アキラ映画


『踏みはずした春』(1958年・日活/監督:鈴木清順)

緑川奎子(左幸子)は、非行少年や少女を兄や姉の立場にたって更生させるBBS(ビッグ・ブラザース・アンド・スターズ)の一員だった。彼女の最初の相手が信夫(小林旭)だった。信夫は父親殺し未遂で少年院から出たばかりだった。奎子は危ないめにあっても怯まず、信夫も奎子に親しみを持ってくる。奎子は信夫が中学時代の同級生・和恵(浅丘ルリ子)を好いていることを知り、和恵に信夫の荒んだ心を癒して欲しいと頼む。和恵も信夫のことが好きで、和恵のやさしい気持ちに信夫は立ち直っていく。しかし、信夫と対立していた不良の梶原(宍戸錠)が和恵に目をつけ……

反抗心は強いが純情な心を持った不良少年を小林旭が好演。それ以上に、姉の気持ちでアキラに接していたはずが彼を愛してしまい、ルリ子とアキラの仲に嫉妬を抱く女心を見事に表現した左幸子が良いですねェ。

ところでBBS運動って、どの程度の規模で、いつ頃まで行われていたのですかね。この映画を観て、初めて存在を知りました。素人が熱意だけで、不良を更生させるなんて、相当難しいと思いますよ。

 

『青い乳房』(1958年・日活/監督:鈴木清順)

高校生の宏(小林旭)は、父の前では継母の容子(渡辺美佐子)に好意を持っているように見せていたが、裏では金を巻き上げてジャックの健(小高雄二)のジャズ喫茶“フォンテーヌ”で遊んでいた。ある日、宏は母親に反抗して家出した女子高生の節子(稲垣美穂子)と知り合い、“フォンテーヌ”に連れていく。健は節子をエロ写真のモデルにしようと目をつける。一方、容子は宏から受け取った展覧会の招待状に覚えがなかったが、行ってみると7年前に何者かに犯された場所の風景画が展示されていた。ショックでフラつく容子を介抱したのは、その絵を描いた高村(二谷英明)という画家だった……

この頃のアキラって、ナイーブな心を持った不良という、一つの定型パターンが出来上がっていますね。登場人物の行動様式が、あまりにも古風なので、現在の視点で見るとついていけません。時の経過に耐えない作品といえます。

 

『太平洋のかつぎ屋』(1961年・日活/監督:松尾昭典)

日新航空のパイロット・立花(小林旭)は、ホノルル空港で事故を起こして積荷を炎上させる。原因は操縦していたパシフィック・ポーターズ(P・P)のジムにあったが、査問会でのジムの嘘の証言により日新航空を解雇される。立花がジムを詰問するためにP・Pの事務所を訪れると、宮崎航空大学で同期だった杉江(宍戸錠)が憎悪に燃えて喧嘩をしかけてきた。事故で顔に傷を負った杉江は、世を拗ねてP・Pで働いていたのだ。P・Pは食い詰めパイロットの集まりで、支配人のアンディ・白井が立花に入社を勧めるが、立花はそれを断る。立花は航空大学の品田学長(二本柳寛)のはからいで、大学の教官として地上勤務につくが、大空への夢は絶ちがたく再び上京する。しかし、事故前科のあるパイロットに職がなく、意を決して立花はP・Pに入る。立花を想う品田の娘・典子(浅丘ルリ子)が、父の反対を押しきって上京してくるが……

アキラとジョーがこの作品でも息のあった格闘を見せてくれます。しかし、何と言っても最大の見せ場は、嵐の海に不時着したジョーをアキラが救出するシーンでしょうね。日活の特撮技術もさることながら、アキラがスリル満点の航空アクションを見せてくれま〜す。

 

拳銃無頼帖・流れ者の群れ』(1965年・日活/監督:野口晴康)

組長を八絋会に殺された丸千組の麻島(小林旭)は、組長の遺言通り生き残った組員に資金を山分けしてヤクザから足を洗わせる。しかし、麻島はひとり復讐を誓っていた。八絋会の会長・貝塚(二本柳寛)は、麻島の復讐を恐れ殺し屋・暗闇の銀次郎(宍戸錠)を雇う。麻島と別れた円谷(葉山良治)は三宅と高崎でバーを始めるが、ふとしたことから地元のヤクザ・白虎会と諍いを起こす。そのことを知った貝塚は、殺し屋をさしむけるが、麻島が現れ円谷と三宅は難を逃れる。麻島を見つけた銀次郎は……

雇ったボスの汚いやり口を見て、殺し屋ジョーがアキラにほれ込み仲間になるのは、定例パターン。先の読める展開は日活アクションの特徴ですが、昭和40年ともなれば飽きられてきたでしょうね。

私はアキラとジョーが気持ちよく拳銃をブッ放しているのを見ているだけで満足なのです。殺し屋仲間の役で出演していた小笠原章二郎がいい味を出していましたよ。

 

『野郎に国境はない』(1965年・日活/監督:中平康)

バンコックで、国際警察の捜査官と謎の日本人の死体が発見される。国際警察の日本人特別捜査官・辺見真介(小林旭)が捜査を開始し、背後に偽ドル札偽造団があり、偽札は日本で製造されていることをつきとめる。日本に帰国した辺見は、プロの賭博師としてギャング団が経営するクラブへ潜入するが……

 スパイは美女と絡むべしの定石通り、アキラはアンジェラ浅丘、浜川智子、広瀬ミサと、よろしくラブラブ。事件が解決し、飛行機の中で富士真奈美をナンパするところでエンド。もちろん、スパイ小道具も出てきますよ。香水を噴霧すると鋼鉄の硬さとなるチューインガム。これで、合鍵やメリケンサックを作るのです。

作品の出来は並の下といったところですかね。シリーズ化されなかったのは、当らなかったからだろうけど、中平康はこの作品を香港のショウ・ブラザースで『特警009』のタイトルでリメイクしているんだよなァ。

 

『マカオの竜』(1965年・日活/監督:江崎実生)

“ヒマラヤの星”と呼ばれているダイヤを手に入れるためにマカオの竜(小林旭)が香港から横浜へやって来る。密輸団の塚田(佐野浅夫)によって日本に持ち込まれたが、海賊の会津(宍戸錠)によってダイヤは奪われていた。竜は街でチンピラに絡まれている奈美(十朱幸代)を救い、親しくなるが、奈美は会津のスパイだった。一方、塚田はダイヤが奪われたことを竜に知らせず、竜の金を狙うが……

伊部晴美のジャズテイストあふれる主題歌「赤い流れ星」はグッド。内容の方は、ウ〜ン。

アキラがギターを弾きながら劇中で歌うシーンのない真面目なアクションで、ジョーさんも『拳銃残酷物語』などで確立したハードボイルド的キャラを真面目に演じています。渡り鳥シリーズとは違った、アキラとジョーのコンビを模索しているのはわかるのですが、成功していませんね。内容が往年の無国籍アクションと変わりがないだけに違和感を持ってしまいます。やはり、アキラとジョーのコンビは渡り鳥シリーズがピッタリきま〜す。

 

 

 

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