外伝 マナとともに(6)

 

 

翌日 夜

芦ノ湖から浮上する人型ロボット兵器。そしてそのまま第三新東京市の方へ静かに進んで行く

 

第七環状線、新吉祥寺駅、北口前

国連軍・戦自連合軍の戦車隊が一列に並びそのロボット兵器に対峙している

戦車隊はロボットに向かって一斉砲撃を開始する

「全車、目標の移動物体が射程内に入りしだい、ホ−ルドモ−ドにして弾は全弾使いきれ」と命令を出す戦車隊隊長

「目標!近鉄デパ−トの方から現れました」と隊員の一人が言う

その目標を見て隊長が

「こ、これは、で、でかいじゃないか!」と感想をもらす

「射程距離内です」

「撃て!」と命令を出すと一斉砲撃が始まった

その砲撃はものすごい爆音を伴って行われている、しかし目標のロボット兵器にはまるで効果がないようだ

「隊長!歯が立ちません」

「うわ〜!」

そして戦車隊はロボット兵器に踏み潰され壊滅されるのだった

 

ネルフ本部内

総司令室

ゲンドウと冬月が戦いの戦況を見ている

そこに最新の情報が入る

『芦ノ湖から出現した移動物体は国道75号線を通過、国連及び戦自連合軍の戦車部隊と接触、モノレ−ルの駅を破壊し、現在も侵攻中の模様です』と第1発令所から報告するシゲル

「どうするつもりだ?碇」と冬月はゲンドウに聞く

「好きなようにさせておくさ」とゲンドウ

「しかし、連中にエヴァの支援施設を傷つけられると厄介だぞ、修理の費用もかさむ一方だ。あそこの作戦行動は無茶苦茶に破壊するだけだからな」

「やつらは何をしようと、あの移動物体にはかてんだろう。奴らのプライドを潰すには丁度良い。間違いは体で覚えるのが一番だからな」

そこにシンジが入ってきた

「ちょっと、どう言う事だよ?父さん。あんな事されては、こっちの施設が破損するよ。すぐにやめさせてよ」とはいって来る早々文句を言うシンジ

「シンジ、それはできん。この件はネルフとは関係のない事だ」

「全く、修理するこっちのみにもなってよ!」

「すまんな、シンジ」

 

翌日

第壱中学校2−A

シンジは自分の席で携帯用端末を開いて昨日の被害の状況をチェックしている

するとそこにマナが入って来た。そしてシンジの居る所に近づき

「シンジ君………」とつかれた表情で言う

「マナ何処行ってたんだよ!ずっと心配してたんだから」とシンジはマナに言う

「いないの」

「誰が?」

「集中治療室のケイタが居ないのよ」

「マナ、もう病院に行っちゃだめだって言ったろう!」

「だって、居ないんだもん」と泣きそうな声で言うマナ

「………分かったよ、ちょっと待ってて、今調べて見るから」と言うと今まで使っていたパソコンをオンラインにして戦略自衛隊病院のコンピュ−タにハッキングをかけた。シンジにとってこの程度のハッキングはたいした事ではなくあっという間に防壁を解凍して侵入できた。しかしお目当てのケイタに関する情報はその中には無かった

「おかしいな〜、彼に関する情報が一つも無い……」とシンジ

そのシンジの言葉を聞き

「それってどう言う事?」とマナは聞く

「つまり、彼は初めから入院していない事になってるんだよ」

「そんな……ケイタは間違い無くあの病院に居たわ」

「そんな事は僕も分かってるよ………とにかく病院に言ってみよう」

「うん」

すると向こうの方で二人の会話を聞いていたアスカがシンジ達が行こうとするのをとめる

「ちょっと、待ちなさいよ」

「なに?アスカ」とシンジ

「アタシも行くわ。シンジ一人なら大丈夫でしょうけど、もう一人いるみたいだし、何があるか分からないからね」

「いいよ、危ないし」とシンジ

「うるさいわね、なんか文句あるの?!」

「な、ないけど………」

「ありがとう、一緒に来てくれると心強いわ」とマナ

「レイも連れて行くわよ。レイ良いわね?」

「ええ、良いわよ」

そしてレイもシンジ達の前にきた

「わかったよ………じゃ四人で戦略自衛隊病院に行こう」

そして4人は病院に向かうのだった

 

 

戦略自衛隊病院

ICUの見学席

シンジ、マナ、アスカ、レイの四人はICUの内部を見るが少年はいない

「いないでしょう?病室も探したんだけど……」とマナ

「かなりの重傷だったから他の病院に移ったとか、あるいは助からなかったとか……」とシンジ

「そんなことないわよ!絶対生きてるわ!」

「ごめん」

「ネルフに連れて行かれたんじゃない?」

「ちょっと、私達を悪者みたいに言わないでよ!」とアスカ

「そんな連絡は入ってないし、そんな事があれば僕のもとに連絡があると思うけど……」

「じゃあ、何処行ったのよ?」とマナ

「これは戦自と関係があるんじゃない?」とシンジ

「も、もしかして………」

「……どうしたの?」

「引き戻されたのかもしれない……奴らに……」

「奴らって………やっぱり……」

そうしているとアスカ

「シンジ、後ろ!」と言う。シンジは後ろを振り返るとそこには黒服の大男がいた

マナはその男に掴まってしまった

「シンジ!」と悲鳴を上げるマナ

シンジとアスカは目を見合わせて同時にその黒服の男に体当たりする。男はその勢いでマナを離してしまった。その隙を見て四人はその場から逃げ出した

 

同病院内女子トイレの個室

シンジ達四人は肩を寄せ合って隠れている

「ここは女子専用よ!」とアスカはシンジに言う

「しょうがないだろ。他に隠れる所無いんだから」とシンジ

「私が出て行きます。みんなを巻き込むわけにはいかないし…」とマナ

その時トイレの外から銃声とともに悲鳴が聞こえる

「こんな状況で出ていったら殺されるよ」とシンジはマナをとめる

「集中治療室にいた子も奴らに殺されたのよ」とアスカ

「そ、そんな…………」とマナ

「大丈夫だよ、マナ。彼は生きてるよ………」とシンジはマナを慰めながら自分の携帯を出して電話をし始めた

「何処に電話してるの?」とアスカ

「ミサトさんの所だよ。助けを呼ばないと」

そんな事をしているとミサトに電話がかかり助けを求めた

 

同病院正面玄関車寄せ

ネルフマ−クをつけたワゴンが停車した。それにはミサトが乗っていた

「ここね………」とミサト

 

同病院内廊下

銃を持った黒服の男達が待機中の中掃除夫に変装したシンジ達が通過してミサトの待っている玄関へと向かっている

その四人を見て黒服の男の一人が何かを感じたようだ

「どうもあやしいなあ」とその一人が言う

「表にネルフの車が止まってるぞ!」と他のもう一人が言う

「なに!」

それを聞いていたシンジは気づかれるのを恐れて

「にげろ!」と叫ぶ。そうすると変装をといて全速力で走った

「捕まえるんだ!」

そして玄関を出た四人は待っていたミサトの車に乗った

四人の乗った車はすさまじい勢いで発射しドラフトをかましながら走り去った

しかしそのワゴンを追って来る黒塗りの車があった

後ろを見ていたレイはそれを確認し

「追ってくるわ」と言う

「なんで追いかけてくるのよ」とミサト

するとその黒塗りの車から自動小銃の音とともに弾が数発飛んできた。それはワゴンのガラスに当たり弾痕を残す

「何で追ってくるのよ!」とアスカ

「マナ、君に何かがあるんだね!」とシンジ

「私が悪いのよ!」とマナ

「そんな事分かってるわよ!」

「その理由は?」

「私が裏切り者だから!あの人達を裏切りシンジを選んだから………」

「ということは、後ろの人達は君の仲間だったんだね?」

「そうよ」

「やっぱり、戦自か………」

「詳しい話しは後にしましょう。今は逃げるのが先決よ!つかまってて」とミサト

 

箱根スカイライン

この険しい道をドラフトをおりまぜながら突進して行くワゴン。その後を必死に追いかけてくる黒塗りの車。しかし黒塗りの車はとうとう曲がりきれずにガ−ドレ−ルに激突した

その激突音を聞き後ろを振り返る五人

「黒い車、いなくなったわ」とレイ

 

峠のトンネル内

そのトンネルに入るワゴン。ハザ−ドランプを点滅させて停止する

「さあマナ、君の口から真実を話してもらうよ」とシンジ

「…………」何もはなさいマナ

「僕は最初から君がエヴァを目的に戦自が送ったスパイだって言う事が分かっていた……」

「…………!」

「僕は最初は君の事を利用して戦自が何をたくらんでるのか逆に調べるつもりだった。だが君と接するうちに本当に君の事を好きになってしまったんだよ………」

「…………」

「君は最初から僕を利用するだけの為僕に近づき今でもそうなの?」

「………違うわ!最初はエヴァンゲリオン初号機パイロット及びE計画担当者の碇シンジに近づいて情報をつかむのが目的だった。でもね今はシンジ君が好き、これは嘘じゃないわ。私の本当の気持ち。だから彼らを裏切ったの………」

「………そう、分かったよ………信じて良いんだね?」

「うん!」

すると二人の会話を聞いていたミサトが

「もう話は済んだ?ホントにラブラブなんだから聞いてるだけで気持ち悪くなるわ」と言う

「そうよ、そう言う事は二人きりの時にしてくれる」とアスカ

ふたりは真っ赤になって

「「すいませんでした」」と謝る

「じゃあ、安全な所まで移動しましょう。そこでネルフ本部にと連絡をとるわ」

「マナはどうなるんでしょうか?」

「それはシンジ君がマナちゃんについては一任されてるんだから、シンジ君が決めれば良いんじゃない」

「そうですね」

「良かったわね、マナちゃん。シンジ君が味方で」

「………はい……」と真っ赤になって肯定するマナ

 

富士見展望台駐車場

駐車場にとまっているワゴン。その中にいるマナ、アスカ、レイ

そとではミサトが携帯をかけていてシンジはその隣でそれを聞いている

「加持君聞いてる?シンジ君の彼女が戦自を裏切った為に追われてるの。それで保護したいから保安部を送って………そう、これはシンジ君の提案よ………うん、よろしく」と言うと電話を切った

「どうでした?ミサトさん」と電話を切り終わったミサトに聞くシンジ

「ええ、ジオフロントの入り口で待っているそうよ」

「そうですか……」

車中

「霧島さん、シンジをスパイして何をするつもりだったの?」とアスカはマナに聞く

「私が得た情報はロボット兵器の設計部に送られるの、それを元に色々の部分の改良が行われるの」とマナは答える

「だから、エヴァを真似してパイロットは中学生なんだ」

「それだけじゃないわ。それは4年後の戦争を想定して訓練してるから………」

「4年後?………と言う事は、4年後には20歳になるって言う事ね」

「最初は新しい乗り物を操縦できるんだって喜んでいたわ………」

 

 

 

半年前(マナの回想)

戦略自衛隊新苫小牧研究所地下実験秘密施設

ドックの中にあるロボット兵器

その前に楽しそうに並んでいるマナ、ムサシ、ケイタ

『私の仲間は兄のムサシと弟のケイタ。訓練は厳しく、操縦は難しかったわ。でも3人で助けあって頑張った……』

 

病室

マナがベットに寝ながら外の景色を眺めている

『だけど私は激しい振動の結果1ヶ月もしないうちに内臓をやられたの、そんなある日、6年間もこれに縛られるのがいやだってケイタが柵を越えて脱走しようとしたらしいの……』

 

鉄条網の金網

脱走しようとするケイタを捕まえる憲兵と犬

『しかしそれではロボット兵器計画がダメになってしまう、だから大人達は力ずくで私達を柵の中に押し込めたわ………』

 

兵舎

ケイタをかばいガキ大将と喧嘩するムサシとそれを見るだけしかできないマナとケイタ

『そんなことでずっと柵の中。みんなはだんだん苛立って監視の目を盗んでは、ケイタや私の事をいじめるようになったの、それをムサシがかばってくれた………』

 

地上でのロボット兵器の起動実験中

険しい表情をするマナ、ムサシ、ケイタ

『私達三人はいつかロボット兵器で脱走しようと冗談で言ってたわ………それを本当にしてしまうなんて………』

 

 

 

いつのまにか車中に戻ってきてそれを聞いていたシンジ

「………大丈夫だよ。みんな僕が助けるから………」とマナに言う

「……ありがとう……シンジ君」とマナは泣きながら言う

「でも、助けるって、どうするの?」とアスカ

「いざとなれば、MAGIを使って脅しをかけても良いし、例えば、第二東京の電力をストップさせたり、とにかく、ネルフの力を使えば何とかなるよ!」

「でも、司令がそんな事許すかしら」とレイ

「父さん?………父さんは関係ないよ。この事は僕に一任されてるんだし、MAGIぐらい父さんの許しなしでも動かせるよ」

「さっすが〜シンジ」

その後ネルフの保護を受ける為ジオフロントに向かうワゴン

 

移動中の車中

「マナ、悪いけどしばらくの間、君の身柄はネルフが拘束するけど、なるべく早く自由にするから我慢してくれるかな」とシンジ

「うん、ありがとう」とマナ

 

ジオフロントへのトンネル入り口

そこで待っていたのはネルフ保安部ではなかった。移動式の検問があり、その付近にジ−プや装甲車が止まり警備員が数人立っていた。そして一番前に黒塗りの車が数台とまっていた

そこへシンジ達の乗ったワゴンがやって来た。ミサトとは車を下りた

「私はネルフの葛城三佐です!そこを退きなさい」とミサトは言う

すると黒塗りの車の一台のドアが開いてその中からゲンドウが出てきた

「何をしている?」とゲンドウ

「碇司令……」

「何をしていると聞いているのだ」

そこにシンジも車を降りてやって来た

「父さん、そこを退いてもらうよ」とシンジ

「それはできん」

「何故?」

「彼女は戦自に引き渡す!」

「父さん!この事は僕に一任じゃなかったの?」

「……知らんな…」

「彼女はチルドレンの候補としてこの街に来たんだ。だから彼女の事はE計画担当者の僕に決定権があるはずだ!」

「彼女はついさっき、候補からはずされた」

「父さん!………僕を裏切るんだね………分かったよ、その代わり僕もこれからはネルフに協力はしないよ。いいんだね?父さん……」

「……………」

「僕はゼ−レに行くよ。それでもいいんだね?」

「…………連れて行け……」とゲンドウが言うと車内にいたマナは黒服の男に捕まり別の黒塗りの車に乗せられて連れて行かれる

「シンジ君!」と悲鳴を上げるマナ

「マナ!」

「シンジ君!助けて!連れて行かれちゃうよ!」

「お前ら!マナを離せ!マナはネルフで保護するんだ!」

男達はシンジの言葉を無視してマナを連れて行った

そしてマナはいなくなった

「すまん、シンジ。お前を守るにはこれしかなかったのだ」とシンジの顔を見ず下を向いてゲンドウは言う

「………父さん!言いたい事はそれだけか………もしも、マナに何かあったらネルフの秘密と父さんの計画を全部持ってゼ−レにいくからな。いいな!父さん」

とシンジは言うとその場から去っていった

その時のシンジの顔は使徒と対峙するときより更に真剣な物だった。そこにいる誰もが脅しだけでは無いと言う事に気づいていた

 



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