建築士と設計について

 

○建築士?設計士?
よく、「設計士に設計を頼んだヨ」とか「設計士の先生が........」とか耳にしますが、設計士って何でしょう?○○士と“士”がついているから資格なのでしょうか?いいえ。日本においてそのような資格は存在していません。俗に「図面を書く人」「設計屋」などの意味で安易に使われていることが多いようです。

実は私たち建築士は、“設計士”と呼ばれることを内心快く思っていません。先に述べたような、「ただ図面を書く」だけが仕事ではないからです。図面は、広範囲に渡る設計のあくまでも成果図書なのであり、そこに至る過程の“設計”を業としているからなのです。

建築物の設計をすることができる資格は、【一級建築士】【二級建築士】【木造建築士】の3つしかこの日本にはありません。

「そうは言っても、大きい会社の設計担当や設計事務所の所員なんかは
無資格の人もいるんじゃないか!?名刺にも書いてなかったぞ。」


確かにその通りです。私もサラリーマン時代、プレハブ住宅会社の設計担当として“無資格”時代がありましたから。

でもご安心下さい。そのような場合には、実は別に有資格の『設計者(=建築士)』がおります。実務を担当している設計担当は、あくまでも設計補助(実務作業)をしているだけで、設計責任は『設計者』となるのです。設計内容の責任を負うわけですから、当然担当が行った設計内容のチェックもしているはずです。

ただこれらのようなことが社会的にもあまり知られていないために、“設計士”なる用語が生まれてきた一因になっていると私は考えています。


○建築士とは?
では建築士とはどんな資格なのでしょう?
建築物の設計はもちろんですが、建築物の工事監理についても独占的業務として行える
国家資格なのです。

建築士には
一級建築士】【二級建築士】【木造建築士】とあり、下の表のようにそれぞれ行える範囲が定められています。
    構   造

木 造 建 築 物

木 造 以 外

    高さ・階数  平屋建   2階建   3階建  高さ13m超
  又は
軒高9m超

高さ13m以下
かつ
軒高9m以下

高さ13m超
  又は
軒高9m超

 平屋建 
・2階建

3階建以上



   30u以下              
 30u超100u以下              
100u超300u以下              
300u超500u以下              
 500u超
1000u以下
一般              
特建              
1000u超 一般              
特建              
注:







無印

誰にでも設計できます
 
木造建築士以上の資格が必要
 
二級建築士以上の資格が必要
 
一級建築士の資格が必要

特建

特殊建築物のことです
ここで「おや?」と思われた方もいらっしゃると思いますが、建築士の資格を持っていなくても設計・工事監理できる範囲があるのです。木造2階建で延べ面積が 100u以下であれば、お施主様ご自身で設計してご自分で確認を取ることも法的には可能です。

しかし現実的には、建築に関しての知識を持たない一般の方が構造的にも法規的にもさらには住宅の性能的にも満足する建物を設計できるとは考えにくいので、一般には建築士に依頼するのがよいでしょう。


なお、【一級建築士】は国土交通大臣(旧:建設大臣)の、【二級建築士】【木造建築士】は都道府県知事の免許を受けて業務を行っています。他の建築関連の“国家資格・公的資格”と呼ばれるものと違って、建築士だけは国土交通大臣・都道府県知事が直接発行する免許証です。他のものは免許ではなく、『認定書』等となっています。


○設計とは?
では“設計”とは何でしょう?これを要約すると次の通りです。
設計とは(建築士法第2条第5項)
   その者の責任において設計図書を作成することをいう。
設計図書とは(建築士法第2条第5項)
   建築物の建築工事実施のために必要な図面(現寸図その他これに類する
   ものを除く)及び仕様書をいう。
わかりやすく表現するならば、建築主の意図を十分理解した上で基本構想をまとめ、法的・構造的・性能的な検討を踏まえ各部の納まりを検討した上で、工事の実施に必要な設計図書を作成すること、と言えるでしょう。

具体的な業務の進め方や設計手順については次のページで解説していますので参考にどうぞ。
                                            ⇒⇒ [設計事務所の業務とは?