外伝 アスカとの出会いINドイツ(3)
2004年 ドイツ連邦共和国ハンブルク市
国連中央病院精神科特別病棟
その病室の一つはガラス張りになっており一人の幼い少女がその中を見ている
その中には女性が一人ベッドに横たわり人形相手に何かを言っている
「さあ、アスカちゃん。食事ですよ。食べましょうね……おいしいですか?……そう良かった……」
それを見ている少女は無表情だった。ただサルの人形を抱き締めているだけだった
その少女の横で男が女と話している
「この前の実験が原因でこうなったのか」と男
「それでこの状況ですか。人形相手にままごとをする……」と女
「まあ、仕事だけでアスカの相手をできなかったので、その償いのつもりでしょう」
「それでどうするおつもりですか?」
「どうするもこうするもないでしょう。この状況では。何かいい方法でもあるんですか?」
「神のみぞ知ると言う事しか言えません」
「現代医学をつかさどる医者が言う言葉ではありませんね」
「医者も人間ですわ」
2005年 同病院内
その中を一人の小さな少女がサルの人形を手に走っている
「ママ、やったわ。私、選ばれたの、世界を守るエリ−トに。だから私を見て、私は一番なの、私は優秀なの、だから私を見てくれるよね、ママ」
そして目的の部屋の前に来た。そのドアを開けると中には天井から首を吊りぶら下がっている人がいた。まるで人形のように……
それを見た少女は今までのうれしそうな顔が無表情な顔にと変わった。そして持っていたサルの人形を踏み潰した
翌日 惣流=キョウコ=ツェッペリンの葬儀
そこに少女アスカがいた。するとそこへ泣きながら中年の女性が来た
「アスカちゃん、えらいのね。でも無理しなくてもいいのよ」と涙声で言う女性
「いいの。私はもう泣かないって決めたの。私は自分で考えるの」と無表情で言うアスカ
その横で男達が会話をしている
「仮定が現実になるとは因果な物だな。提唱した本人が実験台とは……」
「では、あのシンクロ実験が直接の原因と言うわけですか」
「それがわからないのだよ。何度も実験を繰り返していたのに、準備は完璧のはずだったのに……」
「と、言う事は人為的に起こされたと……」
「それもわからん。ただ分かっているのは精神崩壊がこの実験の結果起こったと言う事だよ」と小声で話し合う男達
2013年 同市ネルフドイツ支部内チルドレン実験ル−ム
アスカは今日もシンクロテストをしている。その成績はまたしても最低を記録している
その隣のモニタ−室でシンジはそのデ−タをみて仕方なくアスカに指示を出す
「惣流さん、シンクロ率がまた下がってるよ。何も考えずにやってよ」
『やってるわ・・・』とアスカはシンジに返すが急に通信が途絶えた
その時、急に警報が鳴った
「どうしたんですか?」とオペレ−タ−に聞くシンジ
「精神汚染です。セカンドチルドレンが精神汚染を受けています」とシンジに報告する
それを聞くと指示を出すシンジ
「すぐにシンクロカット。そしてセカンドを救出してください」
オペレ−タ−は指示通りに実行する。しかし
「ダメです。シンクロカットできません」
「精神汚染、レベル6まで進行。精神回路がズタズタにされています。これ以上の過負荷は危険です」
その報告を受けるとシンジは
「MAGIによる強制カットをしてください」と指示を出す
「し、しかし、それは危険過ぎます」と反発するオペレ−タ−
「これ以上この状況におくよりは安全です。責任は全て僕が負いますから。早くしてください」
「………わかりました」と言い作業に移る
『私の中を覗かないで』 『お願いだから、私の心を犯さないで……』
と作業の間にアスカは叫ぶ
そしてMAGIによる強制シンクロカットが行われた。これはチルドレンとエヴァのシンクロを強制的にカットする物で神経にかなりの過負荷を与える物だった
それによってアスカはやっと精神汚染から脱出できた。出てきたアスカはまるで人形のようだった
その姿のアスカを見てシンジは
「すぐに病室へ移して、デ−タをとってください」と指示を出す
その顔には悔しさがこみ上げていた
シンジ専用研究室
シンジは今回の精神汚染のデ−タを見て原因を探していた。そしてシンジはある事に気づいた。
シンジは通信を開いた。その番号はネルフ総司令室直通回線だった
するとシンジのまえにSOUND ONLYとだけ出てきた
『何だ、シンジ』とネルフ総司令 碇ゲンドウが出た
「父さん、少し聞きたい事があります」とシンジ
『ああ、分かってる。今回の事故の件だな」』とゲンドウはシンジが聞こうとしていた事を知っていた
「うん、そうだよ。今回の事故9年前の事故とデ−タがまるで同じなんだよ」
『今回も老人達が絡んでいるだろう』
「ゼ−レが……」
『ああ、間違いない。奴らは役立たずはすぐに用済みにするからな。セカンドチルドレンもそう判断されたのだろう』
「………そう分かったよ」と言うと回線を切った
その後シンジは
「もうこれ以上エヴァの犠牲者を増やしたくないんだよ」と一人つぶやいた。何かを決意したように
数週間後 ネルフドイツ支部付属病院
精神科病棟303病室
その中に二人の人がいる一人はベットの中で微動だにしないアスカ
そしてそれを心配そうに見ているシンジ
シンジはあの事故の日から毎日仕事の合間を見つけてできるだけここに居る
その間には当然のごとく会話はない
すると中に定期検査の為に医者が入ってきた
シンジは医者に聞く
「投薬の効果は出てますか?」
「いいえ」とだけ言うと医者は病室を出ていった
それを聞くとシンジは何かを決め、走って病室を出て自分の研究室に向かった
部屋につくとネルフ本部のリツコへ回線を開いた
数秒後シンジのまえにリツコの顔が出た
『何?シンジくん』とリツコ
「リツコさん、今回のこと知ってますね」とシンジ
『……ええ、セカンドの事故の件ね』
「はい、そうです」
『それがどうしたの?』
「このままでは、セカンドチルドレンの回復は見込めません。そこで危険ですがショック療法としてMAGIによる強制シンクロをして見ようと思うんです。そこでそちらのMAGIを貸して欲しいんです」
『それは無理ね。こっちも都市開発計画にはMAGIが必要なのよ。それにそっちにもMAGIがあるでしょう。それじゃダメなの?』
「こっちのMAGIだけでは多分無理です。だから協力して欲しいんです。お願いします」
『ごめんなさい。それだけはできないわ』
「………わかりました」とシンジは言うと回線を切った
翌日 第三新東京市ネルフ本部内
第1発令所
昨日までの平穏がうそのように今警報が鳴っている
「外部よりデ−タがMAGIに侵入」と報告するシゲル
「各支部より連絡。松代及びアメリカ第1・2支部もハッキングを受けているとのことです」とマコト
「発信地は?」と冬月
「逆探知に成功。発信地はネルフドイツ支部MAGI5号です」
すると後ろからゲンドウが
「すぐに赤木博士を呼べ」と指示を出す
「無謀だな。彼我兵力差は1対4だぞ」
数分後リツコが到着した
「多分これはシンジくんね」と状況を見て判断する
「ただいま、アメリカより入電。MAGI3・4号がリプログラムされたそうです」
「MAGI3・4号、こちらに対してハッキングを開始しました」
「松代より連絡、MAGI2号がリプログラムされました」
「MAGI2号よりデ−タ侵入」
「馬鹿な。形勢が逆転した。この状況で……」と冬月
「あ、赤木博士!」とゲンドウは言う
「分かっております。自律防御ですね」とゲンドウに返すリツコ
するとリツコはMAGIの中に入り自律防御の準備を始めた
数分後本部のMAGIはもう一歩のところでリプログラムされる所をリツコのプログラムで防いだ
「Bダナン型防壁を展開。以後62時間は外部侵攻不能です」と報告するマヤ
それを聞くと安心するスタッフ達
だが一度鳴り止んだ警報がまた鳴り出した
「どうした?」と冬月
「外部デ−タ、保安部のメインバンクにハッキングを再開」
「内部経由でMAGIに侵入するつもりです」
「電源をカットしろ」と後ろで指示を出すゲンドウ
それを実行するマコトとシゲル、だが
「ダメです。切れません」という
もうこれでできる事は全てした
「敵、MAGIに侵入」
もうなす術がなくそれを呆然と見ているスタッフ達
「MAGI、敵により三基ともリプログラムされました」と最後の報告をするマヤ
するとドイツ支部より連絡が入る
「ドイツ支部より入電です」とシゲル
「つなげ」とゲンドウ
そして数秒後発令所のスクリ−ンにシンジの顔が映る
「どう言うつもりだ、シンジ」
『少しMAGIを貸してもらおうと思ったんだけど、ダメだって言われたから、実力行使で使う事に決めたんだよ』とシンジは言う
「お前は自分のした事が分かっているのか?」
『終わったら元に戻して返すよ。緊急事態なものだから。皆さんご迷惑をおかけしましたすいません』と一応謝るシンジ
「シンジくん……」とリツコ
『リツコさん、すみませんでした。僕は彼女を救いたいんです。勝手な事したのは分かってます。これが終わったらちゃんと返しますので貸してください。お願いします』
そのシンジの顔は今までになく真剣なものだった
「………分かったわ。シンジくんは私の弟みたいなものだから、たまにはわがままも聞いてあげなくちゃね」とシンジのその顔を見てシンジの真意を察しリツコはやさしく言う
『ありがとう』とシンジは本当にうれしそうに言う
「その代わり、しっかりその子を救いなさいよ」
「はい」とシンジが言うと回線が切れた
その様子を見ていたスタッフ達はリツコの今のような態度を始めてみたので目を丸くしていた。そしてゲンドウは
「赤木博士、後で私の部屋にきてくれ」と言うといなくなった