜、トレーナーの雄志(小林旭)の恋人(松尾嘉代)との心中に見せかけて殺される。井沢(深江章喜)の八百長依頼を断ったためだ。半年後、殺人現場を目撃して発狂した竹村の妹せつ子(松原智恵子)からその事を聞いた雄志は、復讐のために井沢を追って地方の港町に向かう。その町は井沢の兄(金子信雄)が支配しており、雄志は命を狙われる。警察が動き出し、井沢は自分が死んだことにして、姿をくらまそうとするが…… さすらいヒーローのような叙情性ある題名ですが、純然たるハードボイルド・アクションで内容と題名が全然関連していません。アキラは劇中で歌うことなく、孤独なリベンジャーを演じており、“渡り鳥”シリーズ終了後のイメージ払拭的意味合いのある作品になっていますね。少し設定にムリがありますが、悪くない作品で~す。 ところで、主題歌「男のバラード」はレコード化されていないんだよなァ。 |
『嵐を呼ぶ友情』(1959年・日活/監督:井上梅次)
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伝説のジャズマンとして名をはせた旗(宇野重吉)も老いて技量が落ち、今は場末のクラブでトランペットを吹いていた。息子の稔(小林旭)は家を飛び出しており、そんな彼の慰めは、一緒に暮らしている稔の許婚者・千秋(浅丘ルリ子)と、師匠おもいの二人の弟子・岡部(沢本忠雄)と川添(川地民雄)だった。二人はジャズ喫茶の人気トランペッターで、親友でありライバル。二人はお気に入りの踊り子マリ子(白木マリ)の楽屋で“流しのアキラ”と呼ばれる男と喧嘩する。アキラが旗の息子・稔とわかり、喧嘩を通して友情がうまれる。二人は稔に旗のもとに帰るように勧めるが、稔は家を飛び出した理由を打ちあけた。音楽評論家の児玉(金子信雄)は稔の才能を見出し、岡部と川添に稔を楽団に入れるよう提案する。同棲していたマリ子は、稔が更生するには楽団入りしかないと考え、愛想づかしして稔と別れる。楽団に入った稔はジャズギターの腕を磨き…… 登場人物が全員善人でドラマ的葛藤の薄い作品です。単なるボタンのかけ違いからくる父子の誤解ですからね。題名からわかるように、1958年の正月映画『嵐を呼ぶ男』で石原裕次郎をスーパースターにした日活が、小林旭を売り出すために二匹目の泥鰌を狙って企画した正月映画でしたが、面白味の欠ける内容です。 アキラは劇中で「いとしの恋人」と「パパの歩いた道」を歌い、この映画で初めて歌うスターとなりました。レコードデビューは次作の『女を忘れろ』ですけどね。それまでのナイーブな不良青年というキャラを踏襲しており、裕次郎のような爆発的ブレークはしませんでしたね。アキラがスーパースターになるのは、“渡り鳥”シリーズからね。 それから、アキラが『嵐を呼ぶ男』で観客の一人としてワンカット出演していた(クレジットなし)のと同じように、赤木圭一郎が端役で出演(セリフは一言)していることは見逃せません。赤木圭一郎は60年からダイヤモンドライン入りしますからね。内容よりも他の与件に興味がひかれる映画で~す。 |