外伝 マナとともに(4)
翌日 第三新東京市立第壱中学校
図書室
テ−ブルに箱根の地図を広げそれを見ているシンジとマナ
「芦ノ湖って、大きいのね」とマナ
「四方を山で囲まれた全長6キロの自然湖なんだ」とシンジ
「湖、見たいな〜」
「バスで20分くらいだよ」
「そう…でも、一人で言ってもね……」(シンジ君と一緒に行きたいのよ)
「実は僕も湖、好きなんだ」(僕は何を言ってるんだ)
「今度の日曜日の天気ね、晴れなんだって……」(だから、私を誘って行きましょう)
「日曜日にはお出かけとかしたいよね」(誘いたい…でも…断られたら…)
「私もお出かけとか……したいな〜」(きゃ〜…何いってんの、私)
「一緒に出かける?」(やった〜言えた!)
「ホント、うれし〜!」(やった〜やっと誘ってくれた!)
「じゃあ、バスの時間とか待ち合せ場所は僕が調べておくよ」
「それなら私は、二人分のお弁当を作って持ってくるね」
「やった!」
すると、引き戸を開けてレイが入ってきた
「碇君、ネルフから連絡あったわ。すぐに来てって」とレイ
「僕に?」といつもならシンジに連絡があるのだが図書室にいるということでシンジは携帯の電源を切っていた為つながらなかったようだ。その為レイに伝言を頼んだのだ
「…………」無言のマナ
芦ノ湖の湖畔国道を横切る、巨大な足跡と引きずるような爪痕
その前に立っている零号機。シンジはそれの調査の為にミサト達とともに来ている
調査をしていると足跡の反対側にマナが来ているのが見えた
「………やっぱり、彼女はこれに関連していたか……」とシンジは言う
「どうする、シンジ君?」とミサトはマナの事をシンジに聞く
「……見なかったことにしましょう」
「………分かったわ」
「ところで、この巨大な足跡どうしましょうか?潜って調査しますか?」とシンジ
「それは無理だわ。こっから先は日本政府の管轄だから。私達には無関係なのよ」
「そうでしたね」
するとそこに無線が入る
『スパイです。葛城3佐』とマコトが報告する
「状況を報告して!」とミサト
『上空1万メ−トルに偵察機です』
「そう、分かったわ、ありがとう。シンジ君どうする?」
シンジはそれを聞くと無線機を取り発令所につないだ
「青葉さんですか?シンジです。すぐにマギと衛星を使って芦ノ湖上空の偵察機を追跡してください。お願いします」と言うと無線を切った
「ミサトさん、レイ、帰るよ。あまりゆっくりしていられないみたいだからね」とシンジは判断する
「そうね」 「はい」と二人とも納得した
その後シンジとミサトはミサトのルノ−で第三新東京市に戻った
レイは零号機とともに回収車で戻った
走る車中
無言の車内シンジは下を向いて何か考えている。それを見てミサトが言う
「ねえ、シンちゃん、彼女の様子はどう?」とミサト
それを聞くとシンジは“ボソッ”と言葉を口に出す
「……アスカやミサトさんの言うように彼女は捕まえた方が良いんですかね?」とシンジ
シンジの言葉にミサトは反応する
「な〜んだ、何かがっかりだな」
「だって………彼女はスパイだし、ネルフは機密重視だから………」
「………霧島さんの事、好き?」
「……はい……多分……」
「それなら信じるしかないでしょう?」
「………………はい」
第三新東京市 新歌舞伎町通り
ミサトのルノ−が止まっている
運転席に座っているミサト。路上に出て立っているシンジ
「私ちょっちよる所あるから」とミサト
「僕は本屋によって、その後バスで帰ります」とシンジ
「シンジ君!」
「はい………」
「私はシンジ君の事信じてるから、がんばって」
「ミサトさん?……………」
「それじゃ……」と言うとミサトはルノ−で走り去った
新紀伊国屋書店
シンジは今度のデ−トの為に情報を仕入れようと雑誌を読んでいる
すると後ろから肩を叩かれる。シンジは後ろを振り向くとそこには加持とリツコがいた
「加持さんにリツコさん!」とシンジ
「よお、お目当ての雑誌見つかったかい?」と加持
「こうしてみると、シンジ君もまだ16歳だって言うのが実感できるわね」とリツコ
「そんなに僕ってふけて見えますか?」
「そう言うわけじゃないけど、いつもはネルフでのシンジ君しか見ないから」
「そうですか?」
ルノア−ル(喫茶店)
シンジと加持・リツコがテ−ブルを囲んでいる
シンジがこの二人にマナとの約束について話した
「シンジ君、彼女、スパイらしいじゃないの。大丈夫なの?」とリツコ
「………」黙するシンジ
「まあまあ、リっちゃん。シンジ君を信じようじゃないか」と加持
「………そうね、シンジ君なら大丈夫ね」
「ありがとうございます」
「そうか、日曜日に芦ノ湖でデ−トか」と加持
「シンジ君も普通の男の子だったのね」とリツコはさっきの事を忘れたのか今度は嬉しそうに言う
「はい、そうなんです。だけど、霧島さんが喜んでくれるかどうか………」
「シンジ君、そんなに堅くなるなよ。たかがデ−トなんだから、ほら丁度ここに芦ノ湖の地図もあるし、一緒に作戦立てようぜ」
「そうね、いつも助けてもらってるから、今回はこっちが助ける番ね」とリツコは本当に嬉しそうに言う。何故リツコがこんなに嬉しそうにしているかと言うとシンジはリツコの弟みたいなものでそのシンジが人を好きになったのだからうれしいに決まっている
「最後に駒ケ岳山頂、夕日に染まる山々に霧島さんも喜んでくれるかも」とシンジ
リツコは時計を見て
「あらもうこんな時間、帰ってもう一仕事しなくちゃ。じゃあ、シンジ君頑張ってね」と言う
「シンジ君、デ−トにOKしてくれた彼女の気持ち、大切にな」と加持
「はい」
その後3人は店を出てバラバラに帰って行った
ミサト宅 シンジの部屋
シンジは携帯を取り出しマナに電話をかけた
『もしもし、霧島ですが』とマナ
「碇ですけど」とシンジ
『シンジ君?』
「今度の日曜日に行く所、考えたんだけど」
『聞かせて!』
「初めに湯本温泉街へ行って、その後海賊船で芦ノ湖を一周、最後に駒ケ岳へロ−プウェイで登って夕日を見るんだ」
『………』何も言わないマナ
「もしもし、聞いてる?」
『うれしい!』
「待ち合わせは第三新東京駅の銀の鈴で午前10時でいいかな?」
『うん、楽しみに待ってる、この事は二人だけの秘密だからね』
「わかったよ、じゃあ、また明日」
『おやすみなさい、シンジ君』
そう言うと携帯を切りシンジはベットに横になり天井を見て一人考え事をしている
(“二人だけの秘密”か………大丈夫かな………何考えてるんだ僕、霧島さんのことを信じるって決めたのに………加持さんやミサトさん、リツコさんが応援してくれてるんだ、頑張らなきゃな)などと思っているうちに寝てしまった
次の日曜日
早朝 ミサト宅居間
シンジが鏡の前に立って身だしなみを整えている
(きょうはいよいよデ−トだ。頭は昨日ちゃんと洗った、ハンカチとちり紙も持った、霧島さんからもらったペンダントもつけたし………それにしてもキンチョウするな〜)と思っているとミサトやアスカ、レイの部屋の襖を静かに開けると中を確認して
(ミサトさんもアスカもレイもまだ寝ている。起きるとうるさいだろうから、起こさないようにそっと出て行こう)と思うと静かに玄関に向かい家を出て行った
第三新東京駅銀の鈴前
シンジは立ちながらマナを待っている。そうしているとマナが向こうから走ってシンジの所をやってきた
「おはよう、シンジ君。待った?」とマナ
「そんな事ないよ、僕も今来たばっかだよ」とシンジ
「じゃ、行きましょう」
「うん、そうだね」
その後予定通りにデ−トをこなしていくシンジとマナ
箱根公園
この公園は芦ノ湖湖畔にある景色のきれいな公園です
その公園内のテ−ブルをはさんで向かい合うように座り、マナの作ったお弁当をテ−ブルにおいて食べている
「湖………きれいだね」とシンジは湖のほうを見て感想を言う
「ねえ、マナって呼んで」と突然言うマナ
「えっ、な、なにを言ってるんだよ。恥ずかしいよ…………」
「呼んでくれないと、これ以上はお弁当食べさせてあげない」
「え〜、でもそう言うのって僕のキャラクタ−じゃないし」
「あっそ、じゃあ、お弁当もって帰っちゃおうかな」
「わかったよ、でも少し待って、心の準備をするから」
「ハイ」
「………マナ…」と言うと顔が真っ赤になるシンジ
「なあに、シンジ君」
「……マナ」
「シンジ……」
「マナ……」
「好きよ、シンジ………」
「僕もだよ、マナ………」
駒ケ岳山頂見晴台
眼下に広がる芦ノ湖、オレンジ色に染まっている山々
それをシンジとマナ、ベンチに座って眺めている
「……………」
「……………」
見詰め合ったままなにも話さないシンジとマナ。聞こえるのは二人の心臓の鼓動のみだ
そして自然にキスをする二人……
デ−トの終了
二人はバスの最後方の席に手を握りながら座る
マナはシンジのペンダントを触っている
「これ、私のあげたペンダントだね」とマナ
「うん………」
「シンジ君の手、堅いね。パイロットの手だね」
「マナのは、柔らかい」
「今日は楽しかったわ。また、シンジ君と何処かに行きたいな」
「そうだね……」
バスは第三新東京市へと向かって行った