住宅瑕疵担保履行法ってなんだろう?

 

住宅瑕疵担保履行法って?
最近よく耳にする「住宅瑕疵担保履行法」ってなに?
正式な法律名は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」といいます。
略されて「住宅瑕疵担保履行法」と言われています。(平成19年法律第66号)

平成19年5月30日に公布され、平成21年10月1日に本格施行された新しい法律です。
※法律の一部は平成20年4月1日から施行されています。

どんな法律なの?
大きく分けて2つの柱からなる法律です。その2つの柱とは、



新築住宅において、住宅事業者が瑕疵担保責任を履行するために住宅事業者に対して資力の確保を義務付ける

保険契約を締結した新築住宅に係る紛争処理体制の整備
となっています。

法律制定の背景には、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)」施行後、社会情勢等の変化に対応しきれなかったり、また構造計算書偽装問題も発生する中で瑕疵担保責任を負えないまま売主の会社が倒産したり解散してしまうケースが激増しました。そうなってしまうと、住宅取得者は修理や賠償を請求する相手がいなくなってしまいますから、自らの負担で別の工務店に依頼して修理せざるを得なくなってしまいます。これでは消費者保護のために設けられたはずの「瑕疵担保10年」の規定自体が形骸化してしまい、瑕疵担保責任不履行によって住宅取得者が泣き寝入りとなってしまっているケースが多発してしまいます。

そこで品確法に定められた瑕疵担保責任を確実に履行するための新たな法律として、住宅瑕疵担保履行法が作られました。ですからこの法律は、品確法を補完する目的で作られたと言ってもよいと思います。これにより、売主等が倒産等によって無くなってしまった場合でも、確保された資金によって住宅取得者の負担を軽減させることができます。

なおこの法律における「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもので、かつ、新築されてから1年以内のものをいいます。この定義は「品確法」と同じです。
従って建売住宅等で新築後1年以上売れ残ったものや中古住宅は対象になりませんのでご注意願います。


○瑕疵担保責任の履行のための資力の確保義務とは?
資力確保の義務を負う人は?



新築住宅建設を請け負う、建設業法の許可を持つ建設事業者
※住宅メーカーや工務店等の施工会社のことです



新築住宅を販売する宅地建物取引業者
※不動産屋さん等のことです
※以下、この2つを合わせて「住宅事業者」と呼びます。
となっています。住宅取得者から見て万が一にでも倒産されてしまったら困る業者さんが指定されていることになりますが、ここで指定されている業者さんは、品確法で定められている「瑕疵担保期間の10年の義務」が要求されている業者さんと同一です。

「資力の確保」の方法は?
資力の確保義務を負う住宅事業者は、次のいずれかの方法で資力を確保する必要があります。
保険への加入

住宅瑕疵担保責任保険法人が引き受ける住宅瑕疵担保責任保険に加入する
保証金の供託 法務局等の供託所に、現金や有価証券等を預け置く
どちらを選んでもいいのですが、「保証金の供託」の場合には最低でも2000万円(供給戸数によって増額されます)が必要となることから、現実的には戸当たり6〜8万円程度で済む「保険への加入」がほとんどとなるでしょう。なお保険での資力確保の場合の保険料は住宅事業者が支払うべきものとなっており、住宅取得者が負担することはありません。

なお住宅事業者は、請負または売買を引き受けた住宅に関し、どちらの方法で資力の確保を行ったか、またその確保した内容はどのようになっているか等の必要な事項を、事前に住宅取得者に書面にて説明しておく必要があります。

「資力の確保の義務」の対象となる建物の部分は?
対象となるのは、基本構造部分の瑕疵に限られます。基本構造部分とは次の部分のことです。またこの範囲は、品確法における「瑕疵担保期間の10年の義務化」で示されている部位と同一です。
 

基本構造部分

具体的部位

構造耐力上主要な部分※ 柱、梁、耐力壁、基礎、地盤、土台等の構造躯体

雨水の浸入を防止する部分 外壁や屋根の仕上、下地、開口部等

※構造耐力上主要な部分については[建築・設計 用語集]の「構造編」を参照してください。

「瑕疵担保責任」を負う住宅事業者が倒産した場合などはどうしたら?

住宅事業者が倒産していて補修が行えない場合等は、次のようになります。

保険への加入の場合 住宅取得者は、保険法人に直接保険金を請求することができるようになっています。
保証金の供託の場合 住宅取得者は、法務局等の供託所に還付請求をすることで、瑕疵部分の補修に必要な金額を還付してもらえます。



保険契約を締結した新築住宅に係る紛争処理体制の整備とは?
どんな制度なの?
上記の資力の確保手段2つのうち、「保険への加入」を行った場合に利用できる制度です。住宅事業者と住宅取得者との間で紛争が生じた場合、指定住宅紛争処理機関(弁護士会)による紛争処理手続き(あっせん、調停または仲裁)を利用することができます。また住宅紛争処理支援センターが指定住宅紛争処理機関をバックアップしており、住宅事業者や住宅取得者から相談を受けたり助言を行ったりしています。

なおこの制度は、品確法における「性能評価された住宅に関する紛争を処理する仕組み」と同一です。

 

指定住宅紛争処理機関を利用できる人とは?
紛争処理の申請者が保険契約付き住宅の当事者のどちらか一方であれば利用できます。具体的には次の通りです。
1. 保険契約付き住宅の建築業者(住宅事業者)
2. 保険契約付き住宅を建築業者に注文して取得した消費者(住宅取得者)
3. 保険契約付き住宅の売主(住宅事業者)
4. 保険契約付き住宅を売主(住宅事業者)から購入した消費者(住宅取得者)
5. 保険契約付き住宅を取得した人(住宅取得者)の相続人(配偶者や子)等

指定住宅紛争処理機関を利用できない人とは?
新築の保険契約付き住宅を取得した人からさらに転得した人は、その直接の売主に対しての請求について指定住宅紛争処理機関を利用できないこととなっていますのでご注意ください。

また保険によらない、保証金の供託によって資力の確保を行った場合の当事者も利用できません。

 

○他の法律や制度との関係は?
建築基準法との関係は?
この法律は品確法と同様、「建築基準法」とはまったく別の法律で、互いに干渉しません。

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)との関係は?
この法律は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(略して「品確法」)」で義務付けられている「瑕疵担保責任10年」に関して、その履行を確保するために制定された法律という背景があるため、品確法を補完する関係にある法律と言えます。

従ってこの2つの法律は、切っても切れない関係といえるでしょう。