外伝 マナとともに(5)
翌日
白糸の滝付近の岩場
岩場に激突した為大破し停止しているロボット兵器
それの調査のため弐号機とアスカ、ミサト達が来ている
「戦自の司令部に直接確認中」とマコトは現在の作業の進行状況を報告する
「放射能及び有害物質の確認を至急おねがいします」とシゲル
「目標は自らの重量で岩を踏み崩し、バランスを失い花崗岩に激突した模様です」とマヤ
その作業の様子を弐号機の中で黙って見ているアスカ
「謎の移動物体は新型の人型兵器だと思われます」とミサトは本部にいるシンジやゲンドウに報告する
「高速で移動中崖を踏み崩し、それによってバランスを崩したため岩壁に激突した模様です」
『それでパイロットは居たんですか?』とシンジはミサトに聞く
「胴体の中央に人の入れるハッチのような物がありますが………」
『開けて、中を調査してみてくれ。許可はとってある』とゲンドウが指示する
「はい、分かりました」
そしてその“元”移動物体に近づきハッチを開けて中の調査を始める
「こ、これは!………すぐに医療班を呼んで、回収後病院へ運んで」とミサトは中を見て慌てて指示する
その中にはシンジ達と同年代の少年が倒れていた
ネルフ本部内総司令室
シンジとゲンドウが今回の事を話している
「くだらないな。あんな物に付き合ってる暇はないのだ」とゲンドウ
「そうだけど、無視するわけにはいかないよ。政府や戦自が何を考えてるのか見極めなくちゃ………」とシンジは言うがいつものような堂々とした感じがない
「シンジ、なにかあったのか?最近おかしいぞ」
シンジは最近マナとの間が進むにつれて彼女がスパイということでどうすればいいのか答えが出ないのである
「………なんでもないよ………じゃあ、僕はもう行くね」と言うと部屋を出て行った
その姿を見てゲンドウは
「シンジ………」と一人つぶやく。その目は子供を心配する親の目になっていた
同本部内リツコ専用研究室
シンジはリツコが話があるからと言うことで呼び出されたのだ
「おはようございます………」とやはり元気なく言うシンジ
「デ−トはどうだったの?」とリツコ
「はい、成功でした。とても楽しかったですよ」
「そう、よかったわ。人生最良の時ね」
「リツコさんにはそういう時なかったんですか?」
「そうね……あったのかもしれないけど忘れたわ。研究のほうが楽しかったし……」
「そう言われてみると、昔、リツコさん、先生と一緒にいつもMAGIの研究してましたね」
「そうね、いつのまにかそうなってたわね」
「リツコさん、昔から頭良かったですから」
「………シンジ君……母さんは私よりあなたのほうを期待していたらしいわ………」とさびしそうに言うリツコ。それを聞き悪い事を言ったと思ったのか
「すいません」と謝るシンジ
「いいのよ………ところで、白糸の滝であの人型兵器の中からパイロットが発見されたのは知っているわね?」
「はい、さっき知りました」
「それで、私すぐ出かけるから、今日の実験はシンジ君にやって欲しいの」
「………はい……」
「じゃあ、よろしくね」と嬉しそうにいうリツコ
「なにか、楽しそうですね」
「ええ、とっても楽しみよ」
「リツコさん、昔からそういうとこありましたね」
「そう?じゃあ行ってくるわね」と言うとリツコは出て行った
それを見て
「リツコさんって時々凄く怖いような気がする……」とつぶやくシンジ
同本部内弐号機ケイジ
弐号機とともに白糸の滝から帰還したアスカが居る
シンジはそこに行った
「ご苦労様、アスカ」とシンジは労う
「たいした事はしてないわ。ただ弐号機に乗ってるだけだったから」とアスカ
「そう………ところで、現場の細かい状況はどうだった?」
「凄かったわよ。あれだけめちゃくちゃでよく生きてたものよ」
「そう、それでどういう人だった?」
「そんなの分からないわよ。見なかったもの」
「そう、わかった。ありがとう………あっ、今日の実験は中止にするよ」
「どうして、今日はシンジが担当するんじゃなかったの?」
「その予定だったんだけど、これから僕も病院に行ってみるよ」
「そう…だったら、私も行く」
「えっ、アスカも」
「私が行っちゃまずい?」
「いやそんな事ないけど………分かったよ、一緒に行こう」と言うとシンジとアスカは病院へと向かった
戦略自衛隊病院内
ICU見学席
シンジとアスカはガラス越しに下に居る収容されたパイロットを見ている
「彼があの人型兵器のパイロットか。そしてネルフの敵!」とシンジ
「どうしてネルフの敵になるの?」とアスカはシンジに聞く
「元々、うちと戦自って仲があまり良くないんだ。昔なんかあったみたいで」
「なにかって?」
「エヴァの事だよ」
「何でエヴァが?」
「エヴァはこの世界のミリタリ−バランスを崩すほどの強力な兵器だからね。怖いんだろ」
「なるほど」
「だから、エヴァの寝込みを襲おうとしたんだろ。戦自の考えそうな事だよ」
するとドアからマナが花束を持って入ってきた
「そんなことないわ」とマナはどうやらシンジ達の話しを聞いていたようでそう言う
「やっぱり来たわね、霧島マナ!」とアスカは言う
「マナ………」とシンジ
「え?」とマナ
「あんたがスパイだなんてことはとっくの昔に分かってたのよ」とアスカ
「ち、違うわ。私はただ、そこに横たわっている人が私の知り合いでお見舞いに来ただけよ」
「そう、じゃあ彼とはどういう関係?」
「そ、それは………」
「シンジも馬鹿よね。知っててデ−トにまで行くんだから、襲われたらどうするのよ」
「………」シンジは下を向いたまま何も言わない
「違います!そんな事ありません」と言うと泣きながら走っていくマナ
「マナ!」と言うとそれを追いかけるシンジ
「シンジ!やめなさい、殺されるわよ」とシンジを止めようとするアスカ
しかしシンジはアスカの制止を聞かない
同病院屋上
マナを追いかけてシンジはここもできた
「シンジ君は私の事信じてくれるよね?」とマナはシンジに言う
「…………うん………ところで彼は誰?」とシンジは彼の身元も彼女との間柄も知っているが彼女の口から直接聞きたい為マナに聞く
「ただの知り合い…………」
「名前はケイタ。君との関係は姉弟の関係」とシンジは言う
「知ってたの?」
「うん、戦自のコンピュ−タにハッキングをかけて調べたのさ」
「………じゃあ………私のことも…?」
「マナのことは調べていない………君の事を信じてるから………」
「シンジ……」
「マナ……」
と言いながら見詰め合いそのまま自然にキスをする二人
すると物陰から音がした
「だれ?」とマナは警戒する
物陰からは加持が出てきた
「いい雰囲気のところ、邪魔して悪いね」と加持
「加持さん!」とシンジ
「脅かして悪かったね。ロボットの件でちょっと呼ばれてね、何せ相手が人間の作ったロボットだけに厄介でね」
「そうですね」
するとマナが「ごめんなさい……」と突然謝る
「マナ?」とシンジ
「みんな私が悪いんです……」
「ねえ!それはどう言う事?」
「まあまあ、落ち着きな、シンジ君。マナちゃんを助けたいなら俺の言う事を聞くんだ。まず、俺にはもうこれ以上なにも話すな。聞いてしまうと俺は上に伝えなくてはならない。次に、すぐにこの病院を出るんだ。後は今まで通りに生活をすればいい、但しマナちゃん、君は2度とここにきてはダメだぞ」と加持は言う
「はい……」とマナ
「ありがとうございます」とシンジ
「なに、シンジ君、いつも見逃してくれているお礼さ………シンジ君、彼女を守ってやるんだぞ。彼女を守れるのは君だけだ。いいな!」
「はい、分かってます!」と自信を持って言うシンジ
「じゃあ、俺はもう行くよ。早く外にいくんだぞ」と言うと加持はいなくなった
川縁
夕焼けの中シンジとマナの二人は座っている
「シンジ君、私の秘密知ってるの?」とマナ
「……………」何も言わないシンジ
「知ってるの?」
「………うん…」
「そう………」
「でも、そんな事関係ないよ。僕はマナのことが好きだ。だから信じてるよ。それがたとえネルフを裏切る事でも………」
「…………」
「みんなが君の敵になっても、僕は君を守ってみせる!戦自だろうとネルフだろうと必ず……」
「………ありがとう」
ミサト宅シンジの個室
シンジはベッドに横になって天井を見ながら考え事をしている
(ネルフを裏切るか………父さん…ミサトさん…リツコさん……加持さん…アスカ……レイ…ごめん………母さん……)
翌日
芦ノ湖湖畔
零号機が垂直式使徒キャッチャ−を使って人型兵器を捕まえようとしているのだ
湖畔特設テント
シンジとミサトが居る
「どう、レイ、手ごたいはある?」とミサトはレイに聞く
『いいえ、ありません』とレイ
「ロボットは2機目撃されてるんです。そのうち見つかったのが1機ですよね」とシンジ
「そして、残りのもう1機が芦ノ湖の中にいるというわけね」とミサト
「その可能性は高いですけど、全然来ませんね」
「餌が悪いのかしら」
「でもミサトさん、この件は戦自で我々ネルフには関係ないのに何でこんなに頑張ってるんですか?」
「………この件が早く片付けば、マナちゃんの事も早く解決するでしょう」
「……ミサトさん………ありがとうございます」
「なにいってんのよ、シンちゃん。私はあなたのお姉さんなのよ。弟の幸せの為ならこれくらいするわよ。それにシンジ君にはいつも助けてもらってるしね」
するとシンジの携帯がなる
「あれ、電話だ…………はい、シンジですけど」
ネルフ本部内第五会議室
ゲンドウを中心にリツコとアスカが居る
その中に呼び出されたシンジとミサトが入って来た
「父さん、これはどういう事?」とはいってきた早々言うシンジ
「二人とも座ってくれ」とゲンドウ
「話してもらうよ、父さん」
「ああ、シンジ、もう霧島マナには近づくな」
「………どういう事?」
「これ以上彼女に近づくのは危険だ。お前はネルフになくてならない存在だ。そのお前を危険な目に合わせるわけにはいかないのだ」
「………だから、なんだ………なんだって言うんだ!……父さん、そんな事を言うなら、僕はネルフをやめてもいいんだぞ!僕は決めたんだ。たとえネルフを裏切ろうと彼女を守るとね」
「「「「シンジ(君)!」」」」
シンジは自分の言いたい事だけ言うと出て行った。その後を追ってミサトも出ていった
それを見ているゲンドウ達
「赤木博士、アスカ君。シンジを頼む。私はシンジにどう思われようとシンジを守らねばならない」と言うゲンドウの顔は子供を思いやる親の顔だった
「「はい………」」
同本部内第三エレベ−タ−
シンジとミサトが乗っている
「ミサトさん、僕はどうすればいいんでしょうか?このまま僕のわがままを通して良いんでしょうか?」とシンジ
「大丈夫よ、シンジ君は自分の信じた通りに行動すれば良いわ。霧島さんの事好きなんでしょう?」
「はい………ありがとうございます」
同本部内初号機ケイジ
初号機の前で佇んでいるシンジ
するとそこにアスカがやって来た
「シンジ、何でそんなにあの子なのよ。私じゃダメなの?私のこと嫌いになったの?」とアスカ
「………そんなことないよ……ただ……」とシンジ
「シンジは私の事守ってくれるんでしょう。そう約束したよね。シンジは私のそばにずっと居るよね」
「…………」
「何とか言いなさいよ!」
「…………ごめん…」と言うと走り去るシンジ
それを見て
「シンジ…………」と一人つぶやくアスカ
翌日第三新東京市立第壱中学校
そこにシンジ、アスカ、マナの姿はなかった
ビックアップルダイナ(喫茶店)
テ−ブルに座ってアイスティを飲んでいるシンジ
その姿にいつもの元気はない
するとドアの鈴の音がして店内に人が入ってきたのが分かる。その人はミサトだった
「はい!いらっしゃいませ」とその店のマスタ−が言う
「シンジ君、ここの紅茶はおいしい?」とミサトがシンジに言う
「ミサトさん!どうして僕がここにいるって分かったんですか?」とシンジ
「シンジ君の事はな〜んでもしってるのよん………シンジ君、どうしたの?そんなに暗い顔して」
「………僕がマナと付き合っても誰も歓迎してくれないでしょう……」
「シンジ君………そんな事ないわよ。私もリツコも加持の奴もみんなシンジ君の事を応援してるわ」
「ミサトさん………僕はネルフを裏切るかもしれないんですよ、それでも………」
「みんなシンジ君の事信じてるわ。それに、今までネルフの為に私達の為に頑張ってきたんだから少しはシンジ君も自由に生きていいのよ」
「…………はい………」
「それにしてもシンジ君、もう本当にラブラブね」
「…………はい」と真っ赤になって肯定するシンジ
「言うようになったわね、これは飲まなきゃやってらんないわよ。マスタ−!ビ−ルとシ−フ−ドピザちょうだい!」とミサトは注文する
シンジはその後ビ−ルの入ったミサトに絡まれるのだった
同日夜
ミサト宅
シンジとミサトは仕事の為まだ居なかった
レイとアスカは二人でご飯を食べている
「シンジがあんな奴だとは思わなかったわ」とアスカ
「…………」黙々と食事を続けるレイ
「シンジは私達の事を守ってくれるって言ってたのに、あんなスパイ女が来たらもう私達の事は関係ないだってさ」自嘲気味笑いながら言うアスカ
「…………」
「レイ、あんたはどう思ってるのよ?」
「…………」
「なんか言いなさいよ!」
「………あなたはシンジ君の事をどう思ってるの?」
「……大好きよ。シンジが居なくちゃ生きていけないわ」
「そう、それは私も一緒よ。だから私はシンジ君の事を信じてるわ」
「あんた、何いってんの!あいつは私達を捨てたのよ」
「………あなたは今までシンジ君に何かしてあげた?」
「…………」
「私はシンジ君に何もしてあげてないわ。だけどシンジ君は私に生きることの重大さを教えてくれたり色々の事をしてくれたわ。あなたにはどうだった?」
「………そうね。私にもしてくれたわ」
「シンジ君は今まで私、あなた、そしてみんなの為に生きてきたわ。それが初めて今自分の為だけに生きているの。私にはそれをとめる事はできないわ。だって今までシンジ君は自分を犠牲にして私達のためにしてくれたんだもの。……あなたはそれをとめられるの?」
レイの言葉を聞くとアスカは少し考えて
「…………そうね。今まではシンジは私達の為に生きてたんだものね。これからは私達がシンジの為に生きなくちゃね」と何かを吹っ切ったようだ
「でも、あんな女にシンジを取られてわけにはいかないわ。絶対にアタシの所に戻って来させてみせるわ」とアスカは続ける
「そうね、その方があなたらしいわ。でも、私もシンジ君は渡すつもりは無いわ」とレイ
「ということは、私達はライバルね」とさっきとは違う風に笑いながら言うアスカ
「そうね」とアスカに続いて同じように笑いながら言うレイ
その後笑い声とともに言い合うアスカとレイの声は夜遅くまで続いた