ファイナルファンタジー I・IIアドバンス

スクウェア・エニックス 2004/07/29

公式サイト

レビュー

今や超人気シリーズになった、ファイナルファンタジーの1作目と2作目のカップリング。
過去に何度も移植されているが、今回はシステム面を大幅に見直してのリメイクとなった。
シナリオ面でもセリフの追加や修正が目立つ。後発のFFとの関連性をほのめかすものも。
なお、IとIIはシナリオ的にもシステム的にも関連性はなく、好きな方からプレイ可能。
ちなみに、このGBA版をベースにさらに追加要素を入れたものがPSPおよびiPhoneソフトとしてばら売りされている。

--

まずIについて。いわゆる「FFらしさ」を求めてる人は最初から面食らうかも知れない。
いきなりキャラ4人のジョブ選択と名前入力から始まり、それが終わると説明無しで荒野に投げ出される。
しかしこれは手抜きではない。まして古いゲームだからというわけでもない。
何度リメイクされてもこの部分だけは一貫して変わらない(DS版FF3などと比較するといい)。
この状況を演出の一環であると思えない人は難易度がどうこう以前につまずくだろう。
このゲームのサプライズとしてよく話題になるラスボスの正体なんてものは本当はどうでもよく、
エンディング中に明かされる真実こそがファイナルファンタジーがファイナルファンタジーたる所以である。

シナリオなどについては以上。以下、システム面について示す。
従来作(特にワンダースワン版以降)で露骨だったジョブ間格差がほぼ解消。
具体的には戦士、モンク、赤魔術士以外のジョブが大幅に強化された。
さらに従来はゲーム上では全く無意味なフレーバー要素(というかルーチンミス?)であった、
ステータスの知性が魔法威力に関わるようになり、
少なすぎた魔法使用回数もMPシステム変更と回復アイテムの追加により大幅に増えた。
これにより、特に白魔道士と黒魔道士は目を見張る強化を遂げた(今までが弱すぎたのだが)。
もう最初のジョブ選択で地雷を引いてしまうことも無い。
(余談だがWS版では一見バランスが良さそうなデフォルト編成が地雷だったりするので)

しかし、レベルアップに必要な経験値が大幅に減少したことと、
MP回復アイテムが異常に安く手に入る(回復魔法だけ使ったとしてもHP回復アイテムより高効率)ことで、
ゲームバランスが酷いことになってしまって全てをぶち壊している。
初心者向けにプレイしやすく調整したのであれば納得できるが、
ダメージ計算式が変わっていなかったり、敵の行動が早かったり、エンカウント率が高かったりで、
プレイのしやすさはあまり向上していない。というかスタイルによってはファミコン版より面倒。
結果、ゲームの進行が非常に作業的になってしまっている。
GBA版で追加されたダンジョンはエクストラ的な存在だが、シナリオを追うごとに順番に開かれるので、
初見では次の目的地だと錯覚してしまうのもユーザーアンフレンドリー。
(ご丁寧にも、ボスを倒すたびにダンジョンが開く演出が入る)

既に従来のFF1をやり尽くしている人から見れば、FF1の新たな姿であり、
今までは不可能だった類のやり込み(アイテム集め、能力強化)が可能になった画期的な仕様なのだが、
初めてFF1に触れる人にとっては非常に単調でつまらないゲームになってしまうのではないか?
ゲーム性に興味はないからストーリーだけ追ってみたい、という向きには良いのかも知れないが、
そういう人はきっと途中で飽きてしまうような気がしてくる。

追加ダンジョンには、歴代シリーズ(3〜6)のボスやアイテムが大量に登場。
この時代のFFに思い入れがある人には嬉しいだろう。
しかし戦って面白いものではない。強化魔法の重ね掛けが基本のFF1のシステムでは個性もろくに表現できず。
要は、最初の数ターンさえ凌げばどんなに強いボスでもサンドバッグ同然なのだ。
例えば物理回避や魔法防御を無視する技を使ったり、1ターンに複数回行動すれば少しは強くなるのに。システムに縛られすぎ。
戦闘ではなく存在自体を楽しむ要素として割り切るしかない。 欲を言えば、ボス戦のBGMは該当作品のものを流して欲しかった。
(これはプレイヤーにとって当然の欲求であったらしく、PSP版ではしっかり再現されている模様)

--

FFIIについて。Iと比較すると路線が全く違う。いわば「魅せるFF」のはしり。
これを「ファイナルファンタジーII」の名前で発売すること自体が大冒険だったんじゃなかろうか。
運命に弄ばれる主人公一行や、彼らのために命を投げ出す人々。
圧倒的な敵勢力に勝てるのか…?といった展開がお好みの方にはおすすめ。

システム面は独特で、レベルの概念が無く、戦闘中の行動で能力が上がる。
重要なことがゲーム内や説明書でほとんど解説されていないので、
基本情報だけ見て制作者の罠にはまりがち。
(説明書を見れば誰でも思いつくであろう「味方同士で攻撃しあってHPアップ」とか)
ちょっとしたコツをつかめるか否かで難易度が激変してしまう。

リメイクにあたってそれほど大胆な仕様変更はない。序盤の熟練度が上がりやすくなったこと、
能力が下がらなくなったこと、何もしなくてもHPが上がるようになったことくらいか。
一見初心者に優しいが、トータルで見ると難易度にはあまり影響しない要素である。
むしろ装備画面で追加された「ぼうぎょさいきょう」という悪質なトラップコマンドが難易度を上げている。
魔法熟練度の上げづらさや、防具や魔法の実用性の格差など、大元の荒っぽい調整は変わっていない。
やり込みとしてはアイテムが無制限に持てるようになったことが大きいだろう。

追加ダンジョンは本編ではなくクリア後のおまけシナリオといった形。
進行とともに敵が極端に強くなるという調整は嫌いではない。

--

総括して、入門向けなのか従来プレイヤー向けファンゲームなのかよくわからない作り。
どっちにせよ、まともに考えてリメイクされたとは思えない出来。
有名シリーズの中でも知名度の低い2作なので、これを機にやってみたくなる人はいるだろうが、
ある程度の覚悟はしておいたほうがいい。7以降からシリーズに触れた人は特に。
個人的な見解として、旧作に対するファンゲームとして見れば非常に面白いと思うが、
実際に旧作ファンからしてみれば露骨に評価が割れるところだろう。


最終更新日:2010/10/20

ご意見、ご質問は随時受け付けています→お問い合わせについて

レビュー目次 →トップ