名義について

 

○建築に関する「名義」には大きく2つに分けられます
いざ建物を建てようとしたときに必ず考えなければならないことのひとつに名義の問題があります。
ここで言う「名義」には、建築主に関する「名義」と、設計者等業者に関する「名義」とに分けられます。この2つの名義はそれぞれ持つ意味合いが違っているのです。

名義一つで、その後の税金や所有権についても決定されてくるのです。単独だけでなく、複数の方の連名にされる場合についても、事前に十分検討しておく必要があります。
1.建築主に関する「名義」
これについてはそんなに問題になることはないだろう、と思った方、それは違いますよ! 確認申請時や完了検査時には直接的には影響は表れませんが、実はその後に大きく影響してくるのです。それは所有権に関する問題です。

これは、建物が完工し登記する時に発生します。予め所有権を持つ方が建築主として確認申請並びに完了検査申請をして確認済証並びに検査済証を取得していれば問題はありませんが、何らかの事情で所有者として登記したい方のお名前がそれら公的書類に記載されていない場合には、その方のお名前では登記ができません。これは、建物登記の際には最低限確認済証並びに確認申請書の原本添付が必要になるからです。

もし確認を受けた後に登記したい名義人の方が変更になった場合には、完了検査申請書を申請する前までに速やかに【建築主等変更届】(※特定行政庁により名称は違うと思われます)等の書類を提出して、建築主の名義人を変更しておく必要があります。

不幸にして検査済証まで発行された後にこのような事態に至った場合、大部分の特定行政庁や指定民間確認検査機関では、残念ながらもう変更はできないものと思われます。


2.設計者等業者に関する「名義」

設計者や工事監理者等の、建築主以外のいわゆる業者等に関する「名義」とは、確認申請書の第二面に記載される表示のことを指します。そのうち、設計者・工事監理者・代理者の3つについて、「名義」との関わりを見ていきたいと思います。これら3つは同じ人(及び設計事務所)である必要はなく、各々個別に業務として別の事務所が請け負ってもよいことになっています。(詳細は[素朴な疑問Q&A]内の「設計をしてもらった設計事務所が........」の項目を参照してください) モチロン、3つとも同一の人であっても差し支えありません。

1)設計者の「名義」
設計者は、普通の場合建築主様から依頼を受けた建築士及び建築士事務所がその資格を用いて設計するため、必然的に【設計者】欄に記載される設計者となります。

例外として、例えば住宅メーカーに頼んだ場合などで、一度も面識のない方の名前で(モチロンその住宅メーカーの社員ではありますが)【設計者】欄に記載されている場合があります。この場合、住宅メーカーそのものが建築士事務所登録をしているので問題はありません。

問題なのは、小さな工務店等の、建築士事務所登録をしていない会社に依頼した場合です。このような場合、その会社単独では設計を行うことができない(作業はできても確認申請書等の公の書類には載せられない)ため、外部の設計事務所に設計を依頼するようになります。

要は、ある物件の設計内容に関して、誰が責任を持つのかということを明確にするのが設計者の名義である、と言えます。


2)工事監理者の「名義」
工事監理者の「名義」に関しても、そのカバーする責任範囲が異なるだけで、意味合いは設計者の名義と同じです。誰が正しく工事監理をし、工事監理した内容を責任持つ者は誰なのか、を公的に明確にするものなのです。


3)代理者の「名義」
代理者の「名義」は、他の2つに比べるとそんなには重要視されていません。これは、確認申請等の際に、申請者(=建築主)に代わって誰が申請書を作成し、誰が役所の窓口で申請・訂正・受領等を行うかを記すだけなのです。

ただし他の2つと決定的に違うのは、実際に申請に関する事務手続きを行う人なので、建築主様から委任された人である証(委任状)が必要になります。


○「名義貸し」とは?

これは建築主様の「名義」についてはほとんど聞いたことがありませんので、「名義貸し」が問題となるのは設計者等業者に関する名義の場合でしょう。

業者に関する名義で「名義貸し」とは、本来はその資格を有していない人のために、他の有資格者が「自分の名前を使って仕事していいよ」というように名前だけ便宜上貸すことを言います。わかりやすい例で言うと、......



建築士がいない工務店が建築士を雇い入れないまま設計事務所登録をしたいので、社員でもない外部の建築士がその資格を工務店に貸している


設計事務所登録をしていない工務店が施主様と打ち合わせ、それを設計事務所に図面を引かせ、実際には工務店が行っているのに設計事務所が設計したものとして確認をとる


実際には現場には行かずに到底十分に監理できるとは思えないのに、名義だけ便宜上「工事監理者」として貸してくれ、と頼まれて記載してある
..........などなど。まだまだ他にもいろいろなケースがあるかと思いますが、いかがです?どう考えてもおかしなものばかりでしょう?

建築士法の改正で罰則規定が厳しくなったのに伴い最近はだいぶ減ってきたようですが、小さな工務店や大工さんなど、建築士法にあまり気を留めてもいないような人たちの間ではまだこのような要求をしてくるところが見受けられます。


なお建築士法上では、「名義貸し」を次のようなこととしています。
名義貸し
建築士が、業務を行う意志がないのにもかかわらず、自己の建築士としての名義を、建築確認申請書等における申請代理者、設計者、工事監理者等として記載することや、建築士事務所の管理建築士として使用することを許すような場合
ちなみに、

名義貸しは懲戒処分ランク6(業務停止3月)の重度の違反です!