スティング 2004/11/25
スティングが放つRPG。過去にワンダースワンカラーソフトとして発売されたもののリメイク。
目新しいシステムと気合いの入った演出面が特徴。
主人公エクセルは神界から遣わされた「告死天使」。
神界を脅かす魔族を、その住処「リヴィエラ」ごと滅ぼす使命を負う。
しかしリヴィエラでは、精霊達もまた平和に暮らしていた。
エクセルは精霊達と共にリヴィエラを守るための冒険に出る。
…というのが導入部だが、世界の運命を賭けた冒険のはずなのに妙に明るくてのんびりした雰囲気。
かわいらしいキャラデザインや、セリフや顔パターンの多さ、さらには好感度システムまであるので、
人によっては拒否反応が出るかも知れない。
2004年のGBAソフトとは思えないほどグラフィックに力が入っている。
水彩画のような背景や、必殺技を使うときに入るカットイン(味方やボスはもちろん雑魚敵ですら入る!)など。
ただ、静止画は良いがドットアニメは今ひとつだったり、背景の使いまわしが多すぎるのが少々残念。
特に同じ背景を連続で使うくらいなら、びしっと1画面分にイベントを切りつめるべきだ。
フィールド移動や探索はアドベンチャーゲームのようなコマンド式。
ランダムエンカウントはなく、戦闘は固定イベントと、任意で行える「練習バトル」のみ。
移動や戦闘は完全コマンド式だが、随所にアクションギミックが存在し、アイテムやルートに影響する。
進路は基本的に一本道で後には戻れない。章ごとに移動できるエリアも決まっている。
プレイヤーの自由度を切り捨ててストーリーを魅せるという割り切った構造となっている。
輪をかけて特殊なのは戦闘システム。いわゆる「攻撃」や「魔法」などのコマンドが存在せず、
基本コマンドは戦闘前に4つ(パーティで共用)まで選べるアイテムの使用のみである。
同じアイテムでもキャラにより効果が異なる。例えば杖の場合、殴ったり投げたり、炎や回復の魔法を使うなど。
ターン数やとどめに使った技などで「評価」され、結果次第で入手アイテムや探索コマンドに影響が出る。
経験値の概念は無いが、アイテムを一定回数使うと必殺技を閃くと同時に能力が上がる。
回復の必要性が薄い速攻重視の調整は個人的には好み。
戦闘ごとにHPは完全回復するが、移動中のイベント次第で最大HPが一時的に減る場合がある。
MPの概念はなく、敵も味方もダメージで溜まるゲージで必殺技を発動する。
全滅してもゲームオーバーにはならず、敵が弱った状態でその場でコンティニューできる。
これにより、アイテムの入手やキャラの成長に失敗しても先に進めるようになっている。
システムが複雑に思えるかも知れないが、1章まるごと使ったチュートリアルが入るので心配無用。
しかしキャラがシステム用語等を普通に喋るのは少々興ざめ。
2回目以降のプレイではチュートリアル自体不要なので、独立したモードにした方が良かっただろう。
戦闘や成長に重要な役割を果たすアイテムは15個しか所持できないので常に取捨選択になるが、
今まで手に入れたアイテムや使った技、表情やボイスのパターンが、
プレイデータをまたいで記録されるモードがあるので、収集要素のボリュームはある。
ただ、それを閲覧するモードが条件を満たさないとオープンしないのは良くないと思う。
単にクリアするだけなら前述したコンティニューもあるのでお気楽にプレイできるが、
アイテム収集や高評価、高ステータスを目指すと難易度が跳ね上がる。
基本的には詰め将棋なのに、ランダム要素やアクション要素のせいで不毛なやり直しをすることになる。
このシステムで通すなら、セーブポイントが一方通行の先にしか無いというのはまずい。
全体として、戦闘システムや個別の演出要素といったパーツは優れているのに、
それを組み立てるセンスがいまいち。ストーリーも平凡な上に未消化の伏線が多い。
映画に例えると役者やスタッフが頑張っているのに脚本と監督のせいでB級になってしまっている。
初めてならともかく、既に発売されたWS版を焼き直してこの出来というのが残念。
最終更新日:2010/10/20
ご意見、ご質問は随時受け付けています→お問い合わせについて。