外伝 アスカとの出会いINドイツ(4)
2013年ドイツ連邦共和国ハンブルク市
実験ル−ムにてアスカ救出の為MAGIによる強制シンクロが行われそうとしている
「MAGIオリジナルから5号機まで準備完了しました」とオペレ−タ−が報告をする
「わかりました。セカンドの様子は?」とシンジ
「心拍数、血圧、脳波その他問題ありません」
「そうですか。ではやりましょう。シンクロの準備をしてください」
シンジはあの日から寝ずに今回の事に関するあらゆる準備をしていた。その為かかなり疲れが見えていた
「準備完了しました」
「では、強制シンクロスタ−ト」
するとアスカと仮設の弐号機とのシンクロが始まった
「碇博士、この後はどうするんですか?」
「この後はもう待つしかありません。セカンドの身体及び精神的デ−タに目を離さないでください」
「はい」
幼いアスカは誰も居ない遊園地で迷子のなっている
「ママ、ママ………何処?」と母親を探している
しかし、何処を探しても母親は出てこない
お化け屋敷・ジェットコ−スタ−・観覧車・タワ−ハッカ−・ゲ−ムセンタ−・ゴ−カ−ト………だがやはり居ない
「ママ、何処行ったの?」と泣きながら言う
すると誰も居ないはずなのに向こうのほうから13・4歳の少年がやってきた
「どうしたの?」と少年はアスカに聞く
「ママが、ママがいなくなっちゃたの」と答えるアスカ
「なに言ってるの。そこのメリ−ゴ−ランドの所にいるじゃないか」
すると今まで何もなかった所にメリ−ゴ−ランドができ、そこには今までアスカが捜し求めていた母親が居たのだった
「ママ、ママ、ママ………ここに居たの?」と今までとは違う涙を流しながら言うアスカ
母親はにっこりと微笑んでいた
アスカは男にお礼を言おうと振り向くがそこには誰も居なかった
「セカンドチルドレンのシンクロ率が急上昇。82%で安定。今までの最高記録です」
「シンクロカット。セカンドの救出。すぐに病室へ運んで」
弐号機のエントリ−プラグ内はモニタ−されている。アスカは先ほど同様動かないが、その表情には明らかにさっきとは違うものが表れていた
その後アスカは2時間後に目覚めた。その顔は疲れてはいるが今までのような作られた表情ではなかった。目覚めるまでシンジは夢中でアスカの手を握り声をかけていたそうだ
1週間後 ネルフドイツ支部付属病院精神科
303病室
シンジは日課のようにこの病室を訪れる。この中にはアスカが待っている
シンジはアスカの部屋に入る
「こんにちは」とシンジ
「あんた、今日も来たの。別にもう来なくてもいいのよ」と言うがシンジが入ってきたとたん表情が変わったのは気のせいではない
そして、こうは言っても、シンジが仕事のため来るのが少しでも遅くなると自然とそわそわし始める
「惣流さん。今日は甘い物持ってきたけど、食べる?」とシンジは聞く
その手には何故かバ−ムク−ヘンを持っていた
するとアスカは今までの態度を変え
「あの…お願いがあるんだけど。私の事“アスカ”って呼んでくれない?私もあんたの事シンジって呼ぶから……」と言う
「えっ……別にいいけど」
「じゃあ、呼んでみて」
「ア、アスカ……」となぜか赤くなりながら言うシンジ
「な、なにシンジ?」とこちらも同じようになるアスカ
その光景は初々しいカップルのようだった
3日後 アスカの退院の日
この日アスカは何故か機嫌が良くなかった
それは今日まではお見舞いと言う事でシンジと毎日会う口実があったがこれからはそれがなくなるのである。当然のようにそんな事シンジは気づくはずもない
(今度シンジに会ったら言おう絶対……)と心の中で思っているアスカ
そこにシンジが入ってきた
「退院おめでとう、アスカ」とシンジは本当にうれしそうに言う
それを見て何故か更に機嫌が悪くなり
「うるさいわね。もうシンジなんか知らない」と言い残し走って出て行ってしまった
「はっ?……」と何が何だかわからないシンジ
病院近くの高台の病院
ここは入院中シンジによく連れて来てもらった所だ
考え事をしているアスカ
(シンジは私のことどう考えているのかしら)
(やっぱり何とも思っていないのかな)
そんな事をしていると後ろから声がかかる
「やっぱりここにいた。どうしたの急に出ていちゃって、心配したんだから」とシンジが走って来たのか息を切らせながら言う
「シンジ………。一つだけ聞きたいことがあるんだけど」とアスカ
「なに?」
「どうしてそんなに私のこと気にするの。この前聞いたわ。MAGIにハッキングかけてまで私の事救ってくれたらしいじゃないの、どうして?私がチルドレンでこの世に3人しかいないから、それとも………」
それを聞くとシンジは今までの笑顔を真剣な顔に変え言う
「アスカ、この前言ってたよね。自分はエヴァによってお母さんを失ったって。それは僕にはわからないって」
「ええ」
「僕も8年前エヴァの実験中に母さんを亡くしたんだ。しかも僕の目の前で消えたんだ」とアスカの目を見ながら言うシンジ
それを聞いて驚くアスカ「えっ!」
「それから、少しの間僕も君のようになったんだよ。でも僕は何とか立ち直る事ができた。だから君を見ていたら自分のようで………」
「ごめんなさい」とアスカは小さな声でそれを言うのがやっとだった
するとシンジは元の笑顔に戻って
「気にする事ないよ。僕が勝手にやったんだから。ところでなんでそんな事聞くの?」とアスカにわけを聞く
アスカは少し考える。それを見てシンジは
「もし言いたくなければ無理して言う事ないよ」とやさしく言う
アスカはそう言われると何かを決心したようだ
「いいえ、言うわ………。私も小さな頃ママを亡くしたのは知ってるわね」
「うん」
「それから私は自分を守ってくれる人がいないから強くなろうと決めた。自分を守り人を蹴落とす為に、そして人に私を見てもらう為に。その為一生懸命がんばったわ。勉強もエヴァに関しても。何でも一番になろうとした、けれどそこにあんたが来た。悔しかったわ、学力で負けシンクロ率で負け。その結果私のプライドはずたずたよ。そして結局あんなふうになったわ」
「ごめん」
「別にあんたが悪いわけじゃないわ。そしてこの前エヴァに乗ったとき、出てきたのよあんたが。私は探していたわ、私を守ってくれる人を…。それは今までママだと思っていた。確かにママは見つかったわ、けれどその時それを手伝ってくれたのがあんただった。その時気づいたのよ私を守ってくれるのはママじゃないって、シンジあんただって。だから……」とアスカはシンジに本心を言う
「…………」
「シンジ、お願いがあるの」
「何?」
「私をもう一人にしないで、私のそばにずっと居て、お願い………」と涙を流しながら言うアスカ
「………分かったよ」
数ヶ月後
シンジ専用研究室
そこに第三東京にいるゲンドウからシンジに通信が来ている
『シンジ、これからネバタの第二支部に行ってくれ』とゲンドウ
「なんで、僕が行かなくちゃいけないんだよ。僕はいやだよ」と拒否するシンジ
『シンジ、この前お前のやった事、忘れたわけではあるまい。お前のやった事はネルフに対する第一級反逆罪だぞ。本当なら懲役は免れんのだぞ』
そう言われるがアスカとの約束があるシンジはどうしても行くわけにはいかない
「リツコさんはどうしたの?僕じゃないとダメなの?」
『お前じゃなくてはダメだ。今回は私も少し向こうに行くつもりだ。お前に話がある、だから赤木博士ではダメだ』
「……………分かったよ」
その日のうちにシンジはアメリカへと旅立った
その後のアスカの落ち込みようは言うに及ばない。しかしそれはまた別の話!
アスカとの出会いINドイツはこれで終了です。次回の外伝はレイとシンジの出会いについて書こうと思っています