第三話 確固たる意思


 

 

 

 

<ネルフ本部内第3実験ホール>

シンジは初号機とのシンクロの安定化と円滑な作戦行動の達成の為実験を繰り返していた

その初号機が実験をしている横ではデータを取る為、モニター室にリツコとその部下マヤ、そしてミサトが初号機を見ていた

「先輩、私思うんですけど、シンジ君にこんな実験を繰り返しても意味無いんじゃないんですか?」とマヤはリツコに言う

「何で、そう思うの?」とリツコは初号機から送られてくるシンジと初号機のリアルタイムデータを処理しながら言う

「はい、シンジ君の今までのデータとあの戦闘における使徒との戦闘対処能力は素晴らしかったです。いまさらこんな事を繰り返しても意味無いんじゃないかなと思って……」

「そうね、マヤの言う事は理にかなってるかもしれないわ。でもね、エヴァは不明な部分が多いの。それを解き明かす為にこれは必要なのよ。いざという時に動かなかったら大変でしょう」

「そうですね。すいませんでした、余計な事を言ってしまって」

「良いのよ。なんでも、疑問に思う事は。そうしないと生物というものは進化しないわ」

この二人の会話を後ろで見ていたミサトが今度は言う

「でも、何でシンジ君は、こんな得体の知れないものに進んで乗るのかしらね」

「それは、彼にとってエヴァに乗る事が当然であり、そうなるべく意思があるからよ」

「そう」

「それに、シンジ君が乗ってくれなければ困るのはあなたじゃないの」

「それはそうね」

リツコは会話が一通り終わるとマイクでシンジに呼びかけた

「シンジ君、調子はどう?」

『まあまあですね。ただ、インダクションモードだと操作性に多少の誤差がありますね。シンクロ率を10%上げて65%で安定させてください』

「わかったわ」

『それと、リツコさん、後で少し話があるんで時間を空けといてください』

「ええ、分かったわ」

その後、順調に実験は進行していった

 

 

<実験終了後

同本部内ラウンジ>

そこにはリツコ以外に人はいなかった

リツコはシンジの言う通りにここで待っているとそこにやっとシンジがやってきた

「すいません。お待たせしましたか?」

「いいえ、心配ないわ。ところで話って何?」

「レイに関してです」

「レイ?」

「はい、僕がここに来る前の実験における事故の件についてです。報告によると心理的問題と書いてありましたが、それはどういうことですか?」

「それが詳しい事がわからないのよ。ただ、あの子にしてはとても心理的に不安定だったという事は確かだわ。だけど、あなたが来てからは安定しているみたいだし、今度は問題ないと思うわ」

「そうですか」

「でも、どうしてかしらね?最近になって急に安定してきたのよね」とシンジを見ながら言う

「さあ、僕には人の心はわかりませんよ」

「そう。レイの事なら分かると思ったのに………」と皮肉っぽく残念そうに言う

シンジはこのリツコの態度を本当に理解できないでいた

 

 

 

<ミサト宅>

シンジとミサトはシンジの作った食事を食べていた

「シンジ君。本当に料理上手ね」とミサト

「そんな事無いですよ」とシンジ

「シンジ君、謙遜しなくても良いのよ。これはたいしたものだわ」

「そうですか?」

「ええ」

「喜んでもらえると嬉しいですね」

「ところで、学校はどう?」

「まあ、楽しいですよ。同年代の人と一緒に学ぶというのは初めてですんで」

シンジは飛び級で既に大学を卒業しているので、本当は学校に行く必要は無いのだが、ある事情の為時間のある時は行く事になったのである

ミサトは初めてシンジが既に大卒である事を知ったとき驚いていたが、シンジはさも当然のように言っていたのでそれ以上のことは無かった

「そう、それは良かったわ。それじゃあ、友達も出来たのね」

「ええ」

実際、シンジはネルフにおけるゲンドウからの頼まれ仕事やリツコとの共同作業のためなかなか学校に行く事は出来ないのである

 

 

 

<翌日>

シンジは今日は特にネルフにおける仕事も無い為に学校に行く事にした

 

<第三東京市立第一中学校>

シンジは自分の在籍するクラスである2年A組の教室へと入っていった

そのシンジの姿を確認するとそれに対して声が飛んできた

「おはようさん、センセ」と鈴原トウジが言う

「おはよう、碇」とその隣で相田ケンスケも言う

最後に学級委員である洞木ヒカリが

「おはよう、碇君」と言う

それに対してシンジも

「おはよう、トウジ、ケンスケ、洞木さん」と返した

シンジとトウジ・ケンスケの3人は理由は分からないが何故か馬が合い友達となったのである

ヒカリとは転校初日にいろいろとお世話になってその後、挨拶する仲にはなった

 

<昼食時

同中学校屋上>

この4人と+レイは一緒に昼食を食べていた。それは会話の弾む楽しいものだった

だが、その時シンジの携帯連絡機から着信音がなった

「はい、シンジです。分かりました。すぐに、そちらに向かいます」と出るシンジ

「どうしたの?」とシンジに聞くヒカリ

「なにか、非常事態みたい。至急戻るようにって連絡が入ったんだよ。レイ、行くよ」

「ええ」と一言言うレイ

「ごめんね、みんな。そういうことだから、僕行かないと」

「「わかってる。頑張ってこいよ」」とそろって言うトウジとケンスケ

そして、シンジとレイは走ってネルフ本部へと向かった

 

 

 

<ネルフ本部>

シンジとレイは急いで状況のわかる発令所に向かった

そこには既にミサト、リツコ、オペレーター3人組と冬月がいた

「どうしたんですか?リツコさん」とシンジは聞く

「使徒が発見されたわ。今、駿河湾沖を北上しているわ」と答えるリツコ

「シンジ君、すぐに出撃するわ。準備して」と指示するミサト

「わかってますよ」と発令所を出て行くシンジ

 

その後すぐに初号機及びシンジの準備は整った

「シンジ君、射出するわよ。準備いいわね?」というミサト

『ええ、いつでもいいですよ』と答えるシンジ

「じゃあ、最後に作戦の確認をするわ。射出したらパレットガンを出すから、ATフィールドを中和しつつ攻撃して」

『はい、分かってますよ』

「では、初号機、射出!」と指示を出すミサト

初号機は予定通りに射出された。それを確認すると続けさまに指示を出す

「パレットガンをだして。シンジ君、すぐに受け取って」

シンジは指示通りにパレットガンを受け取るとそれを使って使徒への攻撃を開始した。だが、使徒のATフィールドは予想以上に強く中和し切れなかった為、その攻撃の効果は無く、ただ爆煙を上げるだけだった

使徒は初号機の動きを正確に把握し、それに対して腕のような部分についている光状の鞭で攻撃を開始した

最初のうち、シンジはそのすばやい動きを避けていたが、アンビリカルケーブルはその初号機の動きについていけずに鞭に切られ、電力が外部から内部へと移行した。そして、何かの拍子にバランスを崩してしまうとその鞭に動きをつかまれてしまった。そして、勢いよく弾き飛ばされてしまった

そこには何故かトウジとケンスケがうずくまっていた

 

 

<数十分前

第三新東京市第五地下避難所>

第三東京には非常事態宣言が発令され一般市民は避難所に入っていた

当然、普通の(?)中学生であるシンジのクラスメートたちもそうしていた

「くそ〜また報道管制ってやつだ」とケンスケはデジカメにTVチューナーをつけたものを見ながら言う

その画面には文字で“非常事態宣言発令中”とだけ記されていた

「なんや、また文字だけなんか?」とトウジはケンスケのその様子を見て聞く

「ああ、俺たち一般市民には本当の事は見せないんだよ。こんな一大イベントを見せないなんて、これは犯罪行為だよ」

「そんな事言って喜んでるやつはおまえだけやな。生のドンパチ見れるよってに」

「おれは、自分の欲望に正直なんだよ………そうだ、トウジ少し話があるんだけど」と周りをチラチラ見ながらケンスケが言う

「話し?それはここでは話せんことか?」とそのケンスケの行動を判断して聞く

「ああ」

「そうか………委員長、ワシら便所や」と言うと二人は立ち上がった

「トイレ?すぐに戻ってくるのよ」とヒカリは言った

二人はその足でトイレに向かった。その中には予想通り誰もいなかった

「で、何や話って?」とトウジから話す

「外に出てみないか?!」とケンスケは言う

「外にって、今か?」

「ああ、外のやつ見たいんだよ。頼む、俺だけ力じゃ、避難所の扉開けられないだろ。なあ、頼むよ」

「…………分かったよ。でもおまえは本当に自分の欲望に素直な人間やな」

「さっき、言ったろ。じゃあ、すぐ行こう」とトウジの手を引っ張って外へと向かった

その後、外に出て来るとケンスケは自分のデジカメで戦闘の様子を撮っていた。そこに、初号機が飛んできたのである

 

<再び

ネルフ本部内発令所及びシンジ>

シンジはモニターでこの二人の存在を確認していた

同じ情報は発令所にも入っていた。その情報はすぐにオンラインで戸籍と照合され二人の詳細なデータが表示された

「何で、こんなところに民間人がいるの?!」とミサトが叫ぶ

「どうするの?ミサト」とリツコが聞く

「シンジ君、彼らをエントリープラグに入れて、そしたら、ルート38から退却よ」とミサトは指示を出すがリツコはそれに対して

「葛城一尉、民間人をエントリープラグ内に入れるのは越権行為よ」と反対する

そこにシンジからの反応が入る

『わかりました、ミサトさん。リツコさん、僕が許可します。これなら越権行為にはなりません』と言うとエントリープラグに二人を入れた

だが、退却しようとはしなかった

 

<初号機エントリープラグ内>

シンジは二人の異物が入ってきたことにより気分が悪くなるがそれを抑えていた

「どうしたんだ、シンジ?逃げるんじゃないのか?」とケンスケがシンジに言う

「少し、黙っててくれ。集中できない!」と声を荒げて言うシンジ

『シンジ君、退却よ。すぐに動いて!』と発令所からの連絡も入るがシンジの意識は既に違うところにあった

「今、逃げるわけにはいかない。もし逃げたら何が起こるかわからないからな」と言うと初号機はプログナイフを持って使徒との距離を一気に縮めていった

『何やってるの?!』とミサトは大きな声で叫ぶ

初号機は腹に光る鞭を食らうが、初号機は使徒のコアにナイフをさすと稼動限界ぎりぎりに使徒は活動を停止した

 

 

 

<戦闘終了後

ネルフ本部内>

トウジ・ケンスケは今回の件について注意を受け、他言無用だと脅迫されてやっと帰された

そのころシンジはミサトに呼ばれて会議室にいた

「なんで、あの後退却しなかったの?」とつめたい声で言うミサト

「あそこで僕が戻ったら、使徒はその隙をついてジオフロントに侵入してきたでしょう」と冷静に言うシンジ

「それは、あなたの勝手な推測です。状況の分析は私たちがやるわ。あなたは私の指示に従ってるのが一番作戦の成功確率が高いのよ」

「ふっ、思い上がりもいいかげんにしてほしいものですね。僕は最前線にいるんです。少なくともあなた方よりは状況判断の材料が多くあります」

「それは、どういうこと?!」

「つまり、今回における作戦指示はミサトさんたちの方が間違いという事です」

「……………わかったわ、100歩譲って私たちにミスがあったとしましょう。でも、あなたには私の指示に従う義務があるのよ」

「何故ですか?」

「それは、私が上司であなたが部下だからよ」

「ふっ、それを言うなら、ミサトさんのほうが僕の指示に従わなければならないんですよ」

「何言ってるの?あなた」

「ミサトさん、僕の個人データ見たことあります?」

「………いいえ無いわ」

「そうですか。だったら、それを見てから、僕を責めてください。まあ、できればですけど………では、先に戻ります」

「ダメよ、まだ話は済んでないわ」とシンジが外に行こうとするのを止めようとするとそのドアからリツコが入ってきた

「ミサト、シンジ君の言う通りよ」とミサトに言うリツコ

「どういうこと?」

「まあ、これを見れば分かるわ」と一枚の書類を手渡す。それはシンジの個人情報だった

そして、ミサトは一通りそれを見た。そして、ある事に気が付いた

「特別一佐?これってどういうこと?」

「つまり、シンジ君は私たちよりも位が上なの。ネルフでも司令・副司令に次ぐ身分よ。だから、彼はあなたの命令を聞く義務は無いのよ」

「どうして、そんな事が………」

すると、シンジが答える

「まあ、司令が言うには有事の時に的確な行動を取れるようにとの配慮だそうですよ。分かりましたか、ミサトさん?確かにミサトさんたちが妥当な判断をしたときはそちらの指示に従いますが、どう考えても、間違えてるだろうと思ったとき、僕は独自に動けるんです」

「……………そう、ごめんなさい」

「いいんですよ。まあ、今回は僕にも非はあるようですから。では、僕は先に帰らせてもらします」と言うとシンジは出て行った

「リツコ、彼は何者なの?何であの歳でこんな事になってるの?」とミサトは残されたリツコに聞く

「それは、司令がシンジ君のことを正当に評価しての事だと思うわ。彼にはそれだけの才能があるのよ。じゃあ私も行くわね」というとリツコも部屋を出て行った

最後に残されたミサトは本当に悩んでいた





第四話へつづく


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