セガ 2005/06/23
カード式アーケードゲームという新ジャンルを築き上げたゲームの初の家庭用機版。
ただしこのゲームはムシキングそのものではなく、「ムシキングで遊ぶ子供たち」を題材にしている。
作中ゲームとしての「ムシキング」が本作の中心であるが、対戦モードのみに簡略化され、
アニメ化もされて大きい女の子達に大人気(?)の「森の民」のキャラや設定は一切登場しない。
カード自体は2004年までのものが一通り登場するようだ。
老若男女がムシキングで遊ぶハネダシティに引っ越してきた少年または少女が主人公。
登場人物は「こんな奴いるよなあ」的な子供たちと、極端なキャラ付けをされた大人たち。
彼らとともに様々な出来事に巻き込まれながら、公式大会V3の称号である
「グレイテストチャンピオン」を目指していくというのがストーリー。
大会といっても、展示場貸し切りのようなものでは無く十数人が参加する程度の個人店舗大会。
行動範囲も町内だけ。物語は身近な子供の世界で展開される。
ここでムシキング自体のゲームシステム、とりわけGBA版でも描かれる対戦プレイを紹介しよう。
まずコインを入れてゲームを始めると、プレイヤーごとにカードが1枚ずつ手に入る。
(GBA版におけるイベント戦では無料となっているが、その場合カードは得られない)
その後、虫カード1枚と技カード(グー、チョキ、パー)を各1枚ずつ、任意で読み込ませる。
ゲーム開始時に手に入れたカードを読み込ませる必要はなく、4枠全てを読み込ませる必要もない。
双方の読み込みが終わったらバトル開始。ジャンケンで勝った方が負けた方にダメージを与える。
虫によって攻撃力や耐久力に違いがあり、同じ虫でも手(グー・チョキ・パー)によって攻撃力が違う。
技を読み込ませていれば条件を満たすと発動。威力上昇や能力変化などの特殊効果が現れる。
体力が尽きたら2体目の虫と技を登録して戦闘が継続。2体目を倒したプレイヤーの勝ちである。
リアルに表現された実在の甲虫が、荒唐無稽な技で戦うという見た目のインパクトも人気の秘密か。
GBA版でのNPC戦は、相手のセリフから何を出すのかが丸わかりなので不安になったが、
それは序盤だけであって、じきに相手のセリフや手の順番を見て、くせを読みながらの戦いとなる。
ランダム要素を廃し、ただのジャンケンとはいえそれなりに戦術性がある。
とはいえ、何連戦もプレイするのはちょっと苦痛。結局はパターン通りに押せば勝ててしまうし。
インターフェイスなどの点からアドベンチャーゲームに分類したが、謎解き要素は皆無。
マップ上から指示された場所に行き、話を聞いたりバトルをしたりすることでイベントが進む。
シナリオは週単位で進む。イベント戦で敗北しても翌週に再戦できるが、その分時間は進む。
目的を達成していようがいまいが、シナリオ上の期限が過ぎるとゲームは終了。
次に再開するときはカードを引き継いだ上でニューゲームをすることになる。
前述したようにイベント戦ではカードは手に入らないので、
カードを増やすには各地のゲームセンターでフリーバトルをする必要がある。
バトルに必要なコインは週ごとにお小遣いとして手に入るリソース。
このフリーバトル以外にカードの入手法は無い。イベントでカードがもえらることすらない。
カードの総数は100種類弱だが、1戦1枚なので収集には時間がかかる。
NPCとカード交換ができれば良かったと思うのだが、通信交換を盛り上げたかったのだろうか。
それにしては「余ったカード30枚と交換」で手に入る収集要素があったりしてちぐはぐな印象。
なお、セーブデータを3つまで作れる(コピーは不可)が、各データ間での通信プレイはできない。
戦闘や会話などを通して、試行錯誤しながらデッキを組むというカードゲームの基本は押さえてあるが、
虫や技に露骨な格差があって、最終デッキがほとんどワンパターン収束してしまう。
というか、終盤の敵がまさにその収束したデッキしか使わない。
ゲーム全体を見ると、セリフにしろバトルにしろ無駄に長引かせ過ぎている感じがした。
まず最初の公式大会が始まるまでが長すぎる。イベントも引き延ばし的なものが多い。
単に長いだけでなく、システム的にシナリオを何周もするように作られているのが問題。
業務用の待ち時間潰しというプレイスタイルも意図していたようなので、ある意味では正しいのか?
シナリオ自体はコロコロコミック的展開から一歩進んだ感じでまあまあ面白かった。
ありがちな「ゲームで世界征服を狙う悪の組織」を出さなかったのは評価したい。
携帯ゲームとしてはセーブポイントが限られている上に中断もできないのが痛い。
他にも、スクロールや文字表示の遅さ、セリフをページ送りしたときに2ページ送られることがある、
リストから確認したカードが1秒ほど拡大されるので一部の数字が見えなくなる、
デッキの構成カードの詳細を直接確認できない、など、雑な作りの部分が気になる。
キャラや背景、バトル中のCGは良くできてるのに、カードのイラストが取り込みっぱなしっぽいのも惜しい。
ストーリーに時間軸があるのに季節感が全くないなど、他にも残念な部分を挙げたらきりがない。
ムシキングブームが過去の物となった今、本作は格安で入手することができる。
あれこれ難癖はつけたが、まあ値段分は遊べるかな?といったところ。
ゲーム史上に残るであろう名作のお手軽体験ツールとして重要な存在かもしれない。
(2008年10月09日 カードコンプリート記念)
最終更新日:2010/10/20
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